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TVゲームが五輪種目に? 日本人プロゲーマーが語る「海外出稼ぎ」の理由とは
優勝賞金11億円!? 桁違いの規模で行われるeスポーツ
先日、人気RPG・ドラゴンクエストの新作が発売され話題となったが、世界を見渡すとゲーム人気のスケールの大きさに驚く。マルチオンライン(MOBA)で最も流行っているゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」のプレイヤー人口は推定7500万人。シューティングゲーム(FPS)「オーバーウォッチ」は3000万人。当然、海外で開催されるゲーム大会の規模も段違いで、今年アメリカで開催された人気ゲーム「DOTA2」の大会では、賞金総額が約26億円。優勝賞金はなんと約11億円だった。
「日本でも人気のサッカーゲーム・FIFA17の販売本数は世界累計で2100万本。このFIFAシリーズの世界大会で優勝するとバロンドール式典にて表彰され、16万ドルが授与されます。あのメッシやクリロナと肩を並べて表彰される姿は圧巻ですよ」と筧氏。さらに、FIFA17は、ドイツ・ブンデスリーガの「シャルケ」やプレミアリーグの「マンチェスターシティ」、スペインリーグの「バレンシア」といった海外のサッカークラブが自前の“eスポーツ部門”を抱え始めるほど。これは、若年層へのマーケティング効果を狙ってのもので、それほどに、eスポーツのパワーが欧米では認められていることを示唆している。
このようなeスポーツ人気はフィジカルスポーツにも影響を及ぼし、アジアオリンピック評議会は、2022年に開催される「アジア競技大会」でeスポーツを正式なメダル種目とすることを発表。さらには、2024年のパリオリンピックでも正式種目化が検討されている。
日本人プロゲーマー、気になるその人数と収入は?
「3年前までは、海外の格闘ゲーム大会で優勝しても数十万円。それが、2015年にアメリカで開催された『カプコンカップ2015』の優勝賞金が1500万円に跳ね上がり、日本人プロゲーマーが一気に活気づきました」
とは言え、日本の場合、eスポーツの主流であるMOBAやFPS人気はそれほど高くはなく、ストリートファイターシリーズを代表とする格闘ゲームが中心。当然、海外のプロゲーマーたちと比べると収入面では低くならざるを得ない。eスポーツ協会の筧氏に聞いたところ、ゲームだけで生活している日本のプロゲーマーは50人くらい。バイトなどの兼業も含めると100人程度。まだまだこれからの業界と言えるが、ザンギエフ氏が「ここ数年、選手をスポンサードする企業が増えている」というように、大会の賞金やスポンサーとの契約料は上昇傾向にある。そのため、日本人プロゲーマーの年収が数千万円になるのも、決して夢ではないとのこと。
“25歳限界説”を覆す、日本人プロゲーマーの活躍
「法律の問題で日本のゲーム大会では賞金額に縛りがあります。そこで、海外の大会に出場するために海外遠征をします。多い時で月4回、最近は月1回ペースといった感じです。普段の生活はゲームの練習がメイン。これはどのプロスポーツも同じだと思います。練習以外では、ライバルの動きを研究したり、動画配信などもします。人によっては、メディアへの露出や学校での講師、ライター業など、それぞれ得意分野を生かした活動をしています」
一方で、反射神経が要求されるプロゲーマーの選手寿命は25歳とも言われているなか、36歳のザンギエフ氏はいかにして格闘ゲーム界の最前線に留まっているのか?
「反射神経は25歳ごろから衰える、とも言われています。でも格闘ゲームの場合、10代と30代が勝負すると30代が勝ちます。それは、僕らがこれまで培ってきた20年の経験値を使って戦うから」と、ザンギエフ氏は力説する。日本には世界的に有名なプロゲーマー“ウメハラ”氏がいる。彼の撃つ波動拳と、10代の波動拳は質が違うとザンギエフ氏。素人目にはただのけん制で撃った波動拳も、プロから見ると、その後のための布石、流れ、意図が見えてくるのだという。連綿と紡いできた格闘ゲームの経験と歴史。それこそが、日本における30代プロゲーマーの活躍の要因となっている。
法律が障壁に? eスポーツが日本に浸透しない理由
学校の授業で“ゲーム”を教える時代に突入
日本では、「東京アニメ・声優専門学校」や「北海道ハイテクノロジー専門学校」など、eスポーツを専攻できる専門学校がいくつかあり、2018年には大阪にもプロゲーマー育成のための専科を持つ専門学校が誕生する。
このように、プロゲーマーを目指す人が増える一方で、法律の整備も含め、日本のeスポーツを取り巻く環境はまだまだ未成熟。ザンギエフ氏は、プロゲーマーを目指す若者にこうアドバイスする。
「いま、日本人がプロゲーマーを目指す場合、海外の大会で結果を出す必要があります。仮にプロになれたとしても、渡航費を出してくれるスポンサーに対して、大会で結果を出し続け、“自分のプロとしての価値”を証明し続けないといけません。そうしたプレッシャーに打ち勝つために必要なのは、海外生活をひとりで乗り切るメンタルと英語力。現地の観客とコミュニケーションをとれるほどの英語力があれば、現地の観客を味方につけることができるかもしれない。アウェーをホームに変える、そんな戦い方も時には必要。純粋なゲームの技術と同様に、そうした面も学んでいってほしいですね」