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声優出身者が俳優業で活躍 そもそも声優のポジションとは?

 大河ドラマ『真田丸』(NHK総合)で人気声優・高木渉が武将を熱演し、「あの人は誰だ!?」と話題を集めたが、ここのところ声優たちのドラマ進出が目立っている。NHK連続テレビ小説『あまちゃん』の水瀬いのりや、『とと姉ちゃん』(同系)の緒方賢一(『忍者ハットリくん』の獅子丸)と平田広明(『ONE PIECE』のサンジ)、『真夜中の百貨店』(BSジャパン)の大塚明夫(一連のスティーヴン・セガールの吹き替え)など、アイドル系から超ベテランまで、声優たちのドラマ出演が相次いでいる。そもそも俳優と声優のポジションの違いはあるのだろうか?

声優は俳優のいちジャンル、ベテラン勢には“声優”と呼ばれることに抵抗感も

 最初に確認しなくてはならないのは、声優とは声で出演する“俳優”のことであり、声優でもテレビ・映画に出演する俳優でも、舞台の訓練は基本だ。俳優養成学校では、舞台練習を経た上でそれぞれの道に進むし、声優学校でも必ず最初に“演技の基礎”を学ぶ。戦後の日本では、舞台以外の俳優はラジオドラマなどの声優のことを指していた。今では声優がドラマに出演すると、“異業種からの進出”のように思われがちだが、それは間違いで、劇団出身者の声優も多く、ベテラン声優の中には“声優”と呼ばれることに抵抗感を持っている人も多いという。実際、何となく“俳優>声優”のようなステータス感を持っている視聴者も多いが、声優は声だけで表現する分、かなり高いテクニックが求められるのだ。

 「単純な話、声優さんがドラマに出てると言っても、“俳優”ですから、演技に優れているのは当たり前なんです。声優さんの演技の安定感には以前から定評がありますし、ヘタな新人や異業種の有名人よりははるかにうまい。制作サイドも安心して起用できます。また、声優さんには(あ〜、あの声の人だ)という知名度ならぬ“知声度”があるので、仮に顔がイマイチわからなくても、“声”がわかった時の感動や話題性があるんですね。『真田丸』の高木さんがいい例でしょう。とは言え、今の“萌え系”アイドル声優なら安定した固定ファンがついているので、そこに期待する部分ももちろん大きいです(笑)」(ドラマ制作会社スタッフ)

声優の地位向上に尽力したベテラン勢の尽力がようやく花開くことに

 確かに、音楽ランキングを席巻した『ラブライブ!』のμ‘s(ミューズ)のように、アニメ系声優のアイドル化はすっかり定着した。林原めぐみ、堀江由衣と続くアイドル声優の世界はもはやひとつの文化とも言え、NHKの紅白歌合戦に歌手として出場した水樹奈々や、田村ゆかり、早見沙織のように、“声優=歌がうまい”というのも常識だ。さらにアニメ『おそ松さん』(テレビ東京系)の大ブレイクでもわかったように、神谷浩史に代表される“男性”アイドル声優もいて、今では声優ではなく“CV(キャラクター・ボイス)”などと呼ばれることすらある。

 「声優=俳優の代表が戸田恵子さんでしょう。『アンパンマン』(日本テレビ系)や『きかんしゃトーマス』(当時はフジテレビ系)、映画『エイリアン』シリーズのシガニー・ウィーバーの吹き替え、朝ドラ『まれ』(NHK総合)での語りなど、声優としての実績は言わずもがなです。同時に『ショムニ』(フジテレビ系)ほか、多くのドラマや三菱電機のCMなどにも出演して、好感度も高い。何より、役者の戸田さんを見るたびに、世のお父さんお母さんが子どもに『あの人、アンパンマンの声の人だよ』と言えることは、声優の大きなウリでもあるんです」(前出のスタッフ)

 『ONE PIECE』(フジテレビ系)のルフィの声を担当する田中真弓は、現在でも女優が本業で舞台に立つことが多いし、『ちびまる子ちゃん』(同系)のTARAKOも演劇集団WAKUを主宰して舞台の作・演出を数多く手掛け自身も出演するなど、“声優”というひとつのジャンルではくくれないほどの、精力的な活動を行っている。

 かつて大塚明夫は、「声優は、いい役者でもあるべきです」「世の中に吹き替えが浸透してほしい」と語り、『サザエさん』(同系)の波平役でおなじみの故・永井一郎さんも、いち俳優というスタンスを貫きつつも、アニメ出演料の安さを訴え声優の地位向上に尽力した。そうした錚々たる声優の先達たちの努力が今、まさに報われようとしているのである。

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