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(更新: ORICON NEWS

会田誠『“かつてエンターテインメントだった”アート〜楽しいを感じてほしい』

自らの作品を「アートの知識ゼロでもわかる」と断言する現代芸術家・会田誠。ポップなのに鋭くて、ふざけてるようで重厚。ルールって何だ?価値観って?生きるって?──観る者の感情をいやおうなく引き出しては、無秩序に揺さぶる。“おもしろいことが大好き!”な若者たちを強烈な引力で惹きつける現代アートの鬼才に迫るロングインタビュー!感情を激しく揺さぶる現代アートとは……エンターテインメント!?

自然なシチュエーションのなかで浮かんだイメージから

──少女、戦争、サラリーマンなど作品のモチーフに現代の日本社会を反映したものも多い会田さんですが、創作する上でのポリシーみたいなものはあるのでしょうか。
【会田】 僕の場合、イメージを最優先することですね。日常生活のなかでパッと思い浮かんだものを、あまり手を加えずに作品にするほうがいいと思っているんです。つまり、リサーチして勉強して考え抜いてから作るんじゃなくて、無理のない自然なシチュエーションのなかで浮かんだイメージから作る。直感的な、右脳的なほうが僕は得意で、じわじわと論理的に左脳で考えるより、そっちのほうが高レベルな結果が出るというタイプなんだと思います。

──イメージのきっかけとなる情報は、意識して集めたりされますか?
【会田】 これもあまり無理はしないんです。だから今みたいなネット社会では、最下層と言っていいくらい情報に疎いと思いますよ(笑)。コンピューター全般が苦手でWEBサイトもほとんど見ないですし、テレビも年々縁遠くなっています。とくに今年は展覧会(『会田誠展:天才でごめんなさい』2012年11月17日〜2013年3月31日)の準備のために特殊体制に入っているので、年明けてから今日までに、のべ2時間もテレビを観ていないんじゃないですかね。オリンピックだって、重量挙げにかわいい子がいるっていうウワサは聞いたけど、一瞬たりとも見ていないです(笑)。とりあえず今は世の中の動きを知る道具は、ツイッター1本。ジャーナリストとかをフォローしておけば、一応生きていけるんじゃないかなと思っていて。だから野田首相も、動いている姿をほとんど見たことないです(笑)。

──とくに今年は情報源を絞っているんですね(笑)。
【会田】 まあ、お絵かきに集中するためという理由が大きいんですけど。来年になったら変えようとは思っています(笑)。

案外まともなアートだと自分では思っています

──今回の展覧会では、会田さんのこれまでの作品を初めて一挙に見る若い世代も多くいると思います。どんなリアクションがあると思いますか?
【会田】 ツイッターなんかでは楽しみにしていますと言って下さる方は多いようですけど、そういう方は僕の“エログロ”な作品を期待しているみたいですね。逆に僕はそれはちょっと不安なんです。今回に関しては、エログロじゃないタイプの作品も多いんですよ。むしろ刺激に慣れていないくらいの方に、ちょうどいい刺激。サブカルの漫画家にはもっと鬼畜的な表現の人はいますからね、僕なんかはソフトなほうだと思いますよ。それに、女の子が描かれててエロかったりグロかったりする作品でも、一応どれもシリアスな動機が必ずベースにある。社会についてとかを真面目に考えるきっかけにならないかなあ、とも思っているので、案外まともなアートだと自分では思っています。

──何が描かれているのかというのは、とてもわかりやすいですよね。
【会田】 わかりやすさなら多少の自信はあるつもりです(笑)。もちろん難しいアートが悪いとは思いませんし、友人にも難しいアートをやっている人はいっぱいいますけど、僕自身はもともと小学生のときに手塚治虫さんみたいな漫画家になりたいと思ったことがスタート地点なんです。そこから基本的な方針は変わらずに美術家になりました。だからエンターテインメントといいますか、お客さんに楽しんでほしいという気持ちがありますね。“楽しい”のなかには、「ゲッ」という驚きや恐怖のような感情も含めてですけど、何らかの感情を観る人から引き出したいと考えています。それを引き出しやすくするために、少なくとも何を描いているのかは理解しやすいように、つまり“具象”はわかりやすくしています。サラリーマンがいっぱい死んでいるとかね(『灰色の山』)。

──確かに、美術に詳しくなくても純粋に楽しめます。
【会田】 美術史の専門知識がないとまったく意味不明とかいう作品は、めったにないです。たまにはありますけどね……。知識があると“なお”おもしろいということで、まったくなくてもわかるように作っているつもりです。

──それは、やはり広く一般へ向けて発信したいという意図からですか?
【会田】 そうですね。『みんなといっしょ』というシリーズがあるんですけど、自分は美術家だけど、飛びぬけて知性や知識があって、並外れて優れた人間だとは思っていない。実際にそうなんですけど、でも一方でそう低い人間だとも思っていなくて。要はみんなと一緒ぐらいの水準だと思っているんです。なので自分が楽しめるものは、多くの人も楽しめるだろうと。僕の作品が楽しめない人は、ひと握りの頭が良過ぎる人たち(笑)。そういう人たちにとっては僕の作品は「知性が足りない」って思われちゃうかもしれないけど。
(文:奥浜有冴)

⇒ 次のページへ【天才でごめんなさい……新作を語る】

[INFORMATION]

会田誠展:天才でごめんなさい

初期の代表作から最新作を含む約100点を通して、現代美術界の奇才・会田誠の全貌に迫る世界初の大規模個展。

会期:2012 年11月17日(土)〜 2013年3月31日(日)
会場:森美術館(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階)
お問合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
詳細は公式サイトへ

■会田誠さんからORICON STYLE読者へ!
“現代アート初心者向け”楽しみ方のアドバイス!!

「かなりタイプが異なる部屋が6つありますが、まず歩くだけでも楽しめると思います。おばけ屋敷にいるような感じで(笑)。僕の展覧会って、カップルには向かないんじゃないかと言われたりもするんですけど、遊園地のおばけ屋敷がカップルで楽しめるように、これもカップルに向いていますよ。怖い絵に出会ったら「きゃー!」とか言いながらしがみつけばいいんじゃないですか(笑)」

(C)AIDA Makoto Courtesy: Mizuma Art Gallery

映画情報

会田誠ドキュメンタリー映画『駄作の中にだけ俺がいる』

2009年夏、カメラは北京で制作中の会田に密着し、“生まれながらの芸術家”の生態と本音を赤裸々に、余すところなく映し出した。すべての常識と制約を取り払い、会田誠の「エロスと毒」の核心を描くのは、長年ドキュメンタリーを主戦場としてきた監督・渡辺正悟。1年に及ぶ撮影は、追い詰められた美術家の内面を徹底的に捉え、同時に、ユーモアに満ちた“奇才”の新たな一面にも触れている。同じ現代美術家である妻・岡田裕子のナレーションも相まって、映画は人間としての会田誠の本質的な魅力にさらに迫るものとなった。

ユーロスペースほか全国順次公開中 (C)ザ・ファクトリー

関連リンク

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