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窪田正孝インタビュー『刺激をもらったし悔しい思いもした』
圧倒的な強さを見せたかった
窪田 セリフがこれほど少ない役は、今までなかったと思います(笑)。なので、黒崎として表情のなかでちゃんと生きられたらなっていうのは感じていて。たとえば、車を運転しているシーンでは、運転しながらバックミラーでみんなのことを見ていたり、メンバーの一員としてともに捜査をしていく感じを出しました。しゃべらない役というと、いるようでいない人になりがちなので、それは避けたかったんです。
──役を通じて新しい表現方法は見つかりましたか?
窪田 表情で“遊ぶ”ということはやっていました。僕的にはやりすぎなくらいやっているんじゃないかなって思っていたんですけど、監督からはそれに関してはほとんど言われたことがなくて。しゃべらないけど感情を爆発させるときもあります。今の警察や政治のシステムに対しておかしいところは「おかしい」と言える人でもあって。演じていて、こういう存在の仕方もあるんだなって発見しました。黒崎は犯人逮捕というところで活かされるキャラクターでもあるので、それもちゃんと表現したいなと。
──逮捕シーンといえば、アクションですね。前回の取材ではドラマ『ケータイ捜査官7』(三池崇史監督)が俳優として大きな作品になったと話していましたが、アクションに関してはどうですか?
窪田 やってないよりはやっているに越したことはないですよね。ただ、作品やアクション指導の方によって求められるものがまったく違ったりするんです。アクションって一瞬なんですよね。その一瞬で静と動を見せなくてはならない。戦う前のお互いの間合いが「静」、そして「動」で一気にバチバチやって、最後に(黒崎の場合は刑事として犯人を)確保する。そういうメリハリも意識していました。
──なるほど。黒崎は武道、武術にも精通していますよね。
窪田 そうなんです。これまでに武道、武術の方面のアクションはあまりやったことがなくて。ただ殴り合う、蹴り合う、頭突きするというアクションが多かったので、今回は常に冷静にいられるよう心がけていました。アクション中であっても息ひとつ切れないくらいの圧倒的な強さを見せたかったんです。
2014年は再会の1年でもあった
窪田 見た目であきらかに強い人、というふうには見せたくなかったんです。それは僕が脚本からイメージした黒崎像。原作の映画化の場合、基本、原作は読まないんですね。原作あってこそだとは思いますが、ドラマはドラマ、映画は映画の脚本の良さがあると思うので。黒崎は体格的にはチームのみんなと変わらないんですが、闘い始めると強い。なんだコイツ!? って思ってもらえるような、そういうイメージを持っていました。だから筋トレとかはまったくしていないです。やったのは食事制限くらい。食べ過ぎると身体が重くて動かなくなるので(笑)。
──見た目はふつうなのに実はめちゃめちゃ強い、そのギャップが黒崎らしさなんですね。STのメンバーは全員ギャップがありますね。
窪田 そうですね。天才と呼ばれる人ほどすごく無器用である、というのを何かで読んだんですけど、STのメンバーもみんな個々の能力が強い。だから、彼らから“天才”の部分を取ったら本当にふつうの人なんだろうなって。能力が強すぎるからこそ反動みたいなものがあるんだと思うんです。そして、それぞれのその反動が各々のストーリーとしてドラマで描かれた。見た目で言ったら、山吹さん(三宅弘城)とか翠さん(芦名星)のあの格好はふつうじゃしないですよね(笑)。
──たしかに(笑)。そんな『ST』をはじめ、2014年は朝ドラ『花子とアン』、ドラマ『Nのために』に、映画『闇金ウシジマくんPart2』『ナニワ銭道』など……多忙な1年でしたね。
窪田 とはいっても……連ドラをやらせてもらっているときは、1日目撮影して3日空く、2日目撮影して1日空くという感じで、休みはちゃんとありました(笑)。僕はそれだとリズムがとれなくなっちゃうタイプなので、毎日現場にいる方が幸せです。あと、再会の1年でもありました。『ST』はドラマからの流れですし、NHKの朝ドラも以前ご一緒したチームでした。『Nのために』も以前、出させてもった『リミット』というドラマのチームだったので、過去にご一緒したスタッフとまた仕事ができるのは嬉しかったです。周りの方から成長したねと言ってもらえることもあったりして、それはそれで嬉しいんですけど、自分のスタンス──芝居に対するスタンス、撮影に臨むスタンスというのは変えずにいたいなと思うんです。
見ていてうらやましく感じた関係性
窪田 人を育てるのは人でしかないので、いくら勉強してもそれは知識であって経験ではない。人から何か言われたり、人と絡むことで挫折したり悔しい思いをして、成長していくんだと思うんです。だから、今回『ST』で同世代の人たちと共演させてもらうことで刺激をもらったし、いい意味で悔しい思いもした。それはものすごい財産です。変わらずにいたい、というのは芝居に対するものであって、人としてはいろいろな人と出会って成長していきたいです。あと、共演者もスタッフさんも自分よりも年下の方が増えてきたので、芝居についてどうしたらいいか聞かれる立場にもなってきました。そういうとき、ちゃんと答えられるというよりは、現場に堂々といられるようになりたいなと。人間的な成長が芝居につながると思うので。
──今回でいう“いい意味での悔しさ”とは?
窪田 年齢的には(藤原)竜也さんがいて、自分がいて、(岡田)将生という関係なんですけど、赤城と百合根、彼らのなかにできている友情というか、役者同士のいい付き合いをしているのを感じたんです。セリフの確認であったり、役を含めてお互いに頼りあっている関係性は見ていてうらやましくもありました。そこに乗っかりたい気持ちもありましたけれど、それでは黒崎っていう役が崩れてしまう。一歩引いて全体を見られるように、STのメンバーを後ろから包み込むようなポジションでいなきゃならないなって思いつつも、やっぱりうらやましいですね(笑)。
──葛藤ですね(笑)。そんな『映画ST 赤と白の捜査ファイル』が窪田さんにとっては2015年最初の公開作品となるわけなので、ぜひ2015年の抱負も聞きたいなと。
窪田 抱負とか目標とかあまり立てないんですよね(笑)。ただ、ひとつでも多くの作品に参加して、その作品に関わる人たちと出会いたい。一緒に仕事をすることによっていろいろな人を知りたい。そして、また別の作品で再会して仕事ができたら嬉しいですし。求められる限りがんばっていきたいです。
──人との出会いを大切にしている窪田さんならではの、人と仲良くなるコツはあるんでしょうか?
窪田 撮影現場の各部署の機材についてとか、いろいろ聞きたくなるんですよね。カチンコってどこで売っているんですか? とか、メイクのファンデーションのこととか。そういう話から入っていくことが多いです。何より、スタッフさん職人さんたちの仕事姿が好きなので、僕もいつかスタッフとして参加してみたい気持ちもあったりして。助監督をやれるくらいになりたいなっていう夢も持っていたりします(笑)。
(文:新谷里映/撮り下ろし写真:鈴木一なり)
映画ST 赤と白の捜査ファイル
監督:佐藤東弥
出演:藤原竜也 岡田将生 志田未来 芦名星 窪田正孝
【公式サイト(外部サイト)】
2015年1月10日全国公開
(C)2015 映画「ST赤と白の捜査ファイル」製作委員会