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デパートだけじゃない、マルイ『アニメ事業部』の高クオリティが話題 「グループ全体でも大多数の社員がアニメ好き」

 動画配信サービスの浸透などでアニメ消費者の行動や意識が変化する中、丸井グループがアニメファンから注目を集めている。国民的な認知度のビッグタイトルから毎クールの新作アニメまで、いわゆる他社IPと組んだ多彩なポップアップ・イベントは、もはや商業施設『マルイ』のおなじみの光景に。イベント催事の本数は、コロナ禍にありながら2020年度は前年度と横ばいで年間500本。21年度には600本超となる見込みだという。アニメ業界でも存在感を増す背景には、どんな取り組みがあるのか。同社の「アニメ事業部」のキーパーソンである営業課長の石川功さんに話を聞いた。

オリジナルアニメがアワードで金賞受賞、「アニメは生活の一部として楽しまれる文化」

――優れたアニメ×異業種の取り組みに贈られる『第1回 京都アニものづくりAWARD』にて、オリジナルコンテンツ部門で丸井グループが制作したショートアニメ『そばへ〜日照雨〜』が金賞を受賞しました。

石川さん雨をテーマにした物語で、美麗かつ精緻なグラフィックが印象的な清涼感ある作品です。あえてたくさんの余白を残すことで、観てくださるみなさまにいろんな想像を楽しんでいただきたいと制作しました。アニメ制作の取り組みはあくまで、弊社グループのキーワードであるお互いに認め合うという意味の「インクルージョン」をメッセージとして伝えるための手段。決して、これからどんどんオリジナルを制作していく、ということではありません(笑)。

――「アニメ事業部」の立ち上げには、丸井グループのクレジットカードである『エポスカード』会員へのアンケート結果が影響していて、約6割が「アニメ好き」と回答したとか。これは2015〜16年当時でも驚きの数字だったのでは?

石川さんお客様と接する現場から遠いスタッフは、その結果を「意外!」と捉えたかもしれませんね。アニメ好きとファッション好きは、同じ人の中に普通に共存し得る要素です。

――たしかに、作品ごとに好き嫌いこそあっても、たとえば「映画」「ドラマ」「音楽」などの枠自体を否定する人などそうそう存在しません。

石川さんアニメも特別なものではなく、若者の生活の一部としてのファッションや音楽、食などと同じように楽しまれているエンタメカルチャーです。同時期のグループ社員へのアンケートでも、大多数がアニメ好きと回答していました。そこに新たなお客様との接点があると判断できたからこそ、アニメ事業部がスタートしたといえます。

アニメ関連イベントは年間500本以上、カード事業も好調

――それにしてもアニメ関連だけで、年間500本以上のイベントが店舗や関連施設で開催されているとのこと。また、アニメのキャラクターが描かれたデザインも評判のクレジットカード『エポスカード』が好調で、カード会員数も700万人超えと順調です(2021年6月時点)。

石川さんアニメ事業部と申し上げてはいるのですが、実態としては「エンタテインメントコンテンツ事業部」というのが近いですね。あえて拡大解釈をして、K-POPやVTuber/YouTuberさんのイベントなども含め、とくに若い世代が反応していただけそうなエンタメコンテンツを企画化しています。それをきっかけに集客させていただき、我々の本業である小売や、『エポスカード』などのフィンテックをより活性化するというのがアニメ事業部のミッションです。ですので、私たちがオリジナルアニメを作って、直接的にマネタイズするといった目的ではありません。イベントやキャンペーンを実施していなかったらマルイ自体に接点がなかったような、とくに若いお客様には効果的にリーチできる重要な導線と考えています。

――「EC事業部」や「ポップアップ・イベント事業部」との連携はいかがですか。

石川さん現在の取り組みの原型ともいえるのは、実は2017年の実写映画『銀魂』です。その映画の製作委員会に参加した際に、物販イベントだけではなく、体験性を重視した展示やECでのグッズなどの取り扱い、オリジナル券面での『エポスカード』発行なども加えて、多層的なコラボを展開することで、より幅広いお客様に接触することができた象徴的な取り組みでした。

――アニメのコラボカードをメインカードにするお客様も多いとか。好きな作品だからこそ毎日利用したいというファン心理だと思います。そういう意味では、「フィンテック事業」にも貢献できているようです。

石川さんそうですね。「ポップアップ・イベント事業部」や「EC事業部」はそれぞれ職務領域も人材も重なりあい、たがいに補完しあう関係ですが、アニメをはじめとするコンテンツ軸で、グループ内の各領域に貢献できていると思います。

「アニメとの接点の場を増やす」その『マルイ』スピリットとは

――扱うアニメのジャンルはじつに幅広いです。それぞれのIPの版権元や、アニメファンの反応はいかがですか。

石川さん版元様からは、『マルイ』と組むことで、普段のアニメイベントと比較して客層がより幅広くなるという声は多くいただいています。ですから、こちらからターゲットやジャンルはあえて決め込まずに取り組んでいますね。アニメ専門店などと差別化した商品展開を望む声もあって、我々の店舗に入店いただいているブランドとのコラボ商品の新規開発といった取り組みも行って、それがまた評価としてフィードバックされている面もあるかと思います。

――まさに、アニメとの接点の場づくりですね。通販サイト『マルイノアニメ』でも、アニメ関連グッズを多数展開しています。

石川さんたとえば店舗が都市部に限られるポップアップ・イベントでは、そこに行けない地方のお客様はイベント限定商品などが手に入りませんが、『マルイノアニメオンライン』との連動で、ご満足いただけている面は大きいかと思います。直近では、発売予定の新商品を“紹介”するイベントも実施しました。いわばプレゼンの場であり、実物のサンプルを実際に見ることができます。急いでその場で購入していただくのではなく、しっかり考えた上で商品を検討いただき、よりファンに満足いただけるよう、ひとつの体験の場として構成しています。

――ちなみにイベント展開・キャンペーンが成立するまで、社内でどのくらいの期間、準備を行いますか。

石川さんケースバイケースですが、しっかりした組み立てで店頭含めたコラボ展開をするためには、できれば半年から3ヵ月ほどの準備時間は考えたいところですね。新作アニメの製作委員会に参加している作品を盛り上げるための動きと、全国で大々的に宣伝活動が行われるような作品のキャンペーンの一環ではまた異なります。

――新作アニメの製作委員会には、ほぼ毎クール1作品は参加されているようです。アニメを応援し、ライフスタイルの中でアニメファンが楽しめる場を設ける。このシンプルなビジネスが、「アニメ事業部」の成功に直結しているんですね。

石川さん当社グループでは基本的に、社員全員が店頭での接客を経験しています。そして数年ごとに様々な職務をローテーションする体制です。社員自ら店内を装飾したり、イベント展示を内製したりもできるんです。コロナ禍は、店舗が休業せざるを得なくなるといったマイナス要素もありましたが、オンラインとオフラインを融合するプラットフォームへ進化する過程を加速してくれたプラス面もあったと思うんですよね。そこで出会えたお客様とのお付き合いも大切にしていこうと考えています。
(取材・文/及川望)
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