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“フィクション”だからこそ伝わる、『3年A組』に見る“熱血教師ドラマ”の存在意義

  • 『3年A組―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)に主演している菅田将暉 (C)ORICON NewS inc.

    『3年A組―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)に主演している菅田将暉 (C)ORICON NewS inc.

 俳優の菅田将暉が主演する連続ドラマ『3年A組―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)。菅田と生徒役の若手俳優たちとの“本気のぶつかり合い”が毎度話題になっているが、永野芽郁をはじめ、上白石萌歌、川栄李奈といったキャリアと人気のあるメンバーのなか、富田望生や望月歩といった“実力派”も目立っている。さらには片寄涼太や森七菜らのような将来を嘱望される若手の活躍も。すでに時代錯誤感のあった“熱血教師が語り掛ける学園ドラマ”の構図。それが本ドラマにおいて再評価されている背景とは?

若手の登竜門が“戦隊モノ”に移行、覇権を失った“学園ドラマ”

 学園を舞台にした作品は昨今でいえば『ヤンキー君とメガネちゃん』(TBS系)、『Q10』(日テレ系)、『美咲ナンバーワン!!』(日テレ系)、『アスコーマーチ』(テレビ朝日系)、『桜蘭高校ホスト部』(TBS系)、『花ざかりの君たちへ』(フジ系)、『35歳の高校生』(日テレ系)、『弱くても勝てます』(日テレ系)、『金田一少年の事件簿N』(日テレ系)、『地獄先生ぬ〜べ〜』(日テレ系)、『ごめんね青春!』(TBS系)、『学校のカイダン』(日テレ系)、『表参道高校合唱部!』(TBS系)、『監獄学園』(TBS系)など多数。

 だが“教師と生徒がぶつかり合う”といったアツい構図の学園ドラマを最後に見たのはいつの頃だったか…。『GTO』(AKIRA版・フジテレビ系)、『ハンマーセッション!』(日本テレビ系)など教師が問題を解決するドラマはあったものの最近はめっぽう数を減らしていた。

 過去を振り返ると、「すべての学園ドラマのフォーマット」と言われる『3年B組金八先生』(TBS系)、『ごくせん』(日テレ系)、『GTO』(反町隆史版・フジ系)、『ROOKIES』(TBS系)などのタイトルが。『金八』では上戸彩、風間俊介、濱田岳、中尾明慶、平愛梨ら数多くの俳優を輩出。『ごくせん』では松本潤、小栗旬、亀梨和也、赤西仁、速水もこみち、小池徹平、三浦春馬、三浦翔平らイケメン俳優に“箔”を。だが教師による行き過ぎた指導が問題とされる昨今、先生が生徒を殴るなんて描写は即問題になってしまうし、生徒と本気でぶつかり合う“熱血教師像”にリアリティはほぼゼロ。現代では若手俳優の登竜門としての立ち位置は、戦隊モノの作品の比重が大きくなっている。

『3年A組』のSNSやネット動画も話題、シリアスなドラマ本筋の“救い”に

 学園ドラマは、“家族みんなで見られるドラマ”であり、それが人気を博した理由でもあった。しかし近年、コンテンツの形態が多様化。テレビだけではなく、SNSやインターネットなどでの無料動画コンテンツが展開。家族で一緒の番組を見る機会は失われ、10代、20代の“テレビ離れ”が加速している。ドラマを作る側も、ドラマSNSアカウント作りやYouTubeなどの無料動画サイトで閲覧できるコンテンツ制作に力を。そんななかで、『3年A組』はこれらの施策に特に力を入れているドラマといっても過言ではない。

 例えば公式インスタ。今期ドラマ中一番のフォロワー数(44万人)を誇り、第一話放送前、生徒役の俳優全員が一人ずつ「見てね〜」と告知する動画や、ドラマ内でも披露されている朝礼ダンスを生徒たちが躍るダンス動画が話題に。人気女優・今田美桜は役名でのインスタを開設ており、激しく痛々しいドラマの本筋とは別軸で、ほのぼのとした日常を過ごす生徒や先生たちの写真をアップ。さらに日本テレビYouTube公式チャンネル「テレビバ」では、生徒たちが出演するショートムービーを公開。ドラマのエンディングで流れる日常の学校風景写真にリンクする “青春像”が映し出されている。

 「ただチーフプロデューサーの西憲彦氏に直撃したところ、本作の場合は“朝礼ダンス”がSNSで拡散・“踊ってみた動画”の流行は自然発生的だと語っており、狙ったわけではない様子」と話すのはメディア研究家の衣輪晋一氏。「また『本作において意味のないシーンや事柄などない』とも話しており、エンディングに映し出される写真など、生徒のほのぼのとしたネットコンテンツの姿も含めて一つの世界観と示唆していました」

 「また実際に撮影現場に潜入すると、モブシーンとも思える画面ちょい映りの場面でもスタッフが生徒一人ひとりに、各々が何を知っていて何を知らないか、彼らの人格を丁寧に肉付けして回る光景も。これによりテレビ本編含め、SNSや動画サイトなど媒体の役割を生かして売出し中の若手俳優の魅力を発揮できる場をしっかりと提供しており、またドラマには立体感も。サイドストーリーとしての機能も果たし、シリアスでトリッキーな展開を見せるドラマの“救い”という副作用も生んでいます」(衣輪氏)

現代の生徒たちが、“愛ある熱血教師”を望んでいるがゆえの人気なのか?

 さらには、開始当初の生徒役俳優が写るインスタ投稿を見て「誰…?」という声も多かったが、回を重ねるごとに生徒役の演技を見た視聴者たちが、次第に「この生徒って、あのドラマに出てたあの子?」と出演者たちの過去作と答え合わせをする事案が頻発するようにもなった。またSNSでは、生徒と教師が本気でぶつかる姿に「先生の言葉がめっちゃ響く」「今の時代、怒ってくれる存在がありがたい、大人になった今だからこそわかる」などの感想も。

 とはいえ、現代の学生たちはどういう教師像を望んでいるのか。生徒に真正面からぶつかり合う“熱血教師”を本当に切望しているのだろうか?

 先週放送された『3年A組』第8話の視聴率は12.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。翌日の学校や仕事を控える日曜22時30分からの放送としては十分な数字である。SNSではドラマで繰り広げられる教師と生徒の対話に「現実でやったらパワハラ暴力と言われるんだろうけど、フィクションでありドラマだからこそ伝えられる大切なこと」という感想も出ている。一方では同作の強烈な“フィクション”という枠組の中だからこそ、過去のものとなったと感じられた“熱血教師像”が許されている、人々の心に深く浸透しているという現状もありそうだ。

 教師が暴力をふるうように生徒たちが仕向け、その様子を隠し撮りした動画がSNSで拡散され大問題になる事件も起きている昨今。「人として大切なことは? どんな大人になってほしいか? その“熱意”を伝えづらくなっている現状で、熱血系の学園ドラマは“教育”としての役割をも担い得る」と衣輪氏。熱血学園ドラマは今の時代でも、時流に合わせて存在していく意義があるはずだ。
(文/中野ナガ)

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