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福本莉子×古川琴音、『セカコイ』“親友”対談 「記憶」と「記録」について語る
福本台本を何度も読んで、全部わかっているのに、後半、泣いてしまいました。原作小説の山場が見事に映像化されていて感動しました。
古川キラキラした青春映画になっていて、ホッとしました。私はある“うそ”にもがき苦しむシーンがあるのですが、もがいて出た汗さえもキラキラ飛び散るようなシーンになっていて。頑張って、泉を演じて良かったと思いました。
――福本さんは、本作の三木孝浩監督とは『思い、思われ、ふり、ふられ』(2020年)に続いて2作目でしたね。
福本『思い、思われ、ふり、ふられ』で私が演じた由奈というキャラクターより、真織は少しだけ社交的とか、三木監督と「由奈」という共通認識があったおかげでキャラクターをつかむ手がかりを見つけやすかったという部分もありました。ただ、毎日、記憶と経験がリセットされるというのは、本当に手探りでした。
その苦しみは想像もつかないといいますか、自分が想像している苦しみを絶対上回ってると思うんです。今までできたことができない、勉強もできない、友達づきあいもできない、しかも真織はまだ高校生。多感な時期でもあります。毎日つけている日記だけが頼りで、それに囚われていて、そんな日常を考えるだけで、しんどかったですね。撮影中はとにかく必死でした。
朝早く起きて、日記できのうまでのことを復習しながら、記憶はないけれど、透くんにひかれていく。それをお芝居でどう表現したらいいのかが、難しかったです。撮影が後半になればなるほど難しくなっていきました。道枝さんとの共演は2回目で、古川さんは初共演でしたが、3人のシーンの撮影を重ねていくうちに、現場でどんどん仲良くなっていくじゃないですか。それなのに、本番で透くんのことを覚えていなくて、初めて会った人で、なおかつそのことを悟られないように振る舞う、というのが難しかったです。
古川三木監督の作品を観ては“こんな青春があったらいいな”と思っていたので、“監督の作る世界に入れるんだ!”と、とてもうれしかったです。久しぶりの高校生役も楽しみだったのですが、泉は後半、十字架を背負う役でもあったので、複雑な状況を頭では分かっていても心が追い付かなくて、必死でした。
福本さんは、真織は「今までできたことができない」とおっしゃっていましたが、泉から見ると真織は「今できることをどんどん作っていく」というか、不自由な生活の中でも今何ができるのかを常に考えて、前向きに生きている。真織の付せんだらけの部屋を見て、泉の方が奮い立たされている部分も多かったのではないか、と思いました。真織を演じる莉子ちゃんがどのシーンもみずみずしく、すごくキラキラしていて、こういう穢れない存在を泉は守りたかったんだなと、莉子ちゃんを通して感じることができて、お芝居に活かすことができたのも良かったです。
――印象に残っているシーンはありますか?
福本一つ、とても好きなシーンがあるんです。泉ちゃんの家に行くために、駅で透くんと合流するシーンで、泉ちゃんが透くんにカバンを投げつけるんですが、あれアドリブだったんですよ。それがなんか泉ちゃんらしくて、すごく印象に残っています。
――アドリブだったんですか?
古川何だろう、あの時、とっさに神谷を試したくなったんだと思います。いきなりカバンを放り投げても、ちゃんと受け取ってくれるいい奴なのかどうか(笑)。