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猫ひろしやオードリー春日、芸人の“アスリート化”なぜ?

 8月5日から開幕するリオデジャネイロ五輪の男子マラソンに、芸人の猫ひろしがカンボジア代表選手として出場する。当初、バラエティ番組の企画として始めたマラソンだったが、いつしかのめり込み、五輪出場を目指して2011年にカンボジアに国籍を移すなど苦節の末、ついにその夢を実現した。猫に限らず近年は、オードリーの春日俊彰やじゅんいちダビッドソン、ロバートの山本博など、“アスリート化”する芸人が増加中。なぜ今、芸人たちはスポーツを究めようとするのか? 芸人たちがアスリート化する理由を探ってみよう。

引退のないお笑い界で“兼務”は必須、その挑戦もいつしか芸の肥やしに

  • リオ五輪に出場する猫ひろし (C)ORICON NewS inc.

    リオ五輪に出場する猫ひろし (C)ORICON NewS inc.

  • オードリー春日はアスリート顔負けの筋肉ボディ (C)ORICON NewS inc.

    オードリー春日はアスリート顔負けの筋肉ボディ (C)ORICON NewS inc.

 この芸人たちのアスリート化現象だが、単なる話題作りなどではなく、彼らはあまりにも“ガチ”で挑んでいる。猫で言えば、前回のロンドン五輪出場をめぐって、「国籍を変えてまで出るのは倫理的にいかがなものか?」、「記録的にはレベルが低いから出場する意味がない」などなど、バッシングに近い報道もあったが今回晴れて五輪出場が決定。世間的にも、逆境でもあきらめなかった猫はすごいといった感じで、おおむね好意的に捉えられている。

 また、オードリーの春日とじゅんいちダビッドソンは、バラエティ番組『炎の体育会TV』(TBS系)の企画で、足ひれを着用する競泳“フィンスイミング”に挑戦。両者らがチームを組み、今年6月に出場したチェコ・プラハでのW杯マスターズ「4×100メートルリレー」では見事、銀メダルを獲得した。春日もじゅんいちも、日本大会を正式に勝ち抜いた立派な“日本代表選手”であり、チームで力を合わせて銀メダルを獲得する姿には、視聴者も素直に感動させられたことだろう。
  • 女子ボクサーとして五輪出場を目指した、南海キャンディーズのしずちゃん (C)ORICON NewS inc.

    女子ボクサーとして五輪出場を目指した、南海キャンディーズのしずちゃん (C)ORICON NewS inc.

  • プロレス界を盛り上げた(左から)レイザーラモンHG、レイザーラモンRG (C)ORICON NewS inc.

    プロレス界を盛り上げた(左から)レイザーラモンHG、レイザーラモンRG (C)ORICON NewS inc.

 ほかにも、春日と同じくボディビル大会に挑む芸人・なかやまきんに君(昨年の『第23回東京オープンボディビル選手権』75キロ級では2位)や、プロボクシングのデビュー戦でTKO勝ちしたロバートの山本、“細かすぎる野球モノマネ”で話題を集め、現在は愛媛マンダリン パイレーツのプロ野球投手になったお笑いコンビ・360°モンキーズの杉浦双亮。また少し前にも、プロレス興行『ハッスル』でエース級の活躍をしたレイザーラモンや、女子ボクサーとして好成績を収めたものの、惜しくもロンドン五輪出場は叶わなかった南海キャンディーズのしずちゃんなどがおり、彼らの活躍には目を見張るものがあった。その真剣さはひしひしと伝わってくるのだが、やはり疑問なのは、なぜ芸人がアスリートを目指すのか?ということだ。

 「番組内の企画で挑戦したらハマってしまった…というパターンもありますが、ストイックな練習(稽古)や実力(芸)で勝負するなど、芸人さんとアスリートには共通する部分が多いんです。また、芸能界には引退がなく、まだまだベテラン勢が頑張っていますから、人材が飽和状態気味のお笑い界では、なかなか若手や中堅の活躍の場がありません。新たな芸の一環として活動の幅を広げたいという思いが強いと思います。今では昔のように、芸人が本業以外の“副業”に手を出すのはいかがなものか…といった風潮も薄れていますし、仕事としてネタが増えるなら別に悪いことじゃないと考える芸人さんや、また視聴者も多くなっています。しかも、片手間でやっているどころか、真剣に取り組んで実績を残しているんですから。それに実際、そういう芸人さんたちは、芸人としても確かな腕を持っているんですよね」(エンタメ誌編集者)

そもそも“芸能”と“スポーツ”は親和性が高い?

  • アースマラソンにも挑戦した間寛平 (C)ORICON NewS inc.

    アースマラソンにも挑戦した間寛平 (C)ORICON NewS inc.

 そんな“アスリート芸人”の先駆けと言えば、高校時代に東京都大会2位の実力を持つ体操選手で、番組内でもその腕前を披露していたザ・ドリフターズの仲本工事や、『24時間テレビ』(日本テレビ系)の200キロマラソンや、4万キロ超のアースマラソンなど、過酷なマラソンに挑み続ける間寛平などが挙げられる。考えてみれば、フジテレビの人気長寿番組だった『オールスター紅白大運動会』では、芸人から歌手、俳優まで芸能人がこぞってスポーツで競い合い、それを視聴者も大喝采して見ていたのだから、そもそも芸能とスポーツは親和性が高いと言えるのかもしれない。
 そうした流れは、『スポーツマンNo.1決定戦』(現在は『最強スポーツ男子頂上決戦』/TBS系)の芸能人版などに受け継がれ、なかやまきんに君やペナルティのワッキーなどの常連組が、他の芸能人と競い合ってきたわけだ。しかし現在では、そうした芸能界内の素人競技ではなく、“公式”大会に出場して、どこまで実績を残せるかといったところまで、アスリート芸人の世界が“進化”してきたのである。

 小説『火花』(文藝春秋)で芥川賞を獲得し、作家先生としても話題のピース・又吉直樹など、今や“芸能人”も兼任や副業が当たり前の時代。今後は若手の芸人のみならず、タレントや俳優、歌手といった、ほかの分野からもアスリートとして一目置く存在が現れる可能性だってあるかもしれない。

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