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ORICON NEWS
声優交代から10年…新たに確立した新世代の『ドラえもん』
原作のブラック要素が残されていたリニューアル前
旧ドラえもんアニメに関しては、ガキ大将・ジャイアン、そんなジャイアンに媚びるスネ夫の意地悪な部分が露骨に表現されていたり、特に大長編(映画)においては何かしらの問題提起がされていたり、人間の愚かさなどの部分が強調されていたりと、原作にも通じるブラックな部分が残されていた。例えば『のび太と雲の王国』『のび太とアニマル惑星』では環境問題にフォーカス。『のび太と鉄人兵団』や『のび太とブリキの迷宮』では、人間がロボットに頼りすぎてしまったが故に起こってしまった争いを描いた。中にはドラえもんが敵から執拗な拷問を受けた末、壊れてしまう作品も。旧映画に感動したという一方で、子どもの頃に映画館で観て「怖い」という感想を抱いた人も多いのではないだろうか。
時代に合わせて変化
例えば、1986年に公開された劇場版をリメイクし、2011年に公開された『ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団〜はばたけ天使たち〜』。この映画で一番変わったのは、ロボット「ザンダクロス」の“脳”だ。旧作では見た目には無機質な青い球だったが、リメイク作品ではヒヨコのような可愛らしい見た目に改造されたことに加えて、“ピッポ”という愛称も。キャラクター化されたことで、より本編に重要な関わりを持つと同時に、のび太たちとの“友情”にもスポットがあてられた。当初は侵略者として、のび太たちに反抗していたが、次第に心を通わせていくピッポ。劇場では、序盤は可愛い見た目からは想像もつかないピッポの生意気な言動に子どもたちがゲラゲラ笑い、後半はのび太たちを助けようとボロボロになりながら奮闘する姿に大人たちが涙を流していた。
旧作と新作は比べるものではないと思うが、「むしろ今の『ドラえもん』のほうが純粋に楽しめる」という意見もある。ある意味では挑戦だったとも思うが、リニューアル以降、人と人との「絆」など、世の中が娯楽作品に求めるニーズに合わせて少しずつ変化してきたことで、時代が変わっても親子二世代で楽しめるコンテンツ、という揺るぎない立ち位置を確立したのだ。
継続することに意味があったこの10年
それだけに、新たにドラえもんの声を演じることとなった水田わさびをはじめ、新声優陣のプレッシャーは相当なものだったと思う。しかし、現在開催中の『ドラえもん映画祭2015』で旧声優陣が今の声優陣に対して贈った「10年続いたら本物」という言葉通り、この10年で培ってきたものは非常に大きい。10年かかってようやく新ドラえもんが定着したのであれば、本当のスタートはここからなのかもしれない。