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柄本時生、危機感明かす「今は良くても仕事はなくなる」 兄・佑とのエピソードも

今はよくてもすぐに仕事がなくなる危機感はある

――では、これが自分の仕事なんだな、と実感したときはありますか。
柄本 もともと俳優に強い思い入れがあったわけではなく、高校を卒業したら大学に行くつもりだったんです。古本屋で漫画を売るときに用紙の「職業欄」に『俳優』じゃなくて『学生』って書きたかったし、あとは大学で映画を撮ってみたいと思っていたので。でも大学に落ちてしまって、ニートやってるわけにもいかないし、もう社会人として頑張って働かなきゃな、と思ったんですよ。そこで『俳優』を受け入れるしかないんだなって。中二から俳優の仕事は続けていましたけど、18歳までは学生だったから、どこかしら逃げ道があったんですよね。

――真っ当ですね。
柄本 普通です。みんな、そうじゃないのかな?

――そうじゃないひともいますね。何者でもないままでいたいひともいますね。
柄本 あとは初対面の人に「あんた、誰? あー、俳優なんだね」って言われるのもイヤだったので、『学生』で逃げたかったというのはありますね。俳優としてやっていくって怖い。“水商売”だから、どうなるかもわからないし。いまでも怖いですよ。うちのお父様がうるさいから……。「お前、いま、何やってんの?」って聞かれて、「これと、これと、これ」って答えると「忙しいな。(でも)すぐなくなるぜ。お前なんか」って言われます。あぁ、今は良くても仕事はなくなるのかって思って。新しい子たちがドンドン出てきますからね。でも、大人なんだから、働かなきゃいけない。社会人の意識、僕は強いですよ。そういう者でしかないです。ヘンですかね?

――俳優は決して特殊なわけではなく、数ある職業の中のひとつ、ということですか。
柄本 特殊なものだとはまったく思わないです。むしろ何かあった時に真っ先に“なくてもいい”ってなる職業じゃないですか。僕は他の職業の方たちのほうがスゴイと思いますね。大工さんは、人を守る家を作るんですよ。料理人はひとのおなかを満たすんですよ。スゴイじゃないですか!

――やっぱり大工なんですね(笑)。俳優は人の心を満たすじゃないですか。
柄本 それについてはよくわからないんですよね。人の心を満たすんだったら、歌とかのほうが良くないですか? ライブとか行ったほうが盛り上がるじゃないですか。イメージとして、僕らの仕事って、他の人たちの物真似に過ぎないと思っているから。

――現実に生きているかもしれない人たちを“演じて”いるわけですからね。
柄本 やっぱり、そのリアルな人たちのほうがスゴイじゃないですか。スゴイから、題材になるわけですからね。僕らは真似っ子の世界ですから、言ってみれば“嘘つき”の職業ですよ。やっぱり、本物の人たちにはかなわない。だから、近づくために練習するんです。僕らは台詞を流暢に言うのが仕事ですから。

――でも、その嘘が、誰かを救っていたりもするわけですよね。
柄本 僕はそんなことを思ったことがないんですよ。もう自分のことで一生懸命だから、考えてない。というか、「俺、他人のためになってる」なんて思ってたら、恥ずかしくないですか(笑)。他人のためになりたいとは思うけど、なってる自信はない。それでも「感動しました」なんて言っていただけるのは嬉しいとは思います。でも、言われるためにやっているわけではないです。ごめんなさい、俺、自分のことしかやってない、と思う。自分のことで必死ですよ。みんな、一緒だと思います。家族のために、自分のために、頑張ってるんだと思います。

兄・佑との2人芝居は大切にしていきたい

――俳優として、何か目標とするところはあるのでしょうか?
柄本 なんですかねぇ…“続くこと”ですかね。ただ、兄ちゃんと2人芝居をやってるんですけど(2008年に演劇ユニット「ET×2」を結成)、それだけは大切にしたいと思っています。

――俳優の世界に入るきっかけとなったお兄さんとの共演は、どんな感じなんですか。
柄本 僕は楽しいですよ。兄ちゃんはすごく腹が立つみたいですけど(笑)。「弟の無責任、兄貴の責任」とはよく言ったもので、兄貴はお客さんをどう満足させるかと言うことを考えてるんですけど、僕はそういうことに興味がないし、気にしないから。「俺はこんなに考えてるのに、お前は何もしない…」って。本番中も、兄ちゃんがこっちをずーっとにらんでるんですよ(笑)。

――性格は全然違うんですか?
柄本 うーん、言ってることはほぼ一緒だと思います。同じ質問をされたら、ほぼ同じ答えをするんじゃないかな。

――では先日、佑さんにしたのと同じ質問をしてみます。本番前って、緊張しますよね? 何で緊張すると思いますか。
柄本 カメラがあったりすることによって、自意識とかが芽生えるからじゃないですか。そのナルシズムから抜け出そうとか、そういうことじなんじゃないかな。

――佑さんは「自分にがっかりしたくないから」とおっしゃっていました。
柄本 あー、言いそうだなぁ、兄ちゃん! わかります! 僕は緊張するので、「カメラ気にするなよ、俺」「台詞を言うだけ、セリフを言うだけ…」とか思ってますね。どこまで考えてるかは、自分でもわかんないですけどね。

――柄本さんと言えば、ドラマ『Q10』で共演した前田敦子さん、池松壮亮さん、高畑充希さんとの「ブス会」が話題ですね。
柄本 ただ友達同士が集まって、ぺらぺら、大したことないことしゃべってます(笑)。本当に他愛もない話ばかり。でも、半年に1回くらいのペースですね。会話は楽ですよ。やっぱり、他では言いたくないこと、ここでしか言えないことって、この職業やってるとあるじゃないですか。僕自身にはあまりそういうことはないけど、3人がそういう話をしてくれるのは嬉しい。友だちだから。そういう話も言ってくれるんだな、って。でも、最近会ってないなぁ…。

――会う周期を決めてるわけじゃないんですか。
柄本 決めてないんですよね。あっちゃん(前田)からグループLINEに「何してる」って届いたら動き出します。ただ、誰がリーダーというわけでもないんですよ。いつの間にかできていたので、誰が作った会なのかもわからない。近況報告をし合うだけの会です。

(文/相田冬二 写真/片山よしお)

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寺山修司生誕80年 音楽劇『レミング 〜世界の涯まで連れてって〜』

 劇作家・寺山修司さんの傑作『レミング〜世界の涯まで連れてって〜』を、演出家・松本雄吉が新解釈で挑んだ音楽劇。舞台は東京都品川区五反田本町二丁目一番七号、幸荘十号室。ある日、コック見習いのタロ(溝端淳平)とジロ(柄本時生)、そして畳の下にタロの母親(麿赤兒)が潜む下宿屋の仕切り壁がこつ然と消えた。修理を依頼しても、下宿屋そのものの存在を否定する大家。壁がなくなり、次々と奇妙な訪問者が入り込んでくる部屋。壁が消えた世界で、タロとジロはどこへ行くのか…?

【日程】2015年12月6日(日)〜20日(日)
【会場】東京芸術劇場 プレイハウス
(北九州芸術劇場 大ホール,愛知県芸術劇場大ホール,森ノ宮ピロティホール公演も開催)
【出演】溝端淳平,柄本時生,霧矢大夢,麿 赤兒 他
【作】寺山修司 【演出】松本雄吉(維新派)
【上演台本】松本雄吉(維新派)/天野天街(少年王者舘)

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