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着想はスター・ウォーズ? 全く売れなかった“闇落ち”のトマトが行列呼ぶヒット商品になった理由
なぜ直売所のみで販売? 名づけのきっかけは『スター・ウォーズ』
びっくりするくらい反響が大きく、土日を中心に直売所に朝からお客様の列ができています。開店時間前の行列で完売してしまうので、整理券を配って対処しています。また、コメントなどで、「フードロスやSDGsなどに貢献していて素晴らしい」という声をいただいたのはうれしかったですね。
――「闇落ちとまと」を思い付いたきっかけは?
当初から、“尻腐れ”トマトは地元の農家さんは近所にあげたり、フルーツトマトジュースやフルーツトマトケチャップの原料として使用したりしていたのですが、昨年からのコロナ禍でトマト自体が余ってしまい、捨てるのも忍びなく、直売所で販売することに決めました。しかし、尻腐れトマトは見た目が非常に怖いので、嫌われてあまり売れなかった経緯が過去にありました。この状況は、映画『スター・ウォーズ』で並外れた資質を持ちながら暗黒面に落ちたアナキン・スカイウォーカーに似ているなと気づき、可哀想だと思ったのがきっかけです。
――“尻腐れ”トマトはどうしてできるものなのでしょうか。
トマトは、水を吸わせないでストレスをかけて育てると甘くなることが知られています。このフルーツトマトを作る過程で出てしまう生理障害が“尻腐れ”です。主に、水不足によってカルシウムが吸収できないことによって引き起こされます。
――「闇落ちとまと」はなぜ直売所でしか買えないのでしょうか。
トラブルを避けるためです。直売所では、生産者の私自身が対面で説明するので、しっかりと理解してもらえるので販売できます。黒い部分を削って食べるとか、常温で赤くするともっと甘くなるとか、状況に応じてお客さんに説明する必要があります。インターネットなどではそれが難しくトラブルになるリスクが高いため、直売所のみで販売しています。
手間とリスク伴う“規格外品”を販売する理由「食べ物も個性を楽しむ余裕があってもいい」
形の悪い作物が、なんでもかんでも美味しく食べられるとは限りません。味は、季節的な要因や栽培の仕方に起因することが多いです。また、特に素人の方が行う家庭菜園などでは、他の病気や障害(例:灰色カビ病・芯腐れ)を尻腐れと間違えたりする場合が予想できるので気をつけなければなりません。このような規格外は、プロである私たちが選別したものを買っていただければと思います。農家側も、売る際にはトラブルを避けるため、適切な知識でコミュニケーションをとる必要があります。
――トマトに限らず、野菜や果物が、見た目が悪いだけで捨てられてしまう現状にはどう思われますか。
経営者的に考えると「もったいないしもっとお金になるのに」と思います。個人的には、その捨てられてしまう商品をあえて販売することで、フードロスのあり方を考える一つの入り口になってくれれば良いなと思います。気をつけて欲しいのは、規格外品などを販売できる直売所は、背景にしっかりした出荷体制(JA)や流通インフラがあるということです。そこへの感謝も忘れてはいけないと思いますね。
当農園だけではありませんが、青果物は必ず旬があって、食べきれないほどの量が一気にとれてしまうことは珍しくありません。このようなときは、どうしても廃棄しなければならず悔しい思いをします。また規格外品「だけ」を求めて来店し、売り切れていると嫌な顔をして帰る人がいると悲しくなります。
――「闇落ちとまと」を通して、消費者の方にどのような意識をもってもらいたいですか。
食べ物にはこういう規格外があるというのは当たり前なことです。個性的な形を楽しむ余裕があってもいいんじゃないでしょうか。そして、既存の流通インフラや小売店の存在に感謝しつつ、フードロスへの関心、バランスのとれた議論のきっかけになって欲しいですね。
――最後に、「闇落ちとまと」を使ったオススメの食べ方を教えて下さい。
カプレーゼがおすすめです。モッツァレラチーズとオリーブオイル、バジルを添えてお召し上がりください。