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岡田准一×綾野剛『最後まで行く』リスペクトにあふれる映画づくりは“希望”
岡田13年前、“これから売れていく役者さんですよ”と紹介されたことを覚えています。その通りになったな、と思って綾野さんの活躍を見てきました。綾野さんが僕と共演をしたいとおっしゃってくれていることも人づてに聞いていたので、この作品で実現してうれしかったですね。
綾野准一さんに初めてお会いした時、「じゃ、よろしくね」と声をかけていただいて、その場から去っていく背中を見送りながら、すべてを投げ打ってやり抜きたい、と自然に思ったんです。当時、役者として目標が曖昧ななかで、准一さんといつかまた成長した姿で必ず共演したい、というのが具体的な目標の1つになりました。
役者を続けてきて良かったと思うことはこれまでもたくさんありますが、そういった環境のなかで、背中を追い続けてきた人との共演がかなったのは自分の役者人生で初めてのこと。劇中でもずっと追いかけていましたが、人としてもずっと追いかけていきたいと思う背中を何度も見せてくださいました。
岡田僕は走り始めたのが早かったので、そのように思ってくださるんだと思いますけど、現場に立ったら対等というか、綾野さんはもう成長しすぎ、っていうくらい成長されていますし、実績も残されている方なので、ずっと追いかけていきたいなんて、そんなふうに思ってもらえるようなこと、何かしたかな?って疑問に思うくらいなんですけど(笑)。
綾野今回、共演がかなっただけでなく、対峙し続ける関係だったので、准一さんのお芝居を間近で体感する事ができたんです。それゆえに受け止めすぎて役を通して准一さんに対するリスペクトがあふれてしまわぬよう気を付けなければなりませんでした。雨や泥や埃、いろんなものにまみれながら、現場に立ち続け、撮影という旅を経て、宿泊しているホテルに戻って最初に生まれる感情は、なんて楽しいんだという純粋な幸福感。そんなふうに思える旅ができるなんて、本当に幸せでした。
岡田綾野さんには、僕が昔から抱いてきた俳優のイメージそのものの雰囲気があると思っていたのですが、相違なかったですね。面白いものを作るんだ、ということに対して、真っすぐに向き合われていましたし、心血を注ぐと言うのは簡単だけど、実際に行なうのは難しい。でも綾野さんはそれができる俳優なんだな、というのを現場で感じていました。
必死になればなるほど「笑っていいんです」
綾野いっぱいあります。一つ挙げるとしたら、金庫のアクションシーンですね。准一さんがまるでトカゲのように低い体勢のまま動くんですが、あの姿勢で、あのスピードで動けるのは、日々の鍛錬がなければ絶対できません。それを自然とやられる准一さんの後ろ姿を見て、ここで工藤を仕留めないと自分の身が危ないという畏怖が生まれ、矢崎に危機感を抱かせるに十分なインパクトがありました。
――トカゲみたいな動きは、岡田さんの発案ですか?
岡田そうですね。アクション部が作ってくれたものにアイデアを加え、監督にプレゼンする流れでしたね。金庫のシーンは、柄本明さん(仙葉組組長)のせりふに「トカゲ」が印象的に出てくるので、地べたを這いずり回っても生きてやるといった、この映画の根底にあるものも出せたらいいな、と思いました。僕は、撮影しているところを見ていない矢崎のパートを見るのがずっと楽しみだったんです。婚約者が読み上げた手紙に対して、「感動した」と言うところとか、絶品でした。
岡田金庫のシーンあたりからもうがまんできないって感じで笑いが起きたよね。
綾野准一さんの尾田(磯村勇斗)の真似とか本当に面白くて。
岡田この映画は笑っていいんです。
綾野ぜひ笑ってください。
岡田藤井監督とずっと一緒にやってきたチームの強みがあるな、と思いました。しかも、スタッフみんな僕ら俳優部に思いっきり芝居をさせてくれる懐の深さがあって、経験値も高い。雨の音で声がかき消されて、アフレコになるかも、と思っていたシーンが、「OKです。使えます」と、しっかり拾ってくれた録音部。金庫の中に置いてあった札束も、全部印刷してあったんです。たいていは一部だけだから、それを考慮したアクション構成になってくるんですけど、「どの札束の山を崩しても大丈夫です」って言ってくれた美術部。各部署がありとあらゆる可能性を想定して、準備してくれていました。
監督が具現化したいと思っていることに全部応える覚悟というか、気概を全員が分かち合っている。それは、芝居をあきらめていない、ということだと思いますし、面白いものを作るために一切の妥協はしないという姿勢の表れでもあると思うんです。
綾野藤井組は準備を徹底しています。どれだけ準備しても現場で新たに生まれる事に対してもさらに対応できるよう。だからこそ僕らも相談や提案がしやすい。この組の熱意は、ただひたすら真っ直ぐです。映画が総合芸術であることの大切さをいつも思い知らされます。
岡田藤井監督は日本映画のまさに希望。『新聞記者』(19年)のような社会派も撮られるし、『余命10年』(22年)のようなラブストーリーも撮られる。ジャンルにとらわれずボーダレスに面白い作品を作ろうとされているし、それができる監督だと思います。今回、ユーモアやコミカルな要素もあるエンタメ色の強い作品で、藤井監督から“力を貸してほしい”とオファーをいただけたことはとても光栄なことでした。
予告編
Producer:Cha Ji-hyun, Billy Acumen
監督:藤井道人
脚本:平田研也 藤井道人
音楽:大間々昂
出演:岡田准一 綾野剛
広末涼子 磯村勇斗
駿河太郎 山中崇 黒羽麻璃央 駒木根隆介 山田真歩 清水くるみ
杉本哲太/柄本明
製作幹事:日活・WOWOW
制作プロダクション:ROBOT
配給:東宝
(C) 2023映画「最後まで行く」製作委員会
公開:2023年5月19日(金)
公式サイト:https://saigomadeiku-movie.jp/
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