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ORICON NEWS
演歌の逆襲か? “ジャンル外に出る”ことでアーティストパワーとポテンシャルを再認識
歌手もファン層も高齢化 しかしアーティストパワーは健在
スペシャルゲストとして紅白でリモート出演した北島三郎(C)ORICON NewS inc.
北島自身、2013年の50回目出場をもって紅白から卒業。今回のゲスト出演発表時でもすでに「歌唱はしない」と宣言済み。引退・卒業という言葉が軽くなり、復活のハードルも低くなっている昨今、きっちりと“筋を通す”姿に男気を感じ、国民たちも「さすがはサブちゃん」とリスペクトを抱いたのではないだろうか。さらには大量の紙吹雪の中で歌った純烈に対して、同じくこれまで紙吹雪にまみれて歌い続けてきたサブちゃんだけに、「あれ(紙吹雪)、ちゃんと食べるように言ってください」発言でしっかりと笑いもとり、レジェンドのユーモアを感じさせた。
2016年には「演歌男子」なる言葉も生まれている。演歌男子は三山ひろしを中心に、『さんまのSUPERからくりTV』(TBS系)で注目を浴び2009年にデビューした大江裕や、韓国・釜山出身のパク・ジュニョン、昭和のアイドルテイストたっぷりのヒカル・ヤマトの2人組「はやぶさ」、当時は6人組で温泉センター“限定”人気だった純烈など、歌謡系も含めたメンバーが挙げられている。
節目節目で演歌は話題になり続けており、2000年に地上波放送を終了した演歌最大の看板番組『演歌の花道』(テレビ東京系)も、今年4月に『BS演歌の花道』(BSテレビ東京)として放送。演歌を求める声は、いまだ消えていないようなのだ。
日本の心を守ってきた演歌歌手たち 固定観念を覆す動きも
極めつけは八代亜紀で、YouTubeの「【公式】八代亜紀ちゃんねる♪」でビリー・アイリッシュの「バッドガイ」を故郷の熊本弁で歌うと、「自分とまったく違うジャンルに挑戦して、しかもただ真似するだけでなくもう1step(アレンジ)2step(想いを込める)加えるって人としてすごいなー」「演歌でも洋楽でもバシッとハマる不思議な渋い歌声」と大絶賛された。
折り紙付きの歌唱力 別フィールドに立った時のポテンシャル
桑田佳祐作詞のポップス曲を歌唱した坂本冬美 (C)ORICON NewS inc.
一方、石川さゆりは期待通り?に演歌の定番中の定番「天城越え」を歌ったが、今年の『音楽の日』(TBS系)ではラッパーのKREVA、ギタリストのMIYAVIとロック調のコラボを実現してラップまで披露。1990年には超名曲の誉れが高いCM曲「ウイスキーが、お好きでしょ」を歌うなど、やはり演歌以外のジャンルとコラボしている。
そもそも、1974年には森進一が吉田拓郎作曲の「襟裳岬」は『第16回日本レコード大賞』で大賞受賞、1985年には小林旭が大滝詠一作曲の「熱き心に」をヒットさせ『第28回日本レコード大賞』金賞、作詩賞、特別選奨の3つの賞を獲得している。実は演歌以外のジャンルとのコラボは多くの演歌歌手が昔から行なっているのである。
もっといえば、ポップスからジャズまでどんなジャンルの曲でも歌いこなす故・美空ひばりさんは、もはや演歌を超えて「歌謡界の女王」「国民的歌手」として君臨しているのであり、いわゆる演歌歌手の演歌歌手たるゆえんは、やはりその抜群の“歌唱力”にあるということの象徴にもなっているのだ。
昨今、芸人並みの人気を誇るYouTuberはあまたいるが、プロのお笑い芸人との差が歴然とあるように、どんなアーティストも演歌歌手の歌唱力にはかなわない。高齢化社会が進む中、かつては「紅白で演歌なんか聞いてられねーよ。イカ天見てえ〜」なんて言ってた若者も今や40代後半。サブちゃんの歌や「天城越え」が心に沁みる年齢になり、細川たかしや森進一、八代亜紀のいない紅白に一抹の寂しさを覚えるのも事実。
そうした状況でも、あえて「他ジャンル=消費の早い歌の世界」に飛び込み、自身の実力を提示していく演歌歌手たち。彼らもやがては消費されてしまうのか、しぶとく生き残り、「演歌の逆襲」がはじまるのか。今後も見守り、聴き逃したくないところである。