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500万円の『龍の畳』で和室の新たな可能性を提示 無職で暇を持て余して作った畳に「衝撃受けた」

 1869年から続く老舗、山田一畳店で働く山田憲司さんが制作した「すごい畳」がSNSを中心に大きな話題に。お寺からのオーダーで作ったという「龍の畳」には「絶対踏めない」「かっこよすぎる」「日本の宝」など称賛の声が寄せられている。そのほかにも、”畳は四角”という概念をぶち壊すような新しいデザインの畳を制作しており、今月には個展も開催。素晴らしい発想と技術を持つ山田さんだが、5年前まで実家の畳店を継ぐつもりは全くなかったという。畳の魅力にハマったきっかけや、制作のこだわり、今後の夢などを語ってもらった。

遊び感覚で作った畳に衝撃を受け、研究に没頭「これなら世界で頂点に立てる」

――「龍の畳」がSNSで大きな話題となりましたが、反響をご覧になっていかがですか。

今までになかった反響で大変驚いています。今まではツイッターに投稿しても「いいね」が3〜4つかしかつきませんでしたが、「龍の畳」のツイートは約7万もいただきました。褒めてくださったコメントも数百件頂き、とても嬉しいです。

――畳店の仕事を始めたのは最近だとお聞きしましたが、家業を継ごうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

無職でダラダラしていた2017年の時期に、暇そうだからという理由で友達から変形した畳を依頼されました。ハイエースの荷台に畳を敷きたいという希望で、遊び感覚でタイヤの形などくり抜いた畳をつくりました。その時生まれて初めて畳を作ったのですが、自分でも予想以上の出来に衝撃を受けてしまいました。その時に、これなら世界で頂点に立てるといきなり思いつき、変形した畳作りの研究を始めました。注文を得るまでには時間がかかりましたが、畳の試作品が完成するたびに魅了されていきました。

――畳の魅力に気づくまで、実家の畳店のことはどのように思っていましたか。

僕は1983年生まれなのですが、物心ついた時から畳の業界は衰退に向かっていると気が付いていました。その時から畳屋を継ぐつもりも無く、大学を卒業後は別の業界で働いていました。ただ、実家の畳店の創業が1869年なので、100年以上も続く店が僕の代で無くなるのは寂しいと、心のどこかにはあったと思います。

――100年以上も続く老舗を継いでほしいと言われたことはあったのでしょうか。

特別言われたことはなかったですが、継いでほしそうな感じでした。

500万円の「龍の畳」も利益ほぼ出ず モチベーションは「新しい技術にチャレンジしたい」

――山田さんは「龍の畳」の他にも、これまで様々なデザインの畳を制作されていますが、なぜこのような畳を作ろうと考えたのでしょうか。

最初は直線的な幾何学模様など、シンプルなデザインでしたが、作品を作るたびに畳に魅了されてしまい、次はもっと新しい技術にチャレンジしてみたいと、次から次へと新しいアイディアが浮かんできました。2019年には、一人で4か月かけて「龍の畳」を制作し現在のスタイルが確立しました。仕事の依頼はなかなか来るようにならなかったのですが、毎日欠かさず建築業者様向けに30件ずつ自己紹介&営業メールを送り年間で1万件、3年間で3万件のメールを送りました。その中から少しずつ依頼してくれる人が現れました。

――そんな地道な努力が報われ、今月には個展も開催されます。「龍の畳」のような畳が欲しいという人も増えてきそうですが、このような作品はどのくらいの値段なのでしょうか。

同じデザインのものは作らないのですが、あのレベルのもので500万円の金額設定にしています。「龍の畳」の発表後、数百万円規模の依頼は3件ありました。ただし、あのレベルの作品はデザイン考案も含めて年間に2件しかできないので、機械の減価償却などを考えるとあまり利益は出ず、一般的な畳を作り続けたほうが儲かります(藁)。

――それでも「すごい畳」シリーズを作り続ける、山田さんの作品へのこだわりを教えてください。

すべて同じ色の天然イグサを利用していますが、畳の網目の角度を少しずらすことによって、光の反射で色を変化させています。例えば「龍の畳」の場合、正面から見ると歯は白く見えますが、反対側に立って見ると歯は金色に変化します。網目の角度を10度にしたり、30度にしたり、45度にしたりすることで、単色のイグサをいろいろな色に変化させています。立つ位置によって色が変わったり、時間帯によって色が変わったり、天気によっても変わる不思議な作品です。現物をみると、光を反射した時のイグサの色が本当にきれいで、写真には写らない美しさがあります。

――これまでの畳制作で最も印象に残っているものはありますか。

「すごい畳」の制作はとにかく体に負担がかかるので、痛みしか印象に残らないです(藁)。

「伝統文化だから残す」ではなく、欲しいと思う商品を 夢は桂離宮とベルサイユ宮殿で個展

――山田さんが惹かれた“畳”の魅力を教えてください。

世界的に見て、床に柔らかい素材で、尚且つ草を敷き詰める文化は唯一無二です。通常は木、石、タイルなど、硬いものを使います。イグサのにおい、踏んだ時のスベスベ感、光が当たった時の色合いは、他の素材にも勝るとも劣らないです。

――以前はどの家にも和室があり、畳がありました。しかし今ではフローリングが主流となっています。畳の生産量が減少していることにどんな思いがございますか。

市場が決めるものなのでしょうがないかなと思います。使う人がフローリングのほうが魅力あると思っている割合が多い、それに尽きるでしょう。先ほど畳の魅力をお話しましたが、日本の伝統文化であると論ずるより、プロならその魅力を引き出し、クライアントが欲しいと思える商品を提供するしかないと思います。

――では、今後どんな畳を制作したいですか。また、山田さんの目標も教えてください。

今は生活が厳しいので、とにかく売れる畳を制作したいです。そして10年後には現代アートの分野でも、「すごい畳」が世界で頂点を獲ると思います。夢は、桂離宮とベルサイユ宮殿で個展を開催することです!

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