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荻野目洋子、三浦大知、DA PUMP…ライジングプロが繋ぐ“歌って踊る”継続の功績
“口パク禁止”で歌とダンスの両立を証明 “実力派”が足かせに?
1990年代は安室が小室哲哉プロデュースでミリオンセラーを連発。彼女が歌やダンスを学んだ沖縄アクターズスクールと提携していたラインジングプロダクションからは、MAX、SPEED、DA PUMPらが続いた。特にSPEEDはデビュー当時平均13.5歳ながら、驚異的なレベルの歌と踊りを見せ、女性グループのダンスのスタンダードを一気に引き上げる。DA PUMPはm.c.A・Tプロデュースによるヒップホップ色の強い男性ダンス&ボーカルグループとして先駆者的な存在だった。彼らの活躍が、日本の音楽シーンに“歌に振りを付ける”のでなく“歌ってダンスも見せる”スタイルを根付かせたといっても過言でないだろう。ライジングでは「口パク禁止」が方針として掲げられているといい、こうしたアーティストたちは2時間以上のステージで踊り続け、かつ生歌で息が乱れることのない実力派だ。
2000年代に入るとDA PUMPの弟分として、w-inds.、Leadと沖縄出身以外のダンス&ボーカルグループもデビュー。また、変声期にFolderでの活動を休業した三浦大知も2005年にソロで復帰する。だが、カラオケで歌いやすい曲がヒットする傾向が強い日本では、例えばAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」のようなみんなで踊って盛り上げるものが音楽番組を席巻する状況。ライジング勢が音楽やパフォーマンスを突き詰めるほど、広がりが限られる面もあった。
SNSで拡散、時代が見出した“再評価” 地道な継続が奏功
大阪府立登美丘高校ダンス部が、荻野目洋子の「ダンシング・ヒーロー」に乗せて踊った「バブリーダンス」の動画がSNSで話題になり、現在までに5800万を越える再生数を記録。世代を越えて本家の荻野目も再び脚光を浴びてテレビやイベントに出演し、16年ぶりのシングルもリリースするなど大躍進を遂げた。
三浦大知も、音もカウントもないなかでバックのダンサーたちと動きを寸分違わず合わせる“無音ダンス”は、昨年末に初出場した紅白歌合戦で多くの視聴者を驚かせた。このとき歌った2016年リリースの「Cry&Fight」や、2017年の『仮面ライダーエグゼイド』の主題歌「EXCITE」は『ミュージックステーション』『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)、そして『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)などの番組で披露してはSNSで話題になり、「EXCITE」では初の週間ランキング1位も獲得。それまでは、ソロでR&Bを歌って踊る日本では珍しいスタイルを打ち出していたものの一般レベルで火がつくまでにはなかなか至らなかった。だが、テレビでその実力が認識されると、SNSの相乗効果で今まで以上の広がりを見せる。
そして、DA PUMPも3年8ヵ月ぶりのシングル「U.S.A.」で、90年代風ユーロビートサウンドにアメリカへのベタな憧れを歌った歌詞が“ダサかっこいい”と評判に。MV動画の再生数は800万を越え、配信やサブスクリプションで上位にランクインするなど、ひとつのムーブメントが起きる。テレビなどで積極的にプロモーションを打ったわけではなかったが、今はSNSでの広がりのほうがヒットに繋がることを象徴している。
三浦を担当するエイベックス・エンタテインメントのスタッフは「特に変わった露出施策はしてません。三浦はコツコツ積み上げることを大事にするアーティスト。積み上げてきたものが繋がった結果」(コンフィデンス/2018年4月)と語っているように、それぞれSNSがきっかけとなったブレイクは思いがけないものだっただろう。だが、キャリアを重ねながら歌って踊るスタイルを磨き続けていたからこそ、予期せぬ波が来たときにしっかり乗れた。そして、ひとたび注目を集めれば、キャリアに裏打ちされた実力を見せて再評価をしっかり勝ち取ることができている。
国産“歌って踊る”ボーイズグループの系譜を次世代へ
だが、その分、純粋に音楽的な進化を追求できた面もあり、国内はもとより、中国、韓国、台湾などでのライブで実力派ぶりを発揮。2000年代後半にはEDMをいち早く取り入れるなど先鋭的で、近作でもトロピカルハウス、ニュージャックスウィングなど世界のトレンドに挑んでいる。2015年には香港で在香港日本国総領事館総領事より、J-POPアーティスト初となる在外公館長表彰(総領事表彰)を授与されるなど、その活躍はアジア圏で幾度となく評価されている。
そして、超特急、Da-iCE、X4、FlowBackなど若手グループにとって常にその背中があった。そうした男性のダンス&ボーカルグループがw-inds.やLeadがデビューした頃より格段に増えたのも、彼らが15年以上走り続けたから“場所があった”と言ってもいいのではないだろうか。w-inds.は7月7日にお台場で開催のダンス&ボーカルグループ中心のフェス『w-inds. Fes ADSR 2018』をプロデュースするが、「ダンスアイドル、ダンスアーティストグループをもっと輩出させていきたい」と掲げている通りその“次世代に繋ぐ”意識もあってこそだろう。
必ずしもテレビ露出が多くなくても、ダンスと歌の実力があれば活躍できる土壌を長い年月をかけてリレーのように築いてきたライジングのアーティストたち。時流に関わらずダンス&ボーカルの“歌って踊る”カテゴリーを守り続けたことで、ダンスが注目され、SNSがテレビ以上に身近なツールとなった時代に先駆者たちが再評価を受けたのは必然だったかもしれない。
(文・斉藤貴志)