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ホラー映画に詳しくなりたい! 特集上映中のジョン・カーペンターを攻略

黒沢清監督「カーペンター作品は娯楽映画のお手本」

 公開初日の1月7日、ヒューマントラストシネマ有楽町で『ニューヨーク1997』上映後に行われたトークイベントに、映画監督の黒沢清氏と映画評論家の柳下毅一郎氏が登壇。

 黒沢監督は「(『ニューヨーク1997』が制作された)1981年当時は、インディ・ジョーンズなどアメリカ映画で豪華なヒーローものが数多くあった中で、このアウトローぶりはすごいですよね。70年代前半までは、スネークのようなアウトローが出てくる作品が多かったのですが、映画の体裁をしっかりとりながら、しかも80年代にここまでアウトローな主人公はすごいと感じました」と、映画史を振り返りながら、カーペンターが創り上げた唯一無二のダークヒーローであるスネークを高く評価。「カート・ラッセルのあの感じって、60年〜70年代の映画に出てきましたよね。こういう人いたんだよな、と懐かしい気持ちになりました」と、『ニューヨーク1997』は60〜70年代作品のオマージュでもあると指摘した。

 カーペンターが影響を受けた作品として、柳下氏は「囚人に毒を注射して24時間以内にミッションをクリアするという元ネタは、ルドルフ・マテ監督の『都会の牙』というサスペンス映画からきているのではと思いますね。今では『スーサイド・スクワッド』もそうですが、全ての元ネタはこの『都会の牙』だと思う」という見解を述べていた。

 また、黒沢監督は「主人公の行動原理が基本的に自分のためですよね。大体、人のためであったりお金のためであったりすると思うのですが、カーペンター作品はそうではない。ちょっとした意地だけでこれだけのことをやってしまう人。ほぼ一貫して、そういう主人公像の様子を見せる映画を撮ってきているということはすごいなと感心します。」とカーペンターが貫く作風を絶賛。

 さらに、「作る側の発想なのかもしれませんが、娯楽映画の場合、どこをどう工夫すればちょうどいいんだろう。というのが正直誰にも分からないんですね。尺も90分にすれば良いのか120分なのか。3時間なのか。それこそ、主人公の行動原理は一つでいいのか、途中から全然違う何かが入ってこないといけないのか。予算もありますし、いつも迷うんです。その時、カーペンターの作品を観ると、あ、これくらいでいいんだ。カーペンターの作品は娯楽映画の一つの基準なんだといつも思うんです」と話した。

 柳下氏が「カーペンターは、必ずネタを2回もってくる。そういうシーンが何度も出てくる。伏線を張るのが構成として上手いと思います。低予算映画ならではの工夫ですよね」と称賛すると、黒沢監督も「細かいところはかなり気を使って丁寧に作られているから、目が離せない作品になっていますよね。これはやはり娯楽映画のお手本だと思います」と、カーペンター作品への思いを語っていた。

漫画家・辻次夕日郎描き下ろし『ニューヨーク1997』あらすじ漫画

 小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」主催のスピリッツ賞で読切「スノウボールアース」が入選受賞。その後、同作が「月刊!スピリッツ」にて連載開始となり、昨年の11月には単行本第2集が発売になるなど、熱烈な支持を集めている漫画家、辻次夕日郎氏が描き下ろした『ニューヨーク1997』のあらすじ漫画。まず目を奪われるのは、巨大な刑務所となったNYマンハッタン島に降り立った囚人スネーク・プリスキンの姿。辻次氏の力強い筆致が絶大なファンを生んだスネークに息吹を吹き込む。そして大統領救出の任務に身を投じるスネークの腕に装着された制限時間が過ぎると爆発するライフクロックウォッチなど劇中の魅力的なアイテムも登場。さらに、不敵な笑みを浮かべるラスボス、デュークの姿も! 「逆境を打ち破り、無事ミッションをクリアできるのか!?」という文言とあわせて険しい表情を浮かべるスネーク。その表情さえも格好いい。辻次氏がSF映画きってのダークヒーロー、スネークの世界を見事に蘇らせた。

