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NGT48や『SPA!』騒動の共通点、SNS全盛のいま問題提起する“署名サイト”の意義とは?
受け身になりがちな消費者の意見を言う手段、組織的な交渉材料として機能
「最近では、『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)でのポール・マッカートニー氏騒動がありました。ポール氏が2014年の来日公演をキャンセルした理由について、ビートたけしさんが『仮病が疑われた』と取り上げたことが批判を呼んだ騒動です。『Change.org』では、それはSNSの真偽不明な噂であり、訂正すべしというキャンペーンが張られました。そして発信者がTBSさんに集まった署名を持ち込んだところ、対話が成立。公式サイトで謝罪が行われました。もちろん、視聴者の方が電話などで直接指摘したところもあるとは思いますが、署名という組織化した意見として提出されたことも大きかったと聞きます」
「エンタテイメントにおいては、消費者はとかく受け身になりがち。ですが、一人ひとりでは力を持たなくても、企業や運営側に意見を言える手段、組織的な交渉材料として、署名サイトが機能しているのではないでしょうか」
署名といえば、これまでは街頭などで行われる紙の署名が一般的だったと思うが、それとオンラインの署名活動にはどのような違いがあるのか。
「紙の署名の場合、その後どうなっているのかがわからなかったり、意思疎通するにも時間やコストがかかったりします。その点オンラインならば、署名後の進捗が知らされるシステムもあり、スピード感や双方向性が生まれる。紙は手間がかかる分、熱量が伝えやすい面はあるのですが、ネットは気軽な分、その時の最大瞬間風速を吹かせられる良さがあります」
ネットで実名明かし意思表示、「バッシングのリスクはゼロではない」
「特定個人の声となるので、バッシングのリスクはゼロではありませんが、団体名でキャンペーンを張るというやり方もあります。そもそも声を上げる人には、社会的に追い詰められていたり、バッシングを受けやすい立場の人も多いので、そういう方の場合はアカウント名を匿名性の高い表記にしてもらったり、仮名で発信してもらうことも柔軟に受け入れています。基本は自由なプラットフォームなので、ガイドラインに抵触しなければどんなキャンペーンを立ち上げてもいい。ネットは共感のメディアなので、やはり主語を明確にしたパーソナルなストーリーが賛同を集めやすくなりますね」
日本においては、ネットに限らず、率先して声を挙げることが歓迎されない歴史がある。とくにエンタテイメントの場では、有名人が政治的発言をすることはタブー視されていたり、一般消費者も企業側・運営側から提供されるものを受け取るばかりであることも多い。だが昨今の動きを見ると、これからは変わっていくのではないかと武村氏は語る。
「ローラさんやりゅうちぇるさんが署名を呼びかけ、バッシングされた事例もありますが、こうしたことは今後日本でも増えていくと思われます。先に述べた通り、一般の方が企業・運営側に意見することも多くなるでしょう」
“民意のすべて”ではないことも忘れず、企業側の対応も問われる
「意見はもちろん言って良いと思います。ただ、消費者側と企業側の思惑は必ずしも一致するわけではないし、ファンの声がすべてではない。とくにエンタテインメントにおいて、消費者側の意見をすべて反映すれば面白い、良いものが出来上がるかというと、そういうわけではないですよね。一方、集まった署名を企業側に提出しても、まだまだ無視されてしまう“声”であることもまた事実です」
武村氏が「誰もが声を上げられる社会こそ民主的」と語るとおり、『Change.org』で訴えかけられる様々な意見を知り、自身で考え、選択する目を持つことも大事。署名を受け取る企業側・運営側もまた、真摯に受け止めつつ、一定の“民意”にどう対応するかを選び取らねばならない。
「署名を集めて終わりではなく、問題だと思うことを世に知らせ、アクションを組み合わせるハブとなれれば」。そんな署名サイトが今後、どのように浸透し、嘆願を受けた企業側はどう動くのか。今後の変化を注視したい。
(文:衣輪晋一)
【Change.org】
https://www.change.org/