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卒業する生徒のために描いた『鬼滅』アートに感動の声 作品を通して生徒たちに伝えたい想い

 現役の美術高校教師である、はまーさんことMア先生は、黒板にチョークだけで絵を描く“黒板アート”を描く達人。それだけでなく、『鬼滅の刃』の煉獄杏寿郎や我妻善逸などを落ち葉だけで描く“落ち葉アート”も多数制作している。先月にはアンパンマンを落ち葉で描くと、声優の戸田恵子さんのブログでも紹介され話題に。そんなMア先生に、儚い“一瞬のアート”の魅力と、アートを通じて生徒に伝えたい想いを聞いた。

今では全国的に広まった『黒板アート』も、はじめは「チョークの無駄遣い」と言われ…

――はまーさんが黒板アートを始めた理由を教えてください。

あくまでも教員として『魅力ある授業づくり』の一環で始め、続けていることばかりです。すべてが教材研究なんです。例えば黒板へ真剣に絵を描くこと。始めた当時は、学校の黒板にあそこまで過剰に描きこむ人が世の中に居なかったからこそ、面白いかもしれないと思い、"ワンランク上の板書"の精神で取り組みました。当時は『黒板アート』という言葉も文化も無かったので、色々と大変でした。SNS文化の発展とともに『黒板アート』が広まり、今ではその全国大会が開催されたりするなど、感慨深いものです。

――はまーさんは、黒板アートや落ち葉アートを教壇に立ち始めた2010年から継続しているそうですが、先生をしながらどのように作品を制作しているのでしょうか。

本来の板書ならば、そこまでしなくてもいい描きこみのため、基本的には勤務時間外で行っています。以前話題になった『鬼滅の刃』の登場人物を描いた作品は、3連休中に20時間ほどかかりました。普段は、学習の範囲はどんどん進むし、黒板をずっと占領するわけにもいかないので、できるだけ手短に書いて、消すようにしています。はじめた頃は理解を得られず、「チョークの無駄遣い」と言われたこともあって、学校にあるチョークと同じものを自分で買っていました。

――黒板アートや落ち葉アートというのは、一生残るものではなく、すぐに消してしまう(消さなければいけない)という特徴があると思うのですが、そんな儚い“一瞬のアート”の良さ・魅力とは何でしょうか。

自分がいつも感じているのは、『満開の桜』や『打ち上げ花火』などに通じる、刹那的な美しさかもしれません。儚いからこそ、普段以上に目に焼き付けようとしたり、心には残り続けるといった魅力があるように感じています。

――普段はすぐに消してしまうものが多い中で、なかなか消すことができなかった作品はありますか。

普段自分が描くものは『板書』としての役目さえ果たせば躊躇せず消せますが、他者が想いを込めて描いたものはやはり消しにくいものです。本来注意すべきような生徒の落書きでさえ、想いがこもっていると消しづらかったりします(笑)

「教師は学び続けるプロでなければならない」 “美しいなぁと感じる心”を育てたい

――黒板アートや、風が吹けばすぐに崩れてしまう落ち葉アートは、制作にかなりの時間を要すと思いますが、時間をかけて、消えてしまう作品を描くモチベーションはどこにあるのでしょうか。

時々自分でも何でこんなことしてるんだろう…と冷静になる瞬間があって(笑)。でもきっと、目の前の教え子に喜んでもらいたいとか、楽しんで学んでもらいたいという気持ちが大きいんだと思います。恩師から「教師は教えるプロであると同時に、学び続けるプロでなければならない」と教わったことがあって。アートというよりは教材研究、自分自身の研鑽でもあるのかなぁと思います。

――一番印象に残っている作品は何でしょうか。

描く側から描かれる側に回ったことが一度だけありまして…、自分が転勤で離任する際、生徒たちが描いてくれた黒板アートです。桜並木の道の上、笑顔で手を振る生徒たちと、それに振り返す私の手のアップの絵でした。言葉では伝えきれないような想いが詰まっていて、その黒板を消し終えた瞬間に生徒たちが涙をこぼし始めた光景、惜別の時間、教室の匂い、鮮明に焼き付いています。

――最後に、作品を通して生徒たちに伝えたいこととは?

自分が授業で毎年生徒たちに伝えているのは、絵を上手に描くことよりも、画家の名前を覚えることよりも、“美しいものを見て、あぁ美しいなぁと感じる心”を育てる大切さです。芸術に触れ、想像や創造を通して、心豊かに、それぞれの人生を描いていってほしいなぁと思います。自分もまだまだ青いので、出会いを大切に、健康第一で、末永く生徒と共に学び続けていけたらいいなと思います

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