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ドラマやバラエティにと拡大 “下町”コンテンツ再評価のワケ
そもそも“下町”の定義とは? その解釈は年々変化
例えば、ストーリーの場所にこだわるNHK連続テレビ小説では、以前から下町を舞台にすることは多い。1980〜90年代の作品にも両国や木場を舞台に選んだものがあったし、『梅ちゃん先生』は蒲田で開業した話が展開され、記憶に新しい『とと姉ちゃん』の第2舞台は東京・深川だった。また、最近は民放の地上波ドラマでも恋愛モノなどと比較して下町の人情劇を描いたものが目立っており、昨年放送された池井戸潤原作の、下町の町工場を舞台にした『下町ロケット』(TBS系)は、平均視聴率20%超えで2015年の民放連続ドラマ1位を記録。深夜ドラマでも、とくにテレビ東京では、フィクションとノンフィクションの境界線を行き来するような“攻めた”演出で注目を集めた『山田孝之の東京都北区赤羽』(2015年)の赤羽、下町の実在する店にこだわった『東京センチメンタル』(2016年)の言問橋といった、これまで注目されていなかったマニアックな下町情緒溢れるロケ地を主役にしている。
この流れがバラエティ番組にも起こっている。その前提として、テレビ東京で放送された松重豊主演の『孤独のグルメ』のヒットがあるだろう。中年のダンディなおじさんが、下町のコアな雰囲気漂う店で美味しいごはんに舌鼓を打つ――同ドラマのヒットでは食ドラマが増えたが、バラエティ番組でいわゆる下町の居酒屋などでタレントが酒を飲む番組が増えたり、再評価を受けたりした。例えば、下町で言葉は悪いが“だらしなく”飲むことを確立させた『吉田類の酒場放浪記』(BS-TBS)をはじめとする酒飲み番組では、中央線沿いや蒲田、赤羽、北千住といったエリアはもはやお馴染みとなった。シャレたバーでカクテルなんてものとは縁遠い、昭和のまま時間が止まってしまったかのような店を好む傾向がある。ユルさが売りの『モヤモヤさまぁ〜ず2』(テレビ東京)やマツコの『夜の巷を徘徊する』(テレビ朝日系)、『有吉くんの正直さんぽ』(フジテレビ系)といった街歩き番組なども、度々ロケ地に下町が選ばれることが多くなっている。
下町独特の“生活臭”がリアリティを生み、若年層にとっては新鮮な“画”に
例えば、少し前のドラマなら、東京タワーの夜景が見える都会的なマンションに住んでいる主人公にあこがれる人も多かっただろう。しかし、今期でいうと『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系)の主人公は下町の商店街で買い物をしていたり、住んでいる部屋はいかにもといった感じの佇まいだ。浮世離れした都会ものよりも、近い目線で楽しめるほうが感情移入しやすい。ロケーションだけで親しみやすさを掴み、番組の内容に自分を重ね合わせて観る人も多いのではないだろうか。
人間ドラマを描くときに“下町人情”をテーマにしたほうが、よりドラマティックになるという理由もあるだろう。「夢を諦めない」をテーマにした『下町ロケット』にはそれが必要だった。演出の福澤克雄氏(TBS)は先日行われた国際ドラマフェスティバルin Tokyoの授賞式の場で「日曜9時は働くみなさんに元気になってもらう枠。(下町の)モノづくりの現場を描いた『下町ロケット』はまさに前向きになれる作品だからハマったのだろう」と語っていた。今は生活臭や泥臭さがむしろプラスのイメージに捉えられ、支持されている。下町コンテンツが求められる動きは今後もまだ続いていきそうだ。
(文/長谷川朋子)