公開中の映画『ノルウェイの森』のトラン・アン・ユン監督がこのほどORICON STYLEのインタビューに応じ、日本で映画を1本作り上げたことに「大満足しています」と心境を語った。村上春樹という日本の著名作家のベストセラー小説を原作にした同作に対して、矢面に立ち、批判と賞賛を受け止めているトラン監督。「また機会があれば、別の作品を日本で撮りたい。テーマも頭の中にあるし、シナリオもちょっと書き始めています」と、その語り口はとても優しく穏やかだった。
トラン監督は1962年12月23日、ベトナム生まれ。75年にベトナム戦争の戦火を逃れ、一家でフランスに亡命。フランスの映画学校に学び、93年長編第1作『青いパパイヤの香り』で第46回カンヌ国際映画祭カメラドール賞(最優秀新人賞)を受賞。第2作『シクロ』(1995)は第52回ベネチア国際映画祭で金獅子賞(グランプリ)を獲得。官能的な映像美と哲学的なストーリーテリングが独特な、世界が注目する映画監督の一人である。
今回、世界的ベストセラーを原作に、日本人キャストを起用し、日本で撮影を敢行した。トラン監督は「自分のしたいことを推し進めるためには、闘いも辞さない」と、映画監督として強い信念を持つ。
「自分が作りたいもの、自分の頭の中にあることを実現するために、どれだけの忍耐が必要で、どれだけの説得が必要で、どれだけの闘いが必要で、どれだけのお金が必要か。今回、日本で仕事をともにした多くの方々は、私から学んだこともあったと思います」
日本での制作に際し、どれほどの困難があったか。それに敢えて立ち向かい、乗り越えてまで、作りたかったのがこの『ノルウェイの森』だった。フランス語に翻訳された小説を読んだ時から、「映画にしたい」と思った。
「小説を読んで、理解出来なかった人のほうが多かったのではないでしょうか。登場人物たちの内面の中で起きている感情のうねりみたいなものは、小説からいかようにも読み取ることができるし、だからこそ理解しにくいとも言える。映画は2時間ちょっとの長さなんですが、自分が盛り込んだのはワタナベの心の中を追った、ひとつの明確な筋です。その部分は本よりも明確に描かれていると思います」
ワタナベが最初の恋愛の対象(直子)と出会い、その対象を失う。しかも、直子に対するいろいろな感情が、ワタナベ自身もわかっていない状態の中で、すでにワタナベはほかの女性(緑)にもひかれていく。ワタナベは直子を救うことが自分の義務のようにも感じていて、救いたいと思っているのに、どうしていいかわからないでいるうちに、直子を失ってしまう。ワタナベは直子を救えなかった罪悪感に苛まれるが、レイコと関係を持つことで癒される。それは、直子の代わりにレイコを救うことができたと思えたから。そして、ワタナベは緑に「愛している」と言えるようになり、生きていくのだ。
映画を観た人には、さまざまな感想や感情が沸き起こっているだろう。それに対して、トラン監督は「映画とはひとつの言語だと思う。言語は語らなければいけない。映画で語るということは、表現するということ。表現するということは、観賞者に何らかの感情を喚起するような挑発をすること。映画の中でエモーショナルなフレーズを創り出し、挑発することが私の仕事だし、義務だと思っています」と受けて立つ。
「芸術というのは残酷なものだと思う。鑑賞者の気持ちや考え方がどうであれ、芸術というのはその人の中にどんどん入り込んでいくものだから。それはとてもアグレッシブだと思う。その点において、自分が作ったものはアグレッシブだと思います」。
温かいまなざしの中に時折浮かぶ、静かなる闘志。トラン監督自身も「自分の中にはジギルとハイドのような二面性があると思う」という。「シナリオを書いている時なんかは、すごく弱々しい部分がたくさん出ていると思う。そういう時期に、道で人にぶつかったりすると、すぐにごめんなさいといったりね(笑)。でも、いざ撮影に入ると、大きな声もあげるし、わがままにもなるし、すごく自分が強気になっていくのがわかっているんです」。
トラン監督は、12月13日に東京・青山で開催されたライブトークイベント『劇的3時間SHOW』にも出演。3時間にわたって自身の映画づくりにおける考え方や芸術性について語った。入場無料の同イベントには、368人の聴衆が集まり、真剣なまなざしで耳を傾けていた。
「小説を映画化することに関して、細かいところまで説明するには時間もかかるし、現実的には出来ないが、自分の脚色に対する考え方を話せたのはとても有意義でした。聴衆者の質問に答えながら、自分の考えもまた、頭の中でよりきちんと整理整頓された感じがしました。たくさんの人の前で、3時間も話をするというのは、自分にとっても初めて。のちのち、自分にとっても重要な経験として戻ってくるような気がします」と感想を述べていた。
同イベントはJAPAN国際コンテンツフェスティバル(コ・フェスタ)実行委員会が主催するイベントで、コンテンツ業界のトップで活躍するプロフェッショナルが、自身の成功につながった技術や経験、クリエイティビティ(創造性)やコンテンツ観などを3時間たっぷりと、自由に表現するライブトークイベント。次世代のコンテンツ産業を担う人材の誕生、育成に貢献することを目的に2007年から実施されているもので、今年が4回目。2011年3月までに全5回の開催を予定している(入場無料、公式HPで事前申込みが必要、申込み多数の場合は抽選)。第1回のトラン監督に続き、第2回は是枝裕和監督と仏女優ジュリエット・ビノシュのトークセッション(1月28日開催、観覧応募受付中)、第3回は『悲情城市』『珈琲時光』のホウ・シャオシェン監督の出演が決まっている。
