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アナゴさん死す? サイコパス・ホリカワくん? 『サザエさん』ネット独自の楽しみ方
ひよこにワカメと命名、壁のシミを弟に見立てるホリカワくんの心情とは?
このホリカワくん、最近になって脚光を浴びるようになったキャラで、すこぶる変わっているようだ。「ホリカワくんの卵」という回では、親戚が営む養鶏場のひよこを勝手に“わかめ”と名付け、「成長して卵を産んだら真っ先に人間のワカメちゃんに食べてもらいます」と発言し、ワカメに気持ち悪がられる。この回からネットでは、“ホリカワくん=サイコパス”とまで言われ、大いに盛り上がるのだが、確かに少々気味の悪いところが多い。
「ホリカワくんの弟」の回では、ホリカワくんが、本来いないはずの弟を題材にして作文を書く。疑問に思うワカメだったが、ホリカワくんは塀に浮かんだシミを“弟”(名前はヘイキチ!)と称し、キャッチボールをしていたというオチだった。その人型のシミは、心霊番組でよくある“トンネルの怨霊が浮き出たシミ”っぽく、かなり気持ちが悪い。先述のヒヨコの回でも、ホリカワくんの描いたヒヨコの絵を見て、タマが悲鳴を上げて逃走。その絵は、電流が走ったようにヒヨコの毛が逆立ち、ワカメにも「これがひよこ!?」と驚愕されてしまうほど恐ろしい絵だった。カツオも「すごいよ、ホリカワくんの絵、タマが逃げていくんだからね」と皮肉るが、ホリカワくんは平然と「そんなに褒めないでください」と照れ笑い。サザエさんらしからぬシュールな空気が漂うのであった。
普遍的な内容だからこそ、紛れ込んだ異質な存在がより際立つ
この本、今でいう『ワンピースの謎』(データハウス)的な、その物語の背景や設定など、疑問点を重箱の隅をつつくように検証する、“謎本”“研究本”と呼ばれるジャンルの元祖ともいえる本で、200万部を超える大ベストセラーとなった。1946年連載開始の『サザエさん』の設定を含めて検証され、あまり語られることのなかった登場人物の年齢や、実はフネが波平の後妻だったなど、ブラックな噂も盛り込み、多くの読者に新鮮に受け入れられたのだ。ネット上で『サザエさん』が面白がられている現在の現象も、この『磯野家の謎』とほぼ同じノリだといえる。
とはいえ、すべては『サザエさん』が長寿アニメであるということと、基本的なストーリーは決して変わらない作品であるからこそ起きる現象だ。普遍的な内容だからこそ、そこに紛れ込んだ“ホリカワくん的”な異質な存在がより際立つし、定番のキャラにも何か“異変”を探し出したり、“深読み”するという我々の好奇心も、十分に満足させてくれるわけだ。今後も『サザエさん』には、変わらず“偉大なるマンネリズム”を守っていただきたいものである。
(文:五目舎)