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「ダンスがすごい」が先行する音楽シーン 背景に“モノ消費”から“コト消費”の影響

 SKE48が7月4日、半年ぶりに23枚目のシングル『いきなりパンチライン』をリリースすることを発表した。メンバーの高柳明音は同曲のアピールポイントを聞かれて、「ダンスがすごいんです」と表現。これまでのヒット曲は、「高い楽曲クオリティ」「圧倒的な歌唱力」などといった宣伝をウリにすることが多く、またそれが知名度や人気を押し上げる要因ともなっていた。だが、今では「ダンスがすごい」というフックから、ヒット曲が生まれる構図が急激に増加している。

“バブリーダンス”“恋ダンス”ブームにより曲以上にダンスが注目される時代に

  • “バブリーダンス”でリバイバルヒットした荻野目洋子『ダンシング・ヒーロー』

    “バブリーダンス”でリバイバルヒットした荻野目洋子『ダンシング・ヒーロー』

 「ダンスがすごい」でヒットした最近の好例で言えば、大阪府立登美丘高校ダンス部による“バブリーダンス”が挙げられる。鮮やかな色彩の衣装、タイトスカート、どぎついメイク……女子高生たちが、ワンレングスのロングヘアをかき乱しながら踊る姿は、一度見たら忘れられないインパクトを放つ。そのBGMとしてかかっていたのが、荻野目洋子の『ダンシング・ヒーロー』だ。1985年のリリースから33年後、“バブリーダンス”がきっかけでリバイバルヒットし、2018年1月15日付けのオリコン週間カラオケランキングで初の首位を獲得したほか、『第59回 日本レコード大賞』の特別賞を受賞するなどのブームが巻き起こした。

 また、星野源の『恋』も、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)のエンディングで出演者が踊る“恋ダンス”に大きくスポットが当たった。Perfumeの振り付けなどで知られるMIKIKOが担当したこのダンスは、「可愛い」と反響を呼び、一般人からYouTuberのはじめしゃちょーといったインフルエンサーまで、多くの人が“恋ダンス”を動画サイトにアップ。あまりの過熱ぶりに、所属事務所が「削除して」とアナウンスする事態にまでなった。

「踊ってみた」動画のブームがダンスを身近な存在に

 その他、AKB48の『恋するフォーチュンクッキー』も、ダンス初心者でも覚えやすい振り付けによって、企業の社員が曲に合わせて踊るコラボ企画が話題となり、さらなるヒットを後押し。アニメの『妖怪ウォッチ』(テレビ東京系)のエンディング曲『ようかい体操第一』も、ラッキィ池田が振り付けしたキャッチーな踊りが子どもたちに受け、幼稚園や小学校低学年の運動会では、危険視されている組体操からこのダンスに変更する学校も生まれた。

 こうした“ダンス先行型”のヒット曲だが、EXILEや安室奈美恵、また三浦大知といったアーティストのように、単純に「ダンスのレベルが高い」というわけではない。あくまで一般人が“気軽に真似のできる振り付け”であることが概ね共通している点だ。

 なぜ、ここまでダンスに注目が集まるようになったのか? やはりそれは「動画投稿サイト」の普及が挙げられる。Youtubeで「踊ってみた」を検索したときのヒット数(約280万件)からもわかるように、ダンスが定番コンテンツ化している。本家の“完コピ”を目指したり、独自にアレンジをしたりと、思い思いの踊り方をした映像に、不特定多数の人たちから注目を浴びる……これは動画投稿サイトならではの醍醐味と言えるだろう。そうした理由もあり、ダンス未経験者でも踊りやすい振り付けの曲は、その分「踊ってみた」人たちが増える上、曲自体の認知度向上にもつながっていく。

“モノ消費”から“コト消費”へ変化していく音楽市場

 ダンスがきっかけで曲がヒットする現状はあるものの、生産実績・音楽配信の売上は下降線をたどっており、2008年の4,564億円から、2017年の2,893億円と、10年の間で著しく落ち込んでいる(参照元:一般社団法人日本レコード協会)。だがその一方で、ライブ市場は拡大しており、2008年の1,074億円から2017年の3,324億円と、3倍以上に売上が増加中(参照元:一般社団法人コンサートプロモーターズ協会)だ。ナマの迫力や臨場感を体験できるライブは、CDを聴いたりしているだけではわからない上、ファンやアーティストとの一体感を味わえる魅力がある。音楽フェスティバルの数が年々増えていっているように、いまや音楽市場においては、「モノ」を買うよりも「コト(体験)」を求めている人たちが多く存在するのだ。

 そして今や「体験」の機会はライブ会場だけではなくなった。先述の動画投稿サイトに好きな曲、好きなアーティストと同じダンスを投稿することで、ライブのように同じ舞台に立っている“一体感”が得られるという、新たな体験が楽しめる時代に突入している。

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