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ドラマタイトルから消えた“夏”――。なぜ夏ドラマは減少しているのか?
トレンディドラマの先駆けとなった作品も“夏ドラマ”だった
また1997年には反町隆史、竹野内豊出演の男の友情物語『ビーチボーイズ』が夏の定番に。過去には夏ごとに同ドラマが再放送されており、今もSNSなどでは「夏になると『ビーチボーイズ』が見たくなる」など切望の声が見受けられる。 2000年代前半も『Summer Snow』や『天体観測』『愛なんていらねえよ、夏』などの夏らしいタイトルが並んでいたのだが、ドラマのストーリーから“夏らしさ”が消えていくのと比例して、それ以降ほとんど見られなくなってしまった。近年の作品群を見ても2014年の『水球ヤンキース』を最後に、夏の季語がタイトルに使われたドラマは1本も放送されていない。
学生時代の“ひと夏の思い出”を想起させる、熱い青春ドラマ
2003年と2004年に放送された『WATER BOYS』はシンクロに燃える高校生の友情とサクセスストーリーを描き、登場人物たちが一生忘れることができないだろう“人生の夏休み”的な“ひと夏の思い出”を若い視聴者に共有させることに成功した。その他にも先述の『ビーチボーイズ』など、主に10代、20代の若年層を中心に社会現象ともいえるムーブメントを巻き起こした。
連ドラが若年層をターゲットから外したことが要因?
「今は、視聴率低下が嘆かれる時代で、制作費も減り冒険もしづらい。結果、制作側も安定した数字をとりに行く傾向になっているんです」(某テレビ誌ライター)
その象徴的現象ともいえるのが、若者に人気のコミックの実写化。原作の売り上げを見れば、どれぐらい当たるのか予測がしやすい。データがある分説得力があるので企画が通りやすくなり、この動きが加速化する。また、年間を通して連載される漫画は、四季を感じるタイトルを使っているものが少ないので、タイトルに“夏”の入るドラマは減っていく。さらにはネットの普及もあり、若者を中心に人々の楽しみも多様化。テレビを見る若者の絶対数が減り、大人向けのドラマが増加したこと、長い夏休みを過ごしている学生が共感する作品が減少しているのだろう。
「月9ドラマ『好きな人が〜』は、夏らしい絵作りとひと夏の恋にこだわった野心作で内容もまずまず面白い。しかし主体はあくまでも“夏”より“恋”。やろうと思えば季節が夏でも冬でもいかようにも成立させられる物語で、そこは特別に“夏”が主体となる構成になるよう制作陣にもっと冒険してほしいところ。ただ最近、同作品をはじめ、フジテレビなどで見られる流れとして “若いクリエイターをどんどん使ってオリジナル作品を作ろう”という動きが見られます。感覚の近い若い人たちを使って若い視聴者を取り戻すこの流れが成功し、定着すれば今後、若者が求める“夏がふんだんに薫る夏ドラマ”の復権もあるのではないでしょうか」(同)
春夏秋冬問わず楽しめるドラマではなく夏になるたび見たくなる…そんな“夏だからこそ”の “夏ドラマ”が再び現れることを期待したい。
(文/衣輪晋一)