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今期の連ドラ、後半戦の注目は“リベンジドラマ”
◆時代の閉塞感の反動?今期に多い復讐ドラマ
はっきりと復讐を描いているのが『ウロボロス〜この愛こそ、正義。』(TBS系)。主人公は刑事の龍崎イクオ(生田斗真)とヤクザの段野竜哉(小栗旬)。表向きは接点を持たないが児童養護施設で一緒に育った幼なじみで、20年前に慕っていた結子先生(広末涼子)を目の前で何者かに殺されている。犯人は捕まるどころか、なぜか警察関係者に事件ごともみ消された。2人は先生のかたきを自ら討つことを誓い合い、表と裏の世界でのし上がってきたのだった。毎回起こる事件を追いつつ、20年前の真相に迫っていくストーリーだ。
『銭の戦争』(フジテレビ系)は、“エリートから一気に転落した男の大復讐劇”と謳われている。やり手の証券マンだった白石富生(草g剛)は、多額の借金を残して自殺した父親の連帯保証人になっていたため、金も仕事も婚約者もすべて失い、ホームレスに身を落とした。どん底で自ら金貸し業者となり、驚異的な数字の記憶力と頭脳を武器に這い上がっていく。人柄の良い役の多い草gが鬼の形相を見せて。父親を追い込んだ金貸しへの復讐も企てるが、「金で失くしたものはすべて金で取り戻す!」と言っているように、大きくは金でなびいたすべての者へのリベンジに思える。
時代のニューヒロイン・広瀬すずの初主演で話題の『学校のカイダン』(日本テレビ系)は、学園ドラマで復讐ものとはされていないが、物語の構図は通じる。“プラチナ8”と呼ばれる一部生徒が牛耳る名門高に編入した春菜ツバメ(広瀬)は、策略で名ばかりの生徒会長を押し付けられるが、天才スピーチライターの雫井彗(神木隆之介)と出会い、コトバの力で学校を変えていく。少しずつ仲間を増やしてプラチナ8の牙城を切り崩しながら、ツバメが弱虫だった昔の自分へリベンジしているとも取れる。
もう1本が『問題のあるレストラン』(フジテレビ系)。こちらは“女性応援コメディ”とされているが、主人公の田中たま子(真木よう子)はセクハラ、パワハラが横行する男社会の大手飲食会社で騒動を起こしてクビになり、リベンジを賭けてレストランを開いた。彼女が集めた女性店員たち(1人は女装好きのゲイ)も、それぞれが男たちの横暴に傷ついた過去があり、見返したい気持ちを持っている。
たまたまにせよ、こうしたリベンジものが重なったのは、何かと明るい展望を描きにくい時代の閉塞感の反動かもしれない。奈落から諦めずに這い上がっていく主人公たちの姿に勇気づけられる。『銭の戦争』は視聴率14〜12%と、全体的に低調な今クールの連ドラでは健闘中。一方、『問題のあるレストラン』は2話以降8%台と低迷している。
◆後半にかけての物語の展開からカタルシスが来る
ただ、前半はリベンジものの醍醐味には欠けていた。『銭の戦争』などは最初にリベンジすべき状況が示され、毎回一進一退ながらも敵や目的に近づいていくところが魅力になっている。だが、『問題のあるレストラン』は群像劇で、毎回1人の店員に順繰りにスポットを当て、それぞれが目指すリベンジの背景を描いてきた。そこに共感もあるが、店員たちの痛みが強く残ってリベンジ自体は始める前段階。スカッとはしないし、“コメディ”という割に重い。腰を据えて鑑賞するノリではない最近のドラマ視聴傾向にはそぐわないだろう。逆に言えば、店員たちのきめ細かい人物紹介がひと通り終わっての後半は、どんどんリベンジが進んでいく期待がある。
過去の作品の例でみても、リベンジものは後半にかけてじわじわと話題性を広げ、ラストに向けて一気に物語が展開し、その盛り上がりで視聴者を惹きつけるケースがある。今期の『問題のあるレストラン』もまさにその例にあてはまりそうで、そのクオリティの高さからもこれからの盛り上がりと視聴者層の拡大が期待できそう。他の作品もそうだが、リベンジものは後半に一気にカタルシスが来るはずで、観続けてきた甲斐があったと思わせてほしい。
(文:斉藤貴志)