【動画】映画『ノルウェイの森』予告編⇒
【特集】映画『ノルウェイの森』松山ケンイチインタビュー⇒
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トラン監督は1962年12月23日、ベトナム生まれ。75年にベトナム戦争の戦火を逃れ、一家でフランスに亡命。フランスの映画学校に学び、93年長編第1作『青いパパイヤの香り』で第46回カンヌ国際映画祭カメラドール賞(最優秀新人賞)を受賞。第2作『シクロ』(1995)は第52回ベネチア国際映画祭で金獅子賞(グランプリ)を獲得。官能的な映像美と哲学的なストーリーテリングが独特な、世界が注目する映画監督の一人である。
「自分が作りたいもの、自分の頭の中にあることを実現するために、どれだけの忍耐が必要で、どれだけの説得が必要で、どれだけの闘いが必要で、どれだけのお金が必要か。今回、日本で仕事をともにした多くの方々は、私から学んだこともあったと思います」
日本での制作に際し、どれほどの困難があったか。それに敢えて立ち向かい、乗り越えてまで、作りたかったのがこの『ノルウェイの森』だった。フランス語に翻訳された小説を読んだ時から、「映画にしたい」と思った。
「小説を読んで、理解出来なかった人のほうが多かったのではないでしょうか。登場人物たちの内面の中で起きている感情のうねりみたいなものは、小説からいかようにも読み取ることができるし、だからこそ理解しにくいとも言える。映画は2時間ちょっとの長さなんですが、自分が盛り込んだのはワタナベの心の中を追った、ひとつの明確な筋です。その部分は本よりも明確に描かれていると思います」
ワタナベが最初の恋愛の対象(直子)と出会い、その対象を失う。しかも、直子に対するいろいろな感情が、ワタナベ自身もわかっていない状態の中で、すでにワタナベはほかの女性(緑)にもひかれていく。ワタナベは直子を救うことが自分の義務のようにも感じていて、救いたいと思っているのに、どうしていいかわからないでいるうちに、直子を失ってしまう。ワタナベは直子を救えなかった罪悪感に苛まれるが、レイコと関係を持つことで癒される。それは、直子の代わりにレイコを救うことができたと思えたから。そして、ワタナベは緑に「愛している」と言えるようになり、生きていくのだ。
映画を観た人には、さまざまな感想や感情が沸き起こっているだろう。それに対して、トラン監督は「映画とはひとつの言語だと思う。言語は語らなければいけない。映画で語るということは、表現するということ。表現するということは、観賞者に何らかの感情を喚起するような挑発をすること。映画の中でエモーショナルなフレーズを創り出し、挑発することが私の仕事だし、義務だと思っています」と受けて立つ。
「芸術というのは残酷なものだと思う。鑑賞者の気持ちや考え方がどうであれ、芸術というのはその人の中にどんどん入り込んでいくものだから。それはとてもアグレッシブだと思う。その点において、自分が作ったものはアグレッシブだと思います」。
温かいまなざしの中に時折浮かぶ、静かなる闘志。トラン監督自身も「自分の中にはジギルとハイドのような二面性があると思う」という。「シナリオを書いている時なんかは、すごく弱々しい部分がたくさん出ていると思う。そういう時期に、道で人にぶつかったりすると、すぐにごめんなさいといったりね(笑)。でも、いざ撮影に入ると、大きな声もあげるし、わがままにもなるし、すごく自分が強気になっていくのがわかっているんです」。
トラン監督は、12月13日に東京・青山で開催されたライブトークイベント『劇的3時間SHOW』にも出演。3時間にわたって自身の映画づくりにおける考え方や芸術性について語った。入場無料の同イベントには、368人の聴衆が集まり、真剣なまなざしで耳を傾けていた。
「小説を映画化することに関して、細かいところまで説明するには時間もかかるし、現実的には出来ないが、自分の脚色に対する考え方を話せたのはとても有意義でした。聴衆者の質問に答えながら、自分の考えもまた、頭の中でよりきちんと整理整頓された感じがしました。たくさんの人の前で、3時間も話をするというのは、自分にとっても初めて。のちのち、自分にとっても重要な経験として戻ってくるような気がします」と感想を述べていた。
同イベントはJAPAN国際コンテンツフェスティバル(コ・フェスタ)実行委員会が主催するイベントで、コンテンツ業界のトップで活躍するプロフェッショナルが、自身の成功につながった技術や経験、クリエイティビティ(創造性)やコンテンツ観などを3時間たっぷりと、自由に表現するライブトークイベント。次世代のコンテンツ産業を担う人材の誕生、育成に貢献することを目的に2007年から実施されているもので、今年が4回目。2011年3月までに全5回の開催を予定している(入場無料、公式HPで事前申込みが必要、申込み多数の場合は抽選)。第1回のトラン監督に続き、第2回は是枝裕和監督と仏女優ジュリエット・ビノシュのトークセッション(1月28日開催、観覧応募受付中)、第3回は『悲情城市』『珈琲時光』のホウ・シャオシェン監督の出演が決まっている。
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2010/12/16