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(更新: ORICON NEWS

会田誠『“かつてエンターテインメントだった”アート〜楽しいを感じてほしい』

自らの作品を「アートの知識ゼロでもわかる」と断言する現代芸術家・会田誠。ポップなのに鋭くて、ふざけてるようで重厚。ルールって何だ?価値観って?生きるって?──観る者の感情をいやおうなく引き出しては、無秩序に揺さぶる。“おもしろいことが大好き!”な若者たちを強烈な引力で惹きつける現代アートの鬼才に迫るロングインタビュー!感情を激しく揺さぶる現代アートとは……エンターテインメント!?

100の“花”たちが乱れている『ジャンブル・オブ・100 フラワーズ』

──少女が作品によく登場する理由は、その世代の美しさや儚さをすくい上げようと?
【会田】 基本、そういうことが多いですね。作品ごとに少しずつ違いはあるんですが、『大山椒魚』という絵は、思春期の頃のヌルっとした体を描きたいという目標で作ったもの。『切腹女子高生』は、少女の無垢性や処女性というより、ちょっと汚れた渋谷のギャルたちの退廃的な雰囲気を、さらにちょっとひねって表現したような作品。時代的な風俗っていうんですかね、そういったものを描くのが目的でした。

──戦争を題材にする作品もあります。
【会田】 太平洋戦争をテーマにした『戦争画RETURNS』というシリーズを若い頃に作りましたけど、これもたいていみんなが知っているイメージだけで作っています。広島に原爆が落ちて原爆ドームが残っているとか(『題知らず(戦争画RETURNS)』)、性能はいいけど悪い点もあった、小型の零戦(戦闘機)が活躍して外国人を襲ったとか(『紐育空爆之図(にゅうようくくうばくのず)(戦争画RETURNS)』)、誰もが知ってる題材のみ。僕だけが勉強して知っている通なネタを美術作品で扱っても、説明が多く必要になりますので。本を書く人は、みんなが知っていることだけではダメでしょうけど、美術家というのはそれとは違う仕事だと考えています。

──今回の展覧会用に描いている『ジャンブル・オブ・100 フラワーズ』は?
【会田】 まだどうなるかわからないんですけど(10月中旬に取材)、少女の美というよりはもっとカラカラに乾いた、大量消費されるうつろな少女のイメージですかね。百花繚乱という日本語を、意味がおかしくなってもいいから直訳した英語をタイトルにしました。100の“花”たちが乱れているっていう。最終的にターゲットマークが入って、ゾンビを撃ち殺すゲームみたいになるんですけど、愛すべき対象というよりは、いくら撃ち殺しても生身の人間じゃないから問題ない、表面だけ作られたデータとしての少女、というイメージです。目がチカチカする心が落ち着かない絵に仕上がればいいなという目標はあります。

人類が死に絶えてカラスだけ…『電信柱、カラス、その他』

──もう1点制作中の『電信柱、カラス、その他』は?(※作品画像非公開)
【会田】 大災害が起きて人類が死に絶えて、カラスだけが生き残っているということを、ほのめかすような絵。そんなに残酷な絵じゃないですけど。

──カラスを選んだ理由とは。
【会田】 そもそもの発想はすごく古いんです。学生時代に、日本の古い美術の描き方を用いて現代的なものを作ろうと考えて、ゴキブリを描いたことがあったんですけど(『雲古蜚●(虫へんに廉)』)、それを作った後に「次はカラスを描きたいな」と思ったんですよね。僕は新潟出身で茶羽のやつしか見たことがなかった。で、東京で初めてあの黒々としたゴキブリと会って、恐怖を覚えたんです(笑)。カラスも東京のやつは巨大で凶悪そうだなと思っていました。海外と比べても、東京のカラスは世界ナンバーワンで頭も良さそう、東京の象徴のようだと感じていて。まあ、Chim↑Pomも使っていますけどね。「やられた、描きたかったな〜」って思っていました(笑)。まあでも、ちがう雰囲気でやるのでいいと思うんですけど。

──電信柱は?
【会田】 これも学生の頃から好きで描いていたんです。でもやっぱり山口晃くんというアーティストが専門家になっちゃって。僕も「電信柱を描きたかったのにな」と思いつつ(笑)。まあ、同時代の作者というのはいろいろかぶったりするのは当然だし、まあいっかと思いながら描いてます。

──Chim↑Pomさんのお話が出ましたが、彼らは会田さんとはつながりの深い間柄ですよね。講師として教えていたことがあったりと。
【会田】 なんていうんですかね、“飲み友達+α”というような仲ですかね(笑)。たまに師弟関係と言われることはあるけど、それは誤解です。まるで作風も違いますしね。
(文:奥浜有冴)

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[INFORMATION]

会田誠展:天才でごめんなさい

初期の代表作から最新作を含む約100点を通して、現代美術界の奇才・会田誠の全貌に迫る世界初の大規模個展。

会期:2012 年11月17日(土)〜 2013年3月31日(日)
会場:森美術館(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階)
お問合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
詳細は公式サイトへ

■会田誠さんからORICON STYLE読者へ!
“現代アート初心者向け”楽しみ方のアドバイス!!

「かなりタイプが異なる部屋が6つありますが、まず歩くだけでも楽しめると思います。おばけ屋敷にいるような感じで(笑)。僕の展覧会って、カップルには向かないんじゃないかと言われたりもするんですけど、遊園地のおばけ屋敷がカップルで楽しめるように、これもカップルに向いていますよ。怖い絵に出会ったら「きゃー!」とか言いながらしがみつけばいいんじゃないですか(笑)」

(C)AIDA Makoto Courtesy: Mizuma Art Gallery

映画情報

会田誠ドキュメンタリー映画『駄作の中にだけ俺がいる』

2009年夏、カメラは北京で制作中の会田に密着し、“生まれながらの芸術家”の生態と本音を赤裸々に、余すところなく映し出した。すべての常識と制約を取り払い、会田誠の「エロスと毒」の核心を描くのは、長年ドキュメンタリーを主戦場としてきた監督・渡辺正悟。1年に及ぶ撮影は、追い詰められた美術家の内面を徹底的に捉え、同時に、ユーモアに満ちた“奇才”の新たな一面にも触れている。同じ現代美術家である妻・岡田裕子のナレーションも相まって、映画は人間としての会田誠の本質的な魅力にさらに迫るものとなった。


ユーロスペースほか全国順次公開中 (C)ザ・ファクトリー

関連リンク

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