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ニッチェ江上敬子、色モノ枠ではない“本格的すぎる”芸人女優の可能性

 渡辺直美、イモトアヤコ、ブルゾンちえみ…近年とどまることを知らない“女芸人の女優化”だが、ここにきてダークホースとも言える存在が急浮上している。お笑いコンビ・ニッチェの江上敬子が2月公開の映画『犬猿』では窪田正孝、新井浩文に次いで3番手に名を連ねるメインキャストとして出演。その個性的なルックスから“色もの枠”かと思いきや、兄弟の愛憎をテーマにした本作品において、おバカな妹・筧美和子の姉役として鬼気迫る演技を披露。果たして江上は芸人女優の“大本命”となり得るのか?

女芸人の“女優化”は依然続く、2018年はニッチェの江上に注目

 昨年、ブルゾンちえみはブレイクからわずか3カ月でドラマ『人は見た目が100パーセント』(フジテレビ系)にメインキャストとして出演して話題を呼んだ。『天才バカボン〜家族の絆』(日本テレビ系/2016年)では、おかずクラブのオカリナがバカボン役として登場し、“まんま”の存在感が注目される。イモトアヤコも『家売るオンナ』(同)に出演したが、「太眉を封印」しただけで記事に取り上げられた。ここのところ続いている“女芸人の女優化”には、彼女たちの知名度の高さや、お笑いだけではなく役者もこなす意外性など、制作側が作品に話題性を持たせる意図もあるだろう。たとえばブルゾンちえみにしても、“今、日本でもっとも旬な女芸人”という背景があったわけである。

 一方、純粋に演技力自体が評価される女芸人もいる。映画『福福荘の福ちゃん』(2014年)に主演した森三中の大島美幸は、丸刈りの塗装職人というおっさん役に挑戦し、「第18回ファンタジア国際映画祭最優秀女優賞」を受賞。『フラガール』(2006年)に出演した南海キャンディーズの山崎静代は、第30回日本アカデミー賞の新人俳優賞を獲得している。出方はさまざまだが、ドラマ・映画において女芸人の進出は依然続いているようだ。そして、2018年に女優化を果たす女芸人が、ニッチェの江上敬子。映画『犬猿』(2018年2月10日公開)にメインキャストとして出演をすることが注目されている。

“色もの”としてではない“女優枠”での出演

 しかし、ニッチェ・江上は超ブレイク中!というわけでもなく、ブルゾンちえみやイモトアヤコほどの知名度もない。それでも『犬猿』の予告編などを見ると、妹の筧美和子と言い争い、取っ組み合いのけんかをし、物陰から嫉妬深い目でうかがう…という姿には相当にリアリティがあり、ニッチェ・江上のイメージが完全に消し去られていることに驚く。

 先述のブルゾンちえみは、劇中にも芸人としてのキャラクターに寄せた役でテレビ出演。芝居を評価された大島美幸も、おっさん役であるとはいえ、元々の芸人のキャラクターを考えれば、イメージに近しい役柄といってもいい。しかし、ニッチェ江上の場合は、パブリックイメージのキャラクターとはまったく異なる役柄に、メインキャストとして起用されている。“本来のキャラ”でない役を演じ分けられるという点で、バイプレイヤーとして大成する可能性もあり、今回のように重要なメインキャラも演じられるということになる。このように、江上のケースは、これまでの“人気絶頂の女芸人”とは異なるベクトルで女優化を果たしている。ある意味 “本格的すぎる芸人女優”と言えるだろう。

ニッチェの芸ににじみ出る女優業への強い憧れ

 とは言え、江上はまったく演技に無関係だったわけではなく、相方の近藤くみことともに日本映画学校(現・日本映画大学)出身であり、もともとは女優志望だったようだ。日本映画学校と言えば、内村光良の母校。その内村の恩師に卒業間近の進路相談で芸人を勧められ、お笑いの道に入ったという過去がある。しかしそのお笑いでも、幼稚園ネタでゴスペル歌手のような見事な歌唱力を披露したり、「子役オーデション」というコントでは演技がうますぎる子役を演じるほかにも、江上の演技力をウリにしているネタを数多く披露。「何をしている演技なのか当てる」というネタでは、江上の芝居パートの後には観客から拍手も上がっていた。ネタを通しても江上の強い“芝居の道への思い”が見て取れる。

 そんなニッチェだが、2009年には『爆笑トライアウト』(NHK総合)の 会場審査で2位 (425TP) となり、オンバト挑戦権を獲得。そしてその『オンバト+』(NHK総合)では戦績7勝2敗、 最高521KBを獲得し、女性芸人としては最高KBを記録するほか、『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系)の出演などで、徐々にお茶の間にも知られるようになっていった。しかしながら、キャラがかぶるおかずクラブにポジションを奪われたきらいもあり、「(ニッチェよりも)ギャラの安いおかずクラブには勝てない」と公言したこともあった。それでも腐らずに地道に活動を続け、女優の及川奈央・久下恵美による演劇ユニット「類類〜Lui Lui〜」とニッチェで4人芝居にチャレンジし、やはりここでも地道に“女優活動”を続けるという“実績”を作っていたのだ。

女性版・竹中直人に!? “本格的すぎる”芸人女優として定着なるか

 実際、芸人から本格的な俳優へと転身する例は意外とあり、竹中直人やイッセー尾形、田口浩正なども元芸人として知られているが、“本格女優”となると泉ピン子を除くとなかなか見当たらない。今では誰もが認める大女優となった泉ピン子も、もともとはウクレレ漫談家の牧伸二に師事して歌謡漫談をしていた。かつての高視聴率番組『テレビ三面記事 ウィークエンダー』(日本テレビ系)では、下世話なB級事件を持ち前の口上で強烈にまくしたてながらレポートしていたのである。

 最近は、昨年末の『女芸人NO.1決定戦 THE W』(日本テレビ系)に出演するなどの活躍を見せている江上。映画『犬猿』の公開に先立って発表されたコメントでも、「台本の自分の役名の下に、『太っていて容姿が醜い女性』と、ご丁寧にキャラクター説明がされてあり、納得した反面、もうちょいオブラートに包んだ言い方はできないものかと憤慨しました。でも、台本を読み進めて行くにつれて、自分の役である由利亜に感情移入をしてしまい、引くぐらい泣いてしまった。初めてしっかり挑んだ映画が『犬猿』で、演じた役が由利亜で良かった! コントの演技で培った顔芸は封印し、女優になった私の演技をぜひ見て頂きたいです」と、早くも女優魂をのぞかせている。ニッチェの活動ももちろんだが、大先輩・泉ピン子の“王道”パターンを引き継ぐ“本格派女優”江上敬子の活躍に期待したい。

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