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ビートたけし×西島秀俊“映画愛”対談『網目のように広がる解釈×笑顔に救われるけど現実は…』

あんなたけしさん、いままで見たことがなかった

――先ほど大島監督の名前が出ましたが、たけしさんの主演ドラマ『鬼畜』(2002年)を撮った田中登監督、ひいては増村保造監督へとつながっていくような、日本的なエロスのエッセンスも、今回の作品から感じました。日本の文化に対する好奇心のようなものは、ワン監督から感じられましたか?
たけし(監督と)話していると、いろいろと質問してくるから「谷崎潤一郎って知ってる? 監督、ああいう感じ好きなんじゃないかな? 谷崎文学、おもしろいよ」って言ったら、すぐ集めて読んでいたね。で、いきなり『瘋癲老人日記』を持って尋ねてきて「たけし、これやらないか?」って(笑)。
西島(笑)フットワークが軽いですね。
たけし「ちょっと待ってくださいよ」って(笑)。「オレ、テレビもやっているし、そんなスケジュールないですよ」って言ったら「いやいや、先のことだから」なんて言ってたけど。けっこうそういう日本のエロスとか、文化の表面的じゃない、人間の底辺に流れている性的なことに興味があるみたいだったね。
西島そうですね。
たけしやっぱり日本とは生理的な違いがあるからね。例えばヨーロッパにはバラの香りとか、いろいろな香水があるけど、日本人は昔から「残り香」なんて言って、ここに彼女がいたような、かすかに香りが残っている感じを喜ぶよって言うと、監督は喜んでメモを取っていたよね。あと“源氏香”も教えて。平安時代の人は『源氏物語』という文学にまで、匂いをあてはめてしまうくらい、匂いに対して細やかだったんだよって。ところが通訳の人が源氏香を知らないもんだから、説明が大変で!
西島わからないですよ(笑)。僕だって、本を読んでやっとわかりました。こういう遊びをしていたんだって。
たけし監督本人がそういう話を聞いて、夜中じゅう考えたことを、明くる日の撮影に託してくるわけだから。いまどきいない監督だよね。オタクといえばオタクだけど(笑)。
――匂いのような目に見えないものまで、すくいあげようとする監督の意欲から、かつて見たことのない映画が生まれたのですね! シーンについて一点、おうかがいしたいのですが、3日目の夜、プールサイドで健二の反論を全身で否定する佐原の動きは、どのようにして作られたのですか?
たけし急に靴下を投げ捨てて、っていうのは、現場で監督とふたりで考えてね。
西島あのシーンは僕も驚きました、聞いていなかったので。でも、感動しましたね。あんなたけしさん、映画のなかでもいままで見たことがなかった。素晴らしかったです。
たけしそれにしても不思議な映画だよね。妙だもんなあ。ラストシーンで、じゃあいままでは何だったのか? って思うよね(笑)。
西島僕は、ラストの笑顔にちょっと救われるんですよね。でも結局、現実は……。
たけしラストシーンから逆算するとね、美樹をワインバーのウェイトレスにしたらどうだ? ってストーリーが一瞬、頭に浮かんだんだけどね。まあ、これはオレの見方なんだけど。解釈の仕方がたくさんある。その点においては、おもしろい映画だなあと思うよ。
(文:石村加奈/撮り下ろし写真:逢坂 聡)

女が眠る時

 作家の清水健二(西島秀俊)は1週間の休暇を取り、妻の綾(小山田サユリ)とともに郊外のリゾートホテルを訪れる。初めて書いた小説がヒットしたもののスランプに陥り、今後就職することが決まっていた健二は、妻との関係も倦怠期を迎え、無気力な時間を過ごしていた。
 滞在初日、プールサイドで異様な存在感を放つ、初老の男・佐原(ビートたけし)と若く美しい女・美樹(忽那汐里)のカップルに目を奪われる健二。その日以来、健二は彼らを見かけるたびに後をつけ、部屋を覗き見るようになっていく……。

監督:ウェイン・ワン
出演:ビートたけし 西島秀俊 忽那汐里 小山田サユリ リリー・フランキー
2016年2月27日(土)公開
(C)2016 映画「女が眠る時」製作委員会
【公式サイト】(外部サイト)

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