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大人の“子どもな部分”に寄り添う『かいけつゾロリ』、作品とツイッターの“メタな世界観”が共通点に

ツイッターで34.6万ものいいねを集めた、かいけつゾロリ公式アカウントの投稿

ツイッターで34.6万ものいいねを集めた、かいけつゾロリ公式アカウントの投稿

 1987年から発売されている、人気児童書シリーズ『かいけつゾロリ』(ポプラ社)。その公式ツイッターアカウントに主人公・ゾロリの語り口調で投稿される画像が「急に真理をついてくる」と話題に。ゾロリが「しーっ」と口元に手を当てて、「『良い子』『悪い子』ってのは、大人の都合でテキトーに決まるんだ。ほんとはみんなどっちでもないんだぜ。」「おとなには しーっ だぜ」と語り掛ける画像には、34.6万を超えるいいねが集まった。読者世代である“児童”ではなく、あえて“おとな”にむけてメッセージを発信し続ける理由とは? ポプラ社のアカウント担当に話を聞いた。

ツイッターとゾロリの世界観に共通点、「作品との境界線をなくしていく感覚」

 2018年12月から投稿を始めた同アカウントは、今では6.6万人のフォロワーを持つほどに成長。つぶやきはゾロリの多彩なイラストとともに「どなたか偉い人へ。おれさまに公式マークをください。」「会う人会う人に『なつかしい』って言われる」「ツイッターやりすぎなんじゃないか?」と自虐するようなツイートも。

 おもしろおかしいツイートを連発しているかと思えば「勉強ができると 頭が良いことになるの、なーんでだ?」「だれかが いう 『向いてる』『向いてない』なんて、きにする ひつよう ないぜ」「大人になると気がづく 白でも黒でもなく、グレーをグレーと伝えるのって意外とむずかしいよな」と、思わず考えさせられてしまうつぶやきも投稿されている。この“おふざけ”と“真面目”が盛り込まれた絶妙な塩梅のツイートには「ゾロリせんせのツイート心に響く」「急に真理をついてくる」「小学生の頃にこの言葉が聞けていたら」など大きな反響が集まっている。

「作者の原ゆたか先生が、長年ゾロリシリーズで子どもたちを楽しませてきました。かつて読者だったユーザーのみなさんが“ポジティブなゾロリ像”を共通認識として持っているという土壌が、反響をいただけている要因だと思っています。つぶやくことは、ゾロリのキャッチコピーである『まじめにふまじめ』という言葉が起点となっています」(ツイッター担当者、以下同)
 いかに『まじめにふまじめ』のメッセージをツイッターにあてはめていくのか。担当者は「ゾロリとツイッターの世界観には共通点もあり、原先生が物語のなかで伝えてきたことを落とし込みやすい」と語る。

「ゾロリのお話には原先生がたびたび登場します。主人公のゾロリ・イシシ・ノシシに次いで人気があるくらい(笑)。ゾロリたち自身が読者に直接語りかける場面も多くあります。『どうも、作者の原ゆたかでーす』といきなり呼びかけてくるようなメタ的な演出は、発信して終わりではなく反応してもらうことで成り立つツイッターでも活かせると思っています。双方向のコミュニケーションで、作品との境界線をなるべくなくし、自分事にしてもらう感覚は大事にしています。

 私が小学生のときに抱いていたゾロリのイメージは、とにかく『面白いな』『楽しいな』というのが前面に出ていて、『まじめにふまじめに生きることって楽しいよね』ということまでは当時なかなか感じ取れていなかった。大人になって振り返ったときに、改めて『こんなメッセージがあったんだ』とか、『幼い頃はこんなこと感じてたな』と、ゾロリがその人にとって大切なことを思い起こすきっかけになってくれればうれしいなと思っています」

大人になって失われがちなことも思い出させてくれる「味方でありたい」

1994年に刊行された『かいけつゾロリつかまる!!』(画像提供:ポプラ社)

1994年に刊行された『かいけつゾロリつかまる!!』(画像提供:ポプラ社)

  ゾロリが目指しているのは、“いたずらの王者”。そのために修行の旅を続けていて、いざというときに“かいけつゾロリ”に変身する。弟子として一緒に旅をするイシシ・ノシシと共に様々な問題を解決するが、その手法は実に意外性に富んだものばかり。場合によっては、トラウマになりかねないエピソードも。

 1994年に刊行された『かいけつゾロリつかまる!!』では、いたずらばかりするゾロリに苦情が殺到し、どうぶつけいさつによって牢獄に捕らえられてしまう。脱獄しようとするが、その展開が子ども心にとても怖く感じた思い出が蘇る。牢獄の秘密兵器で何でも消してしまう「キエルンガーZ」というロボットによって物語の本文が消えてしまうというメタ演出や、ゾロリ自体も鼻の先端を消されてしまい、最後に“描き直される”という展開が。予測不能な出来事が、物語のなかで起き続けるのだ。

「ゾロリはAかBかという局面で、Cを選んでくる。担当になってあらためて、既成概念から解き放たれているゾロリを心の底からかっこよく思います。一生立ち直れないような失敗をしても、本の最後では『次はこんなことしようぜ』って笑っている。こんな大人になれたらな…という思いもあるし、でもなったら大変だろうなと(笑)」

「破天荒でかっこいいゾロリを見ていると、子どもの頃に純粋に何かを追いかけていた自分を思い出させてくれるんです。大人になって日常生活を送っていると、そういう純粋な気持ちや前を向く気力って見失ってしまいがち。ツイッターを見てくださる大人の方々にとって、ゾロリが進みたい方向に一歩を踏み出すための“道しるべ”であり常に“味方”になってくれる存在であったらいいなと願っています。そして一緒にゾロリと冒険する仲間になってくれれば…」
 ツイッターで「公式マークをください」「会う人に『懐かしい』って言われる」と自虐を交えた発言については、「単なるおふざけとは少し違っていて…」と担当者。

「ゾロリを国民的なキャラクターにしたいんです。ゾロリを記憶の奥のほうにしまっていた大人の方々にも、単なる思い出以上の“今でも楽しめるコンテンツ”だと伝えていきたい。ツイッターを見ている大人たちの心の中にずっと存在し続けているはずの、“子どもだった自分”に今後も寄り添っていけるゾロリでありたい。原作で伝えていたメッセージをあらためて翻訳して伝えていくことが、我々の仕事だと思っています」

かいけつゾロリ ポプラ社公式ツイッター:@zororizz(外部サイト)

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