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ハーゲンダッツ初アニメCM、中条あやみも佐藤健も劇中「おいしい」と言わない理由とは

 1984年の日本進出以来、数あるアイスクリームの中でも絶対的な品格を維持しているハーゲンダッツ。当初のTVCMでは外国人タレントを起用していたが、その後、日本で活躍する著名人を起用するようになり、現在は中条あやみ、去年からは男性初となる佐藤健が出演している。さらに先月からは、初のアニメーションCMが放送されているが、こぞって「おいしい」という言葉が全く使われていない。映像の好感度が高く、CMによる購買意欲が高いといわれる同社のCMに隠された工夫とは。

全国95店舗営業終了も、真矢ミキらCM出演で“贅沢”アイテムとしてシェアを拡大

 1961年にアメリカで誕生し、1984年に東京・青山に日本1号店がオープン。それまでアイスクリームは主に子ども向けと考えられていたが、大人も楽しめる高級アイスクリームとして、開店直後に長蛇の列ができるほど、瞬く間に人気を博した。10年後には全国95店舗にまで拡大したものの、2013年には全店舗の営業を終了。2001年にはウエハースでアイスを挟んだ『クリスピーサンド』、その後は、ティラミス・モンブランといったデザートやケーキの甘美な世界を表現した『ドルチェ』、きなこや黒みつ、抹茶などの和素材を組み合わせた『ジャポネ』、さらにはジェラートなど、次々とオリジナルシリーズを打ち出し、スーパーやコンビニを中心にマーケットを広げている。

 店舗展開終了後も、商品認知と高級感を損なうことなく愛されてきたのは、TVCMによるブランディング力も大きいだろう。当初は外国人タレントをCMに起用していたが、2008年に初めて日本で活躍する著名人を声のみの出演で起用。2009年には、『ごほうび篇』として女優・真矢ミキを起用。リーマンショック直後で決して景気が良かったわけではないが、価格を変えたり、カジュアルさを加えたりすることなく、あくまで“高級”アイスクリームとしてのスタンスを貫いた。頑張った自分への“特別なご褒美”という印象をより強める演出は、今日まで受け継がれている。
 2011年から出演していた柴咲コウのイメージが強い人も多いのではないだろうか。“幸せのサインは、待つ人だけに訪れる”、“この時間、だれにもジャマさせない”といったフレーズとともに、焦らして焦らして、ようやく口に入れたときの至福の表情が強烈なインパクトを残す。ハンモックに揺られたりお茶を入れたり、1日の終わりに自宅でロウソクを灯したりと、たった30秒のCMで、25秒経過するまで肝心のアイスクリームをなかなか食べないのだ。食べた後も白々しい「おいしい」というフレーズを言葉にすることなく、ただただうっとりとアイスクリームとその時間に酔いしれる様子が描かれている。“商品”がおいしいだけではなく、贅沢な“時間”が味わえるというイメージを見事に植え付けられているのだ。

 4年前から登場した中条あやみも、贅沢な時間を味わう恍惚な表情を見せている。冷凍庫から取り出してすぐに食べるのではなく、ちょっととろけさせてから食べる“とろけ食べ”を提案したり、お風呂で涙を流した後に、「へこんだ私を立ち直らせる小さな儀式」としてハーゲンダッツを口にすると笑顔を取り戻す演出は、やはり高級アイスクリームを打ち出すだけにはとどまらない、幸せなひと時を提供するサービスを掲示されている気すらしてくる。だからこそ、CMで出てくる言葉は「おいしい」ではなく、「うっとり」「深い」「とろける」なのだ。

“女性のおひとりさま贅沢時間”から男性起用&アニメでさらなる需要拡大へ

 今回初めて制作されたアニメーションCMでは、イラストで描かれた中条あやみが登場する。幻想的な夜景に包まれながら、バルコニーで食べごろを待っていると、スプーンに映し出された満月に気づく。大きくて美しい月に照らされながら、ちょっととろけたミニカップ『バニラ』を味わうというストーリー。

 ハーゲンダッツ ジャパン広報部によると、「ハーゲンダッツを食べるときの、心までとろけるような幸せに浸る時間を伝えたいと考えました。アニメーションだからこそ表現できた満月や夜景などの幻想的な世界観は、同商品がもたらす幸せな瞬間や特別感をより一層引き立ててくれているかと思います」とコメントしている。
 日本上陸当時は、特にトレンドに敏感な若年層の女性が主なターゲットだった同社。当時の消費者が、年齢を重ねた現在も引き続きファンであることに加え、柴咲コウや中条あやみらの起用によって、“女性の贅沢時間”のお供としてのイメージがしっかり定着。現在の若年層女性のファンもしっかり獲得した。さらに去年からは初の男性となる佐藤健を起用。今回初のアニメーションCMも制作され、消費者層はますます広がっていくのではないだろうか。

 日々様々なアイスクリームが発売される中、同商品が変わらぬ人気を維持している理由を同社に尋ねると、「創始者ルーベン・マタスのモットーでもあり、ハーゲンダッツ ジャパンの企業理念である“Dedicated to Perfection(完璧を目指す)”という言葉に代表される、“美味しいアイスクリームを提供するための、原材料や製法へのこだわり”が、お客様に評価いただいているということに尽きると思います」とのこと。
 柴咲コウにしても、中条あやみにしても、新作アニメーションも、数々のフレーバーやシリーズが展開されている中、“贅沢時間”を演出しているCMはこぞってミニカップ『バニラ』を口にしている。「誰もがおいしいと感じるアイスクリームはシンプルな素材からしか生まれない」というルーベンの考えから、当たり前のように使われていた合成着色料や乳化剤を使用していない。牛乳・砂糖・卵というシンプルな材料で、素材そのものの美味しさを最大限に引き出すことにこだわり続けている。

 その“素材そのものの美味しさ”の差が最も出やすいのが、バニラなのだ。事実、同社の主力商品は創業当初から変わらずバニラ。最もシンプルな味が、最も評価されていることからも、ハーゲンダッツの真の実力が伺える。手軽に安価で食べられるバニラアイスクリームにお金をかけ、時間をかけるからこそ、自宅だろうと1人だろうと日常とは違う“贅沢時間”が味わえる気分になる。ハーゲンダッツのCMは、そんな日常の贅沢をついしてみたくなる我々の欲求を引き出す妙が隠されている。

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