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今年も各地で実況、なぜカルガモ親子の引越しは視聴者の心に響くのか

 今年も春から初夏にかけてテレビや新聞でたびたび取り上げられていたカルガモ親子の引越し。オールドメディアに限らず、公園や施設、一般ユーザーのTwitterやYouTubeでもその様子が多数投稿された。特に都心での引っ越しとなると、警察官や地域の人が誘導。無事、目的地にたどり着くと感動の瞬間として取り上げられる例が多い。危険だらけの道中では、車に轢かれないように交通整理をしたり、溝に落ちたヒナを助けたり…。また、母親が数々の場面で雛の安全を考慮した選択が迫られるシビアな場面もある。そんなカルガモ親子の珍道中は、ストレス社会の現代、視聴者が心の底から求める名作ドラマの一つと言えるのではないだろうか。
【写真】頑張れ! 『志村どうぶつ園』が密着、多く視聴者が涙したカモ親子の引越し

各地から届くカルガモ情報、SNSの一般ユーザーも記者に

 昭和の時代からテレビや新聞で毎年のように取り上げられてきたカルガモ親子の話題。とくに東京・大手町のカルガモ親子の引っ越しは有名で、1984年には各種メディアの記者やカメラマンたちが、今か今かと人工池にいるカルガモの引っ越しのタイミングを待ち続け、何度も肩透かしを食らっては、ついには列を作って道路を横断し、皇居のお堀へ飛び込む様が報道されている。

 そもそも何故、カルガモは引っ越しをするのか。カルガモは春になると繁殖期に入って産卵するが、その際には卵を隠すために水辺の草むらなどに巣を作る。卵が孵化してその雛たちが歩けるようになると、今度は雛が餌を確保することができるようそれに適した場所へと引っ越すのだ。

 「それも昨今はSNSやYouTubeなどで一般ユーザーも発信できるようになり、より身近で起きる事件(!?)として人々の関心を買っているようです」と話すのはメディア研究家の衣輪晋一氏。例えば6月には、警察官がカルガモ親子の誘導をしている動画がSNSで拡散。人間が触ると人間の匂いがつき、雛が母親に寄りつけなくなるため、警察官は「→(直進マーク)」の札を使って整列した親子の動きを調整。この姿にユーザーからは「こういうニュースばっか流れててほしい」「今日も日本は平和ですね」などの声が。また首都高を引っ越し中のカルガモ親子情報なども拡散され、「無事に引っ越せますように」「カルガモ専用歩道を作るべき」など優しさにあふれた和やかな声が挙がっている。

 「こうした日本人のカルガモ親子の引っ越しに対する関心の高さは海外からも注目を集めています。例えば2015年の『Record China』では、付近の住民が見守るなか警官も出勤して交通整理をする姿に、中国人ユーザーからも『これが日本の偉大なところ』『人間と動物が平和に共生している』『日本には捕まえて食べる人はいないのか』など驚きの声が多く挙がっていることが報道されています」(衣輪氏)

かわいい、ほっこりだけじゃない、際立つ自然の厳しさと母の愛

 だがそんな珍道中は、かわいい、ほっこりだけでなく常に危険と隣り合わせ。道路の誘導以外で人間が手助けできない場面は多く、カラスや猫に狙われたり、急流に苦戦したり、段差が登れなかったりと多くの困難がカルガモ親子には襲いかかる。

 動物バラエティ番組『天才!志村どうぶつ園』(日本テレビ系)でも恒例企画となっており、今年は2年連続で東京都町田市のカルガモ親子の引っ越しを密着。昨年も道中で雛が災難に遭い減ってしまい、多くの視聴者が涙した企画だ。そして今年は新米ママのカルガモを取材。行く先々で他のカルガモに追い払われ、なかなか進めない母親は、初めての経験に戸惑いながらも雛の安全を考えて移動ルートを変更したり、雛が揃うのを辛抱強く待っていたりと、母の愛を多く見ることができた。

 これが「改めて自然界の厳しさを知る」「ほっこりしたけど鳥の死は悲しい」などの感想であふれ「カルガモ親子」がTwitterでトレンド入りするなど大きな反響に。「予想以上に白熱した」「カルガモ親子を見ながら泣いている」「ハラハラすぎる」など視聴者も熱中しており、そのほか「幼児の子供と一緒に見て、子供が舌っ足らずに『がんばれ』と応援する様子も合わせて可愛い」など、これを見ながら母と子の愛情が深まっていることを明かすユーザーも。

 『志村どうぶつ園』だけでなく、産経新聞は茨城県・取手市で、公民館館長が水路に迷い込んでいるカルガモの雛を発見し、網ですくって母の元へ返したニュースを報道。京都新聞も京都市・左京区で親ガモが雛を残して飛び立ったハプニングがあったものの、9匹すべてが無事引っ越しを終えたことを報じるなど、多くの媒体がカルガモの引っ越しの際の苦難と成功の安堵を伝えている。

人々の心を打つ…ドキュメンタリーでありながら最高のドラマ性

 「カルガモ親子の引っ越しに視聴者の関心が高いのは、“動物もの”という人気ジャンルであることのほかに、演出などによる“ヤラセ感”がほぼないこともあるのではないか」(衣輪氏)

 メディアにおける“過度な演出”や“ヤラセ”、捏造記事はたびたび問題になっている。例えば去年、『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)では、ラオス・ビエンチャンの「橋祭り」が実在しない祭りであることが『文春オンライン』と『週刊文春』によって告発され、日本テレビが謝罪。さらには同年2月に放送されたタイでの「カリフラワー祭り」でも捏造疑惑報道があり、日本テレビ側が一部を認めて「当社に責任があると考えております」とのコメントを発表するなど大きな話題に。

 過去にも、1992年にNHKで放送された『奥ヒマラヤ禁断の王国・ムスタン』において、スタッフが高山病のマネをしたり、現地人に金銭をわたして雨乞いのマネをさせるなど、ヤラセが発覚。大問題となり、後日NHKは2分30秒にわたる訂正放送を流すことになった。

 こうした問題が頻発すれば、視聴者はメディアを信用しなくなっていく。さらに言えば「SNS時代になった今だからこそ、活発な意見交換が行われて視聴者の目も肥えてきている。安っぽい演出や露骨な世論誘導は即座に見抜かれるケースが増えた。突き抜けて面白ければ許されることもあるのだが、『バラエティだから』『ネタがないから』『制作費が足りないから』などの言い訳は通用しづらくなっている」と衣輪氏。

 ところがカルガモ親子の企画は野生動物相手で余分な演出がしづらいことは明白で、それを見守る人々の素の優しさ、愛情も垣間見ることもできる。しかもこれは自分の近所でも起こり得るという身近なもの。同時に人間と野生動物の共存も表現され、まさに時代に左右されないドラマ性を帯びたドキュメンタリー作品と言っても過言ではないだろう。

 今年も数々の愛と感動とかわいさを届けてくれた全国のカルガモたち。多くの困難を乗り越えた雛たちが大きくなり、卵を産み、また多くのドラマを届けてくれることに期待したい。

(文/西島亨)

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