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発売から30余年、『たけ挑』が“クソゲー”界の金字塔であり続けるワケ

 1986年に発売されたファミコンソフトの問題作『たけしの挑戦状』(タイトー)が、今夏よりスマホでの配信スタートが決定した。その難解なゲーム性と理不尽極まりない難易度から“伝説のクソゲー”として長くファンに愛されてきた同作の復活に早くもネットでは「正気か!」「今これはズルイ」など愛憎入り混じるコメントが多数飛び交っている。

北野映画との共通点も…スタッフが明かした“たけ挑”制作秘話

 ビートたけし全面監修のもとに制作された『たけ挑』。プレイヤーは、うだつの上がらないサラリーマンとなり、謎の老人から渡された宝の地図を手に海外に飛び立つストーリー。だが、「妻と離婚する」「会社に辞表を出す」「宝の地図を日光にさらして1時間待つ」など斬新すぎる謎解きが盛り込まれ、クリアできず挫折するユーザーが続出。さらに、ファミコンならではのUコントローラーのマイクを駆使し、スナックでカラオケを歌い、評価されないと先に進めないなどの仕掛けもあった。まさに、たけしからユーザーへの“挑戦状”となっていたのだ。さらに、偶然にも、たけしが“フライデー襲撃事件”を起こした翌日に発売されたという事実もこの作品をさらに伝説化させている。

 その制作の経緯について、以前、ORICON NEWSがタイトーに取材を行った際、当時の制作スタッフは「当時、たけしさんがゲームに凄く興味を持たれていて、たけしさんサイドからお話を頂いたんです。新たな“表現の場”としてテレビゲームに興味をもたれたのだと思います」とたけし発信だと説明している。

 ヒントなどが少なく“不条理ゲーム”とも呼ばれる今作だが、「たけしさんの映画の中でも一見、無駄なことと思えるような不条理な展開ってあるじゃないですか。それって“たけ挑”も同じなんですよ」とコメント。映画『その男、凶暴につき』『アウトレイジ』などヤクザ映画の多いたけしだが、『たけ挑』でも商店街などでヤクザと戦うシーンがあるなど共通点があるのだ。攻略本を見れば、ルールが分かるゲームが多いが、攻略本を見てもなお難解で手間がかかるのが『たけ挑』の特徴。それはまさに、人間のマニュアルがないように、自分で時間を掛けて学んでいくしかないというメッセージを内包しているかのようだ。

“クソゲー”と“駄作”の違いは? ユーザーがバカ負けすることで生まれる愛情

 “伝説のクソゲー”と評されることが多い『たけ挑』。そもそも、クソゲーとは「クソゲーム」の略語で、“1人電通”こと、漫画家、イラストレーター・みうらじゅん氏が「頭脳戦艦ガル」を評する際に使用したのが発祥とされている。「難解すぎてクリアできないゲーム」「ゲームシナリオや設定に矛盾があるゲーム」を指すものとされるが、それだけでなく「バカバカしすぎて逆に愛おしい」「難しいからこそ記憶に残る」などの愛憎入り交じる感情が込めて命名されているのではないだろうか。「『“たけ挑”被害者の会』というイベントに参加したんですが、皆さん熱がありましたよ。愛憎入り混じっている感じで」(元制作スタッフ)と感慨深げだったそうだ。

 ゲームにおいて、その難易度というのは絶妙な調整が必要で、そのあまりのハチャメチャっぷりにユーザーが“バカ負け”してしまい「クソゲー」として人々の記憶に刻まれている。単に操作性が悪かったり、バグが多くて先に進めないなどの“駄作”とはその点が異なるのだ。

現在は愛すべき“クソゲー”が生まれづらい土壌に!?

 ハード面の進化や、「CERO(コンピュータエンターテインメントレーティング機構)」がゲームの表現倫理審査を行うなどゲーム業界は常に変化してきた。またデバッグやゲームバランスの調整を行っている「猿楽庁」「ポールトゥウィン」などの企業がクオリティチェックを行い、“クソゲー”が生まれづらい現状にある。そのため、「途中でゲームが止まってしまう」などのトラブルは少なくなったものの、審査機構があることで、やはり対象年齢を考慮した制約が生まれたのも事実だ。

 また、インターネットの発達により、発売直後のゲームの感想をすぐに読むことができ、YouTubeなどの動画サイトでゲームの詳細を事前に知れるようになった。かつての、雑誌に掲載された数枚の写真を頼りに買うゲームを決めることもあった時代とは隔世の感である。『たけ挑』も定価は5,300円ながら、当時80万本のヒットを記録。子どもにとっては決して安くない値段のゲームを買う時のあのドキドキ感、ワクワク感は何にも変えがたいインパクトとして記憶に刻まれている諸兄も多いことだろう。そんなノスタルジックな追憶に浸れる点も含めて、発売から30年以上経っても『たけしの挑戦状』がネットをざわつかせているのかもしれない。

(文=藤ノ宮士郎)

『たけしの挑戦状』(C)TAITO CORPORATION/ビートたけし 1986, 2017 ALL RIGHTS RESERVED.

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