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鬼ヶ島・おおかわら、お笑い“ボケ”と“ネタ書き”格差に危機感…『珍遊記』脚本に抜擢

あの伝説のギャグ漫画を松山ケンイチの主演で実写化する『珍遊記』。そのキャスティングやビジュアルがネットをざわつかせているが、もうひとつのトピックになっているのが、芸人・鬼ヶ島のおおかわらが脚本に参加していること。型破りな映画になるであろう同作で芸人脚本家が果たす役割とは? 一方、注目作に大抜擢され初映画脚本を手がけることになった若手芸人への周囲の風当りとは…!?

10分間ずっとスベるネタがきっかけ

――今回、脚本を手がけることになったきっかけを教えてください。
おおかわら2014年の鬼ヶ島の単独ライブに、山口雄大監督が来てくださったんです。その時点で僕は面識がなかったんですが、ライブ終了後に共通の知り合いの作家の松原さんが、一緒に食事に行こうと声をかけてくれて。それまでお笑いの道でずっとやってきて、映画監督さんの知り合いなんてひとりもいないこともあって、これはおもしろそうと思って飲みに行ったら、その場でこのお話をいただいたんです。

――いきなりですか!? それは驚かれたんではないですか?
おおかわらビックリしましたね。漫☆画太郎さんの原作もずっと読んでいましたけど、まさか僕がその映画の脚本を手がけることになるなんて、夢にも思いませんでしたから!

――監督におおかわらさんを起用した理由は聞きましたか?
おおかわらはい。実は、僕らのネタで、単独ライブにもかかわらず、10分間ずっとスベるネタがあるんですよ。

――……あの、単独ライブって、鬼ヶ島を愛している人たちが集まる場所ですよね(笑)?
おおかわらたぶん(笑)。にもかかわらず、キンキンに滑るネタがあるんですけど、それを見た山口監督が「素晴らしい!」と褒めてくれたんですよ。僕もそのネタが一番のお気に入りだったので、そこを認めてくださる方とお仕事ができたら絶対に楽しいはずと思って、ありがたく引き受けることにしました。
 これまでずっとひとりで鬼ヶ島のネタを書き続けてきましたが、テレビに呼ばれるのはいつも大ボケの野田だったりして、どこか危機感を覚えていたんです。でも、山口監督は、僕が書いていたネタと、書く技量を認めてくれた気がして、すごく嬉しかったんですよね。
――それはすごく嬉しいですね。
おおかわらあと、山口監督は映画を愛するあまり、偏った作品ばかり手がけてきて、「正直仕事が減ってきた」ってカミングアウトしてくれたんです(笑)。鬼ヶ島も、最初は尖ったことばかりをしていたんですが、『キングオブコント』などに出るようになって、もっとポップなものを作らなくてはと思うようになり、ポップなものとエッジの効いたものをバランスよくやっていこうとしていたところだったんです。そこに、山口監督は同じものを感じると言ってくださって。
 その価値観が一緒なら、絶対におもしろい作品ができると確信しました。まぁ、僕自身は目先の人に褒められたいという気持ちが強くて、ついつい自分のポリシーを曲げてしまう悪いクセもあるので、山口監督に鬼ヶ島の本質を見抜いてもらえた気がして、すごく信頼ができたんです。

僕たちレベルの芸人がお笑い以外の仕事をすると…

――映画の脚本を書くことは初めてだったと思うのですが、コントとは違うものでしたか?
おおかわら全く違いましたね。極端な話、お笑いのネタは鬼ヶ島3人が納得すれば成り立つものですが、映画はそうはいかない。いちど出来上がった脚本に対して、何度もいろいろな意見が重なりあって、監督と一緒にバランスをとりながら仕上げていきました。とにかくスピードが勝負だったので、まず書いてみるということを実践してなんとか出来上がった感じです。

――コントのネタは、じっくり作るタイプなんですか?
おおかわらじっくりというよりも、思いつくまでに何時間もかかるので、ノートを目の前にずっと悩みあぐねている感じなんです。長い時はファミレスに10時間いることもあります。それでも数分のネタが少し上がるくらいだったんですよね。でも、この映画の脚本を書いてから、“書く力”が向上したのか、最近ではネタを書くスピードが上がりました。ただ単に、その間はコントから離れていたのでアイディアが溜まっていただけなのかもしれませんが(笑)。

