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“世界”の渡辺直美に見る、SNS時代のスター像の変化
渡辺直美が『TIME』に選出 トランプ大統領と並びネットのスターとして賞賛
数年前から女芸人の中でも頭ひとつ抜け出た存在だった渡辺直美だが、ここにきてついに“世界の渡辺直美”になった瞬間だ。しかし振り返れば、日本ではテレビの“レギュラー番組のイメージ”があまりないことにも気づく。冠番組のひとつやふたつを持っていてもおかしくないはずが、ゴールデン帯のレギュラーで言えば、『ぐるぐるナインティナイン』(日本テレビ系)のゴチバトルのみ。その他、深夜番組や月2回のコーナーなどで、ガッツリ出演しているというわけではない(NHK総合の『NAOMIの部屋』という冠番組もあるが、月1回程度の不定期深夜放送)。
しっかりテレビで露出されつつも、イベントなど“テレビ外”がメインフィールドに
渡辺直美の“メディア化”の代表例とも言えるのが、2014年、2017年と今年と出演しているBOAT RACE振興会のCMだ。歌や踊りが上手いというエンターテイナーからお笑い芸人の側面までこれまでかというほど流され、ボートレース絡みのイベントに出演するとこれまたネットニュースやワイドショーで取り上げられる。とにかく“よく見る人”として日本国民に認知されているのは間違いなく、それだけ渡辺に“メディア力”がある証でもあろう。
絶大な認知を誇るも、“大御所”にならない絶妙な距離感を演出
こうしてみると、渡辺直美は芸人でありながらも歌・踊りも見せるエンターテイナー、ネットで影響力を持ったインフルエンサーでもあり、ファッションアイコンでもある。もはや渡辺の肩書を“何をやってる人”と言えばいいのかわからなくなっているが、本人自身は“芸人”としてのこだわりを持ち続け、今でも「お笑いが大好き」「だからこそ、お笑いが一番緊張する」と一芸人としての思いを明かしている。
実際、初期の渡辺を代表する番組『ピカルの定理』(フジテレビ系)では、ピース・綾部祐二や平成ノブシコブシ・吉村崇などを相手に、ときには狂気すら感じさせるコントを披露していたが、放送終了の際は「私はコント番組に入りたくて芸人になりました! その夢が奇跡的に叶って嬉しかったです」と喜びをつづる一方、「でもピカルはとても辛かったです。一度も満足した事がありません。毎日反省ばっかりで、収録で楽しかった思い出がありません」と“お笑いが一番、だからこそ辛かった”と正直な気持ちも告白していた。
今や女芸人の代表格と言っていい存在にまでなった渡辺だが、自らの“格”を上げつつも、同時に“大物感”を出しすぎないというバランス加減も絶妙。そうしたイメージ戦略や、メディアをコントロールする能力にも非常に優れているタレントであることが分かる。
メディアに消費されずに、タレントがメディアを“使う”時代の象徴に?
そんな渡辺だが、2008年から2010年まで『笑っていいとも』(フジテレビ系)で“いいとも少女隊”を務めており、その時代はテレビ番組スタッフからひどい仕打ちを受けたと笑い話のように語っているようだが、苦労人でもあったからこそ、タレントの在り方について思うところがあったのかもしれない。
実際、かつて“天下を獲った”スターたちは、その反動なのか時には、批判にもさらされ、疲弊・消耗しているようにも見える。視聴率の低下、テレビ離れ、メディアの多様化、さまざまな要因でスター(売れっ子)の定義も変わりつつある。そんな現在は、消費されすぎない、テレビに潰されない、SNSでも消耗・疲弊しないどころか、すべてを上手くコントロールしていくしたたかさがタレントには求められているのかもしれない。渡辺直美は、そんな「タレントがメディアを利用する時代」の象徴とも言えそうだ。