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外国籍、シングルマザー、LGBTQ、高齢者…“住宅弱者”と空き家問題を繋ぐサービス、加盟店4年で10倍に
不動産業界に蔓延る”入居差別”に憤り「対話能力、収入に関わらずNGのケースも多い」
「就職活動をしていた頃、日本に留学中だった従妹の家探しを手伝ったんです。それで不動産会社に行ったら『外国籍の方はダメです』ととことん断られました。お金がなくて日本語も全く話せない、というなら分かりますが、従妹は日本人の保証人もいて、日本語も話せました。なのに、外国籍というだけでNG。そんな不動産業界の入居差別に憤りを感じ、解決したいと思いました」(キョウさん/以下同)
その後、キョウさんはライフルに入社し、2019年の『フレンドリードア』設立に至る。同サービスは、「外国籍」「LGBTQ」などカテゴリー別に対応してくれる不動産会社を探せるシステムだが、実際、“住宅弱者”と言われる人たちに対してどのような偏見があるのか?その実態を尋ねてみた。
「まず、言葉や文化が違うために『コミュニケーションがとりにくい』と思われがちです。また借りた部屋をタコ部屋にしたり、パーティーをして大騒ぎしたり、地震など災害が起きた際、勝手に緊急帰国してしまう人たちが一部いるため、『マナーが悪い』との偏見を持たれています」
(2)LGBTQ
「不動産業界はまだまだ古い体質があり、同性カップルに対して不快感を見せたり、『近隣の住民が抜けるのではないか』と心配されたりするオーナーさんもいます。また、日本では同性婚が認められていないので、LGBTQの方々だと、2人で住める物件でも入れないことが多々あります。例えば、2人入居可の物件は、血縁関係や婚姻関係を前提としているため、入ることが難しいです。売買に関しても、今はペアローンもありますが、同性カップルだと家族としてローンを組めないという問題もあります」
(3)高齢者
「独居老人の方は、孤独死のリスクが最大のネックです。孤独死されると残置物の処分がとても大変で、オーナーとしては嫌なんですね。残置物は亡くなった方に所有権があるので、安易に処分できません。近親者にも連絡がとれないと行政が介入して処分しますが、その際に高額な費用をオーナーが負担しなければならないケースもあり、高齢者に貸すことにリスクを感じることもあるようです」
(4)シングルマザー
「日本では、母子家庭の貧困率が非常に高いです。正規雇用よりもパートや契約、派遣というケースが多く、そのため収入が不安で『シングルマザーは困窮している』という目線で見られがちです。踏み込んで経済状況を聞かれたり、対応を渋られたりするという感じです」
(5)障害者
「『車椅子で店舗に行ったら、雑な扱いを受けた』というケースや、不動産会社やオーナー側が『介助が必要なのではないか』『大変そう』といった偏見を持たれていることがあります。でも、実際に当事者に聞いてみると、『介助は求めてないです。ヘルパーさんがいるので』との返答がありました。不動産会社やオーナーが必要以上に負担に感じ、断ってしまっているのかもしれません」
空き家問題深刻化する中、高齢者や障害者が“優良顧客”に? 変わりゆく業界意識
「オーナーの皆さんには、『高齢者や障害者の方は、リスクはありますが優良顧客です』とお話しています。なぜなら、一度入居すると長く住んでくれるからです。家を探して住み替えするのがすごく大変なので、『いい家を見つけたら長く住もう』という考えになるんですね」
賃貸物件は新築から年数が経つに連れて賃料がどんどん下がるため、入居者が入れ替わると賃料も下がっていく。しかし、長く住んでくれる場合はずっと賃料が高いまま、収入が得られるのだ。
「何かあった時のために『地域の支援センターと連携をとる』など対策しておけば、リスク回避もできます。こうした話を聞いて、『じゃあ対応してみよう』という不動産会社さんもあります」
「たとえばLGBTQの方の場合、その方の性別を安易に管理会社からオーナーに伝えるのはアウト。ちゃんと本人の許可を取らないとダメなんです。そういった『何に気を付けなければいけないか』についてちゃんと知ってもらおうと、接客チェックリストを作って提供しています。また接客サポートAIは、たとえば日本語が分からない外国籍の方に『敷金・礼金』を説明したい時に日本語以外に6言語で自動翻訳できるようになっています。このように、接客のリアルな現場ですぐに使える伴走者みたいなものを用意しています」
「『フレンドリードアの加盟店に問い合わせしたけど、ちゃんと対応されなかった』といった報告があったら、その不動産会社に連絡して事実関係を確認し、誠実に対応していただけるようにお願いしています。 “フレンドリー”と謳っているのに、『対応が酷かった』というのは最悪じゃないですか。それを救済するために、相談窓口を設置しました。そこまでやらないと、ユーザーさんを守れないので」
とはいえ、クレームが入るようなケースはごく一部で、「皆さん、フレンドリーにコミットしてきちんと対応してくれています」とのこと。ユーザー間でも着実に認知度は上がり、SNS上でも「フレンドリードアを使ったら、ちゃんと対応してもらえた」といった好意的な声が寄せられている。
住宅弱者側も“守られるべき”という意識は禁物「互いにフィルターを外すことが重要」
「前述の障害者の方のケースでも、不動産会社の方に『介助しなきゃいけない』というフィルターがありました。でも、彼らはあくまで家を探すのが仕事で、介助は仕事じゃない。当事者の方も『じゃあ介助してください』となると、それはちょっと違います。
住宅を探す側も『自分は守られるべき、支援されるべき存在である』というフィルターを1回外すことは大事だと思います。住宅弱者だから守らなきゃいけないということではなく、お互いの尊重が必要なんです。オーナーとしても、収入やコミュニケーションに不安がある方と契約したくないというのは理解できます。ただ、カテゴリーで判断しないで、その人がどういう人なのかを、1人1人きちんと見てほしいと思います」
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