――映画脚本を手がけることに対して、仲間の芸人さんたちからのリアクションはいかがでしたか?
おおかわらみんなすごく喜んでくれましたね。実は、僕たちレベルの芸人がお笑い以外の仕事をすると、冷めた目で見られがちなんです。きっとどこかで「本職のお笑いで結果を残していないのに何やっているんだ」「そんなことやっている場合か」って思う傾向にあるんですよね。でも、仲の良い友人の芸人も番組の作家をやっていて、毎日すごく楽しそうなんです。その姿を見ていると、自分がやって楽しいと思えることは、なんでも挑戦できたらと思うんです。

――自分の適職は、やってみないとわからないですからね。
おおかわらそう思います。あとは、映画のお仕事をしたことで、すごく多くの方と話をする機会が増えたんです。それも刺激的で楽しかったですし、いろいろ勉強させていただきました。

“芸人=演技がうまい”説を完全に打ち消した

――主演の松山ケンイチさんとは仲良くなれましたか?
おおかわら松山さんにはこれまで体感したことのないオーラがありました。溝端淳平さんとふたりでご飯を食べていたことがあったんですが、そこに偶然、松山さんがふらりと現れたんですよ。そこで「一緒に食べましょうよ!」って声をかけたら、「ささっと食べたいんで……すみません」と、別の席で本当にさっと食べて出て行かれたんです。普通だったら一緒に食べるものだと思いますが(笑)。松山さんはそこにまったく嫌味もなければ、その後も何事もなかったように笑顔でお話ししてくれるので、こんなに恐ろしいほどマイペースな人がいるんだなって感心しました。

――その松山さんも、山田太郎を全力で演じていらっしゃいましたね。
おおかわらあの姿にはすごく驚きましたし、素晴らしかったです。当たり前かもしれませんが、素っ裸のシーンにもまったく動じる様子もなく堂々としていて(笑)。役に徹底的になりきる俳優さんのすごさを間近で感じて、僕には絶対に無理だって思いました。
――おおかわらさんもご出演されていますよね。
おおかわら……でもあまりにもへたくそすぎて、二度と出ないと決めました。撮影の初日に、セリフのカンペをスタッフに貼ってもらって臨んだんですよ。それに溝端さんが「映画の現場でそんな人みたことない!」ってすごく驚いていて。僕は本気だったんですけど、それを冗談として受け取ってくれた溝端さんが一緒で助かりました(笑)。

――芸人さんは演技もうまいし器用という印象がありますが……。
おおかわら僕がその説を完全に打ち消しましたね(笑)。でも、今野(浩喜)さんが、本当に素晴らしい演技をしてくれたので、芸人=ダメと思われずに済みました。とても感謝しています。

――脚本を手がけたおおかわらさん的な注目ポイントを教えてください。
おおかわら見どころはなんといっても、倉科カナさん演じる玄奘があるセリフを放つ最初のシーンのやりとりですね。このひと言だけでこの映画は決まると思うので(笑)。ぜひ耳を澄ませて聴いてもらいたいと思います!
(文:吉田可奈)

珍遊記

 天竺を目指して旅を続けていた坊主・玄奘(倉科カナ)は、偶然立ち寄った家のじじい(田山涼成)とばばあ(笹野高史)に天下の不良少年・山田太郎(ピエール瀧)を更生させて欲しいと頼まれ、宝珠の力で恐るべき妖力を封印する。が、太郎(松山ケンイチ)を嫌々ながら引き取ることになり、何の因果か共に旅をする羽目に……。果たして、彼らは無事に天竺まで辿り着くことができるのか!?

監督・編集:山口雄大
脚本:おおかわら 松原 秀
出演:松山ケンイチ 倉科カナ 溝端淳平 田山涼成 笹野高史 温水洋一 ピエール瀧
ナレーター:キートン山田
2016年2月27日(土)より、新宿バルト9他にて全国ロードショー
(C)漫☆画太郎/集英社・「珍遊記」製作委員会
【公式サイト】(外部サイト)

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