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(更新: ORICON NEWS

キムタクに堺雅人、宮崎あおい… 相次ぐビッグタレント起用、マックCMの変化に見る新たな戦略

 家族連れや学生、若者を中心に人気のマクドナルド。昨今のCMは木村拓哉や堺雅人、宮崎美子や広末涼子、宮崎あおいなど、著名人のキャスティングにシフトしているように見える。以前のマックCMといえば、価格や商品のシズル感を全面に出したものの印象があった。こうしたCMの変化の裏にある同社の戦略とは?

30年ぶりに宮崎あおい出演の背景とは 先が読めないコロナ禍のCM制作は難航

 同社CMは2020年から木村拓哉が起用され、ハンバーガーの“キムタク持ち”が話題に。2021年には、62歳の宮崎美子が現在と50年前の女子中学生役で出演。さらに、宮崎あおいが約30年ぶりにマクドナルドのCMに出演した『てりたま』も今春話題になったばかりだ。

「マクドナルドには毎年季節限定の商品がありまして、中でも『てりたま』の春は、出会いや始まりをイメージしたものが多くなっています。昨年のCMは、桜の精が現れて、『今年はみんな見てくれるかな』という問いに、男性が『僕は見ますから』と力強く答える、“この春は、きっと特別だ”と感じられるような、温かなストーリーにしました。CMを通じて “来年も見に来てくれるかな、来年はお花見できるといいよね”というメッセージを込めました」(日本マクドナルドCMO・ズナイデン房子氏/以下同)
 CMを作るうえで大切にしているのは、毎年少しずつ変化する人々の心の機微に触れるストーリー作りだと言う。今年は「人との触れ合いの始まり」をテーマに打ち出した。

「昨年や一昨年はなかなか言えなかった『一緒に食べよう』というメッセージを込め、女性の先輩に若手の男性の社員がちょっとドキドキする、そのワクワク感が、春のときめき感とオーバーラップするストーリーにしました。いつも、まずストーリーがあって、そのストーリーをどなたに演じていただくと一番自然に伝わるかを考えるのですが、先輩で、爽やかで、憧れというイメージで宮崎さんが素敵だと思ったのです」
 しかし、コロナ禍ゆえの難しさも当然ある。作品によってはかなり前から企画を立てるCM制作において、目まぐるしい変化があったここ数年は、かなりの苦労があったようだ。

「お客様を取り巻く環境も価値観も大きく変わりました。今のお客様が何を感じ、何を求めているかを、肌感として感じ取る力、それをクリエイティブなストーリーにどう表現していくかは、スタッフでかなりのディスカッションを重ねました。先が読めないコロナ禍において、企画時とOA時では世の中の状況が異なり、泣く泣くOAできなかった作品もあります」

大野智から始まったビッグタレント起用「商品訴求からストーリーテリング型に」

 子どもからお年寄りまで、幅広い客層を抱えるマクドナルドだが、昨今の木村拓哉や堺雅人などのキャスティングには、少子化や健康志向の影響から、マクドナルドを避けがちな年齢層の再来店の狙いを感じさせる。

「若いときには行ったけれど、最近あまり行っていないという30代、40代、50代などのお客様もいらっしゃるのではないか、と。『久々に行ってみようか』と思っていただきたいという狙いから、その世代が共感しやすい方々にご登場いただき、BGMにも『う、ふ、ふ、ふ』とか『銀河鉄道999』『あなた』『SWEET MEMORIES』などの懐かしい曲を選んでいます。実際にそういった世代の方々にも再来店いただいている傾向も見え、CM効果を実感しています」
 近年のビッグネームのタレント起用の傾向は、2019年10月の消費税増税と軽減税率導入に対するマクドナルドの対応を伝えるCMが起点。「真摯で誠実なイメージ」として大野智を起用したことから、現在に連なる流れができている。このCM戦略の変化には、どのような社会背景や顧客ニーズの変化が影響しているのだろうか。

「2018年に私が前任者からバトンを受け継いだ時、日本マクドナルドは前人未踏の成長を目指していた時期でした。そのために、ブランドとお客様の関係を、より強い結びつきにしていくために、広告コミュニケーションのスタイルも、価格・商品訴求から、ストーリーテリング型に進化させることを意識しました。ファストフード店が乱立し、どこの商品も美味しいことが当たり前の状況では、お客様とブランドのmemorial な絆を作ることが大切だと思っています。そのため、就任してから一貫して「Like からLoveへ」というテーマを掲げて、小さなお子様から、ご年配のお客様まで幅広いお客様に、マクドナルドをより身近で愛着のある、“マクドナルドの代わりはない”と感じて頂けるブランドになることを目指してマーケティング活動を行っています」

ファストフード店乱立に少子化、健康志向… 「コロナ禍が終わったとしても、不可逆」

 だからこそ、CM作りは何よりもストーリーを大事にしているのだ。昨年、マクドナルドは日本上陸50周年を迎えた。この50年間、食文化や消費者ニーズは絶え間なく変化してきたが、ズナイデン氏は「常に挑戦だった」と語る。

「ハンバーガーという新しい食事の形態をはじめ、シェイクやポテトなど、こんなに楽しくて美味しい食事や飲み物があるだというイノベーションを起こしたのがマクドナルドだと思うんです。日本の新たな食文化を創造する役割を担ってきて、常に挑戦を続けてきたのが、マクドナルドの50年だと思います」
 コロナ禍で飲食業界、消費者の食への意識は大きく変化したが、今度はどんなマーケティングが求められるのだろうか。

「コロナ禍が終わったとしても、それが元通りになるわけではなく、やはり不可逆なところはあると思います。そうした中、安全・安心であることはもちろん、価格面でも、安ければ良いのではなく、今後は安いことに加えて何らかの付加価値、ワクワク感や楽しさ、大切な人とのつながりといったことがますます求められると思います」
 子どもの頃にハッピーセットを食べた思い出、学生時代に友人とテスト勉強をした思い出、仕事を始めてから会社前に立ち寄った思い出、さらに自分の子どもとの思い出……ライフステージに応じて、それぞれにマクドナルドの様々な思い出があることだろう。ズナイデン氏は最後にこんな思いを語ってくれた。

「銀座1号店に行ったのが青春、という方も多いんですよ。そのお客様の実際のエピソードを再現したのが、宮崎美子さんにご出演いただいた昨年のCMなのですが、お客様の人生の様々な思い出にずっと寄り添っている、身近な友達のようなブランドとして、CMを通して皆さんの人生のシーンを思い出していただけたら嬉しいですね。そして、日本の50代60代の皆さんすごく元気ですから、幅広い世代にもう一度お店に訪れていただきたいなと思います」


(文=田幸和歌子)

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