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イ・ビョンホンが語るハリウッドと韓国と日本『不安と期待を抱えながらこれからも』
ハリウッドと韓国映画界の違いで驚いたこと
イ・ビョンホン原作者のユン・テホさんは韓国で非常に有名な作家で、しっかりとしたストーリー展開がまず土台としてありました。そこから監督が映画ならではの物語へと脚色していき、その脚本をもとに主役から脇役まですべての役者が素晴らしい演技を見せています。そういったたくさんの要素が集まって良い作品になったので、結果多くの方に観ていただけたのだと思います。
――演じられたアン・サングという役は、カリスマ性を持ちながらカッコ悪さもある複雑なキャラクターでした。この役を演じてみていかがでしたか?
イ・ビョンホン演じていて難しかったですし、そのぶんおもしろさも感じました。原作も映画脚本の第1稿も、社会を告発するような深刻な物語になっていました。もちろんストーリーとしては十分楽しめますが、そのままでは観客が観ているうちに息詰ってしまうのではないかと考えたんです。そこで、監督にアン・サングのキャラクターにどこか人間味のあるユニークな要素を入れたらどうかと提案しました。キャラクターそのものが笑えるというよりは、思わず笑ってしまうような楽しい部分も入れると全体的に観やすくなるのではないかと。出来上がった脚本のキャラクターを変えていくのは大変な作業でしたが、やって良かったと思います。撮影中に笑ってしまってNGになるほど楽しいシーンもありました。
――ハリウッド映画でもご活躍されていますが、韓国映画界とハリウッドを比べて“良い面”と“良くない面”はどんなところに感じますか?
イ・ビョンホン最初はハリウッドのシステムに慣れることに精一杯で、韓国のシステムと比べる余裕がありませんでした。最近になって少しずつ違いが見えてきた部分もありますが、“これが正しい”とか“これが良い”なんて正確なことは正直言えないです。ただ、私がハリウッドで一番感じたのは、“お金”の論理で何でも動くということ。例えば撮影が少しでも遅れたらそのすべてが予算に関わってきて、大きな問題になってしまいます。
また、映画出資者やプロデューサーのパワーが、韓国よりも強いと感じることもありました。その人たちが監督の意思を左右したり、撮影自体を動かすパワーまで持っていることを知って驚きました。その反面良い部分もあって、朝何時から夜何時までと撮影の時間がしっかりと決まっていたり、12時間以上続けてはいけないというルールもあるので、非常に合理的で考えられたシステムだなと実感しました。撮影以外で使える自分自身の時間も増えるので、そういった部分はすごく良いと思います。
ハリウッドからオファーを受ける要因を自己分解
イ・ビョンホン以前出演したハリウッド超大作『G.I.ジョー』でオファーをいただいたときは、商業的な面で声をかけていただいた部分が大きかったのではないかと思います。当時は日本や韓国の映画産業が盛況だったので、確実に観客動員が見込めるチケットパワーを持つ人気俳優の認知度が重要視されていたのではないかと。そこがキャスティングのポイントになって私にオファーがきたのではないでしょうか。
――チケットパワーにつながっているイ・ビョンホンさんの役者としての魅力あってこそですよね(笑)。
イ・ビョンホン「私の演技に魅力があるからオファーをいただきました」と答えるべきでした(笑)。少し話は逸れますが、今は中国市場がハリウッド映画をどんどん受け入れるようになってきています。そうなると中国が製作費を出資するケースも増えてくるので、韓国や日本ばかりでなく、中国俳優も今後ハリウッドにどんどん進出していくと思います。
――話は変わりますが、韓国映画の日本公開時に来日プロモーションをされるのは監督ばかりですが、イ・ビョンホンさんは毎回来日しています。日本に対して特別な想いを持っていただいているのでしょうか?
イ・ビョンホン以前の日本での韓流人気はある意味、異常現象だったと思うのですが、今の私があるのはそのころからの多くの日本のファンの方々の応援があったからだと思っています。韓国のファンと同じぐらい日本のファンも私にとって特別な存在です。日本のファンの方々は長い間、変わらず応援してくださっています。ファンミーティングや映画イベントもそのひとつですが、心から感謝している気持ちを伝えるために、なんらかの形でできるだけ日本に来たいと思っています。
1万人のファンとの握手に込めた想い
イ・ビョンホンファンの方々とは、俳優と観客、あるいは俳優と映画ファンという間柄ではありますが、それだけの関係で終わりたくないと思っています。みなさん、とにかく私のことをよく知ってくださっています。ファンミーティングなどでの交流を通しての俳優とファンという関係を超え、時間が経つにつれてお互いのことを深く知っているような間柄になっていると感じるんです。
だからこそ、ファンミーティングではみなさんの前にコミカルな姿で登場したり、ときには歌を間違えたり、カッコ悪い姿を見せることもあります。でも、ファンクラブの方々の前ではカッコつけずに少し抜けている姿をお見せしても大丈夫という安心感があるので、すごく素敵な関係を築けているのではないかと思います。そういった部分が、心を自由にしてくださっていると感じています。
――そのファンミーティングでは1万人以上と握手をされたそうですが、世界的なスター俳優がそこまでの距離感でファンと向き合うのは珍しいですね。
イ・ビョンホン今回はファンクラブ10周年という記念の年でもありましたが、記念だからというだけではなく、長い間応援してくださっているファンの方々にどうしたら感謝の気持ちを伝えられるかを考えたんです。そこで大阪では5000人、東京では8500人と握手をすることにしました。短い時間ではありますが、少しでも感謝の気持ちを直接伝えたいという想いがあったので。
――日本に来る直前には米アカデミー賞のプレゼンターとして授賞式に出席されていました。ステージに立ったときの心境はいかがでしたか?
イ・ビョンホンいまだに宙に浮いているような感覚です。想像もできなかった機会をいただきました。俳優であれば誰もが一度は行ってみたいと思う夢の場所ですよね。実際に起こったことなのに、あれは現実だったんだろうかと今でも思います。良い経験になりましたし、大変光栄なことでした。
――俳優としての今後の課題やチャレンジしたいことはありますか?
イ・ビョンホン今まで何か目標を決めて俳優としての人生を送ってきたわけではなくて、いただいた仕事を大切にしながら1日1日を歩んできました。今後もどんな仕事をいただけるのかわかりませんが、不安と期待を抱えながらこれからも仕事を誠実にこなして、一歩一歩進んでいきたいです。
(文:奥村百恵/撮り下ろし写真:逢坂 聡)
インサイダーズ/内部者たち
その一連の流れを陰で操るのが策士・ガンヒだ。ガンヒに雇われ様々な悪事を代行してきたアン・サングは、ある日、財閥企業ミライ自動車が大統領候補への裏金を送っていた証拠となるファイルを手に入れる。それを楯にミライ自動車を脅し、さらなる成功を手に入れよう企てるが、しくじり失墜する。
一方、裏金事件を捜査していた検事ウ・ジャンフンは、裏金ファイルをアン・サングが横取りしてしまったため、捜査は難航し打ち切りに。コネや後ろ盾のない彼はすべての責任を負わされ左遷されてしまう。しかしウ・ジャンフンは諦めきれず、チンピラに成り下がりながらも復讐を企てるアン・サングを追い、一発逆転の“告発”を持ちかける。
監督・脚本:ウ・ミンホ
出演:イ・ビョンホン チョ・スンウ ペク・ユンシク イ・ギョンヨン キム・ホンパ
公開中
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