(更新:)
ORICON NEWS
「バーテンダー世界一」金子道人が語る、世界がうらやむ“おもてなし術” とは?
世界大会は、自分がどのレベルにいるのか、全然わからなかった
「世界で2人のチャンピオンを出した国はなかったんです。採点競技ですから、同じ国からチャンピオンになるのは難しそうじゃないですか。でも、そういう意味で、より難しいことをクリアでき、タイトルを引き戻せたというのは、大きく自信を持っていい部分かなと思いました」。
「それに、日本大会はライバルと戦ったというイメージが強いんですが、世界大会は、自分がどのレベルにいるのか、全然わからなかった。もうとにかく自分を貫くしかない、自分の技術や味には自信を持って、それを100%表現することが大事だなと。それだけしか考えていませんでした」。
ちなみにこの大会は、作品としてのカクテルの味を競うものと思われがちだが、そうではない。「よく、『優勝カクテル、ちょうだい』って言われるんですが、これはカクテルコンクールではなくて、バーテンダーコンクール。だから、『あなたの好きな味を言っていただいたら、そのカクテルをつくります。そのためのコンクールですから』と言うんです」と金子さん。同大会では、各審査員がお客様であり、誰かのためではなく、その人のために考えたカクテルを出さなければいけない。加えて、所作やサービスなど、バーテンダーとしてのすべてが審査される。
日本人は世界のバーテンダーの目標の一つになっている
ただ、だからといって、日本人なら簡単に優勝できるわけではもちろんない。最高の“おもてなし”をするための、金子さんの普段の練習や準備は半端なものではない。「もし、間違えて何かを出したときのためのこともやっていました。緊張して、何か違うことを言ってしまったらどうしようというときのための逃げ方も全部つくっていました。やっぱりいちばん大事なのは、失敗の練習をするかどうか。それがいちばん失敗しない方法かな」。
そんな金子さんの不断の努力を支えているのが、じつは奈良県の並み居る先輩たちだという。「奈良は、第1回大会は誰もエントリーしなかったんですが、第2回からはベスト10にずっと残っていて、日本チャンピオンも僕を含めて3人がなっています。また、コンクールに参加していない方でもすばらしい技術、知識を持っている人がたくさんいます。みんな、技術提供とか知識提供を率先してやりますし、僕が世界大会に出るとなったら、歴代のチャンピオンが、『ウチの弟が出るから』みたいにバックアップしてくれるんですよ。練習のときもいっぱい集まって、僕の練習を支えるというのを徹底してやってくれました。だから僕は、プレゼンテーションなどの練習は、1人では1回もやってないんです」。
それだけに、金子さんの今後の目標も、「伝えていくこと」にある。しかも、その視線は世界へも向けられている。「大会から帰るときに、海外の人に、『ぜひ、私の国に、日本のバーテンディングを教えに来てくれ』と言われたんです。海外の人が僕の技術や所作をマネすると、1杯つくるのに40分かかるそうで、『だから、みんなやらない。できないからやらないんだよ。あなたは2分ぐらいでつくれるでしょ。教えてくれ』と。日本のバーテンディングの技術を、今度は海外のバーテンダーができるように教えていけたらと思いますね」。