画家・ヒグチユウコ描き下ろし『ザ・フォッグ』イラスト

 『ラストナイト・イン・ソーホー』(2021年)のイラストも手がけた画家のヒグチユウコ氏が描き下ろした『ザ・フォッグ』のイラストが到着。『ダーティハリー2』(1973年)や『大統領の陰謀』(76年)、『カプリコン・1』(77年)のハル・ホルブルック演じるマローン神父が金でできた十字架をなんとも険しい表情で抱えている姿が目を引く。背後には亡霊が…。霧で隠れた亡霊の姿がはっきり見えない、この“得体の知れない者たち”も色濃く、そして繊細な筆致で描かれている。ヒグチ氏はこのイラストについて「霧と共に現れる亡霊たち。そして不安を煽る印象的な音楽。魅力は随所にあるのですがどこを描くか、となった時真っ先に神父と十字架を選びました。ホラーの名作の絵を描くのは最高に楽しかったです」とコメント寄せている。

著名人のコメント(※敬称略)

●荒木飛呂彦 (漫画家)
現在観返しても、昔から考えても、ジョン・カーペンター作品は本当に革進のSF・ホラーエンターテインメントなのだ!と改めて思う。それはロックだ。その登場人物たちも音楽も現在へ受け継がれている世界観も。

●押井守(映画監督)
この3本より「要塞警察」が好きなんです。セーター姐さんがリボルバーを片手でリロードするシーンが最高です。ジョン君が演奏してる単調なシンセも脳に焼き付いてます。

●奥浩哉 (漫画家)
ジョン・カーペンター監督は僕の漫画人生でも特別な影響を与えてくださりました。カーペンター監督の作品群のようなオリジナリティがありユニークで刺激に富んだエンタメ作品を漫画を一生描いて行けたらうれしいです。

●柄本佑(俳優)
dear ジョン
早く新作撮りなさい!と、思わず声を張り上げたくなります。傑作『監禁病棟ザウォード』以来毎年のように「ジョンカーペンター 新作」と調べては、なんの情報も得られず。と、そんなある時新作が!! ジョン、新作「録って」たんですね、、、。映画撮らんと何枚アルバム作ってんですか!? 聞きましたよ! 笑っちゃったよ! どっから聞いてもカーペンター節! 最高かよ!! でもねジョン。そろそろスクリーンでも観たいので宜しくです! 大大大好きなカーペンターの傑作3本! 見逃す手はありませんぜ! ジョンはいつだって我々観客へのサプライズを忘れない、粋な男です。

●青山真治(映画監督) 
『ゼイリブ』が世界に発した予告(予言ではない)から33年が経過し、某駅通路でご存知だろう、現実はその予告通りのものとなった。我々はもうダメだ。だがもしこの現実を克服するヒントがあるとしたら、それもやはりカーペンター作品のどこかに隠されているはずではないか。だとしたら見なければならない、一刻も早く! それでなくともこういう王道の娯楽映画の火は消えようとしているのだ。消えていいわけがない。娯楽映画を救え! カーペンターを救え! なに? カーペンターは悠々自適に『ハロウィン』最新作の音楽を作っている!? それならそれでいい、それも見に行こう、そして娯楽映画の不滅を確認せよ!! こんな機会、十年に一度あるかないかだぞ!!!

●渡辺信一郎(アニメーション監督)
最近の映画が、とにかく長い。そして内容を詰め込みすぎで、見終わるとぐったり疲れてしまう。そもそも娯楽なのに人をぐったりさせるなんておかしくないか? そんな今こそ、カーペンターを見直すべきじゃないか? 今回の3本ともすべて90分台、娯楽映画はこうじゃなくちゃという長さ。そして余計なものは詰め込まず、的確でしかし充分に映画たりえるという彼のやり方を学ぶべきじゃないでしょうか。

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