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活動屋・木村大作、まだまだ吠える!



 日本映画界を代表する活動屋・木村大作が映画人生50年、キャメラマンとして50本目の節目で初監督した映画『劔岳 点の記』。明治40年に「日本地図完成」という使命を果たすため、当時「針の山」とも「死の山」とも云われてきた前人未到の山・劔岳に、命懸けで挑んだ男たちの物語。小説家で気象学者でもある新田次郎の同名小説を映画化した。


(C)ORICON DD inc. 

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 木村監督は標高2999メートルの劔岳・立山連峰各所で、体感温度氷点下40度になる時期もある過酷な条件下、CG・空撮に頼らず2年をかけロケを敢行。前人未到のスケールで撮影した同作は、今年6月に公開され、興行収入26億円、観客動員240万人突破するヒットを記録。さまざまな意味で映画史に残る1作となった。


 映画公開に向けては木村監督自ら自分の車を運転し、47都道府県を訪れ試写会を開き、「映画は劇場で観ろ、DVDじゃダメだ」と訴えてきたが、12月11日に同作のDVD&BDが発売されることになり、「今度はDVDで観ろ、ブルーレイで観ろ、レンタルで借りろと言いたいわけ」。1人でも多くの人に映画を観てもらいたい――木村監督の叫びをORICON STYLEが聞いた。


◆原作にないのは全部、僕の台詞だよ


映画『劔岳 点の記』のワンシーン (C)2009「劔岳 点の記」製作委員会
——CGは一切なしというのが信じられないほど、神懸かり的な映像が満載でした。撮影期間2年、山岳ロケだけで200日以上を費やした撮影で印象に残っていることは?


【木村大作】 たくさんあるけど、地元の人が「15年に1度観られるかどうか」という富士山の五合目までがくっきり見えているカットとかね。立山連峰・雄山に登って撮影したんだけど、八合目あたりから上が見えることや、ガスでふわっと見えることはしょっちゅうあるらしいんだが、あんなにクリアに見えるのは本当に珍しいって。撮影隊の頑張りでとれたということですよ。


——キャッチコピーにもなっている「誰かが行かねば、道はできない」という台詞に相当な思い入れがあるそうですが…。



『劔岳 点の記』のワンシーン (C)2009「劔岳 点の記」製作委員会
【木村】  この台詞は新田さんの原作にはなくて、私がいつも思っていることをセリフにした。種を明かせば、魯迅という中国の小説家・詩人が残した「地上にはもともと道はない、多くの人が歩いた後に道が出来る」という言葉がネタ元なんだけど、その通りだと思うしね。どんなことにも、先頭を切って行く人が必要なんだよ。そういう意味で今回の映画作りは、前人未到でも何でもなくて、過去に例がある。『八甲田山』(1977年)の撮影がそうだった。主演の高倉健さんと北大路欣也さんが実際に本当の場所に行って3年かけて撮影した。ただし標高は500〜600mだがね。

 実は、そういう経験者が日本の映画界から消えて行きそうなんだよ。最近の映画はCGで何だって簡単に出来ちゃうからさ。ただ、俺が良く言っているのは、これも映画の台詞に使ったけど、「美しさは厳しさの中にしかない」ってこと。楽なところにもきれいなものはあるよ。でも、厳しさを伴わない美しさはないと思うんだ。この映画の台詞で新田さんの原作にないのは全部、僕の台詞だよ。


——俳優・浅野忠信松田龍平らが扮した測量隊の姿は、映画の撮影隊と置き換えてみることもできそうですね。


【木村】 この映画は仕事とはどうあるべきか、ということを問いかける映画でもあるんだよな。今の人たちは与えられた仕事に黙々と取り組むことを軽視していないか? その与えられた仕事というのが、過酷な大自然の中で行われるものだとしたら、映像としてすごいものになるだろうと思って、この題材を選んだんだ。我々の映画作りも同じだ。測量は忍耐、撮影も忍耐、どんな仕事にも忍耐すべきことがあるよ。みんなに当てはまることなんだよ。


◆松田龍平さんとは何度も話し合って、たいてい俺が負けていた


『劔岳 点の記』のワンシーン (C)2009「劔岳 点の記」製作委員会
——映画人の先輩として、若いスタッフに何か残したいという想いもあったのですか?


【木村】 強要するつもりはないけど、残ったと思いますよ。スタッフを雇う時に、この映画は相当キツいぞ、撮影ではないんだ、これは苦行だと。そういう気持ちにならないとこの映画はやれないと念を押した。ただ、これを通り過ぎたら映画の現場で恐い物はなくなると信じていた。俺も『八甲田山』という映画を通り過ぎて今があると思っている。だから、言葉であーしろ、こーしろと教えるよりも、体験することが大事なんだ。その時はすぐに気付かなくても、ある年齢になると、「あの時の経験が生きているな」って思い当たることがあるんだよ。本当だよ。俺がそうだったんだから。


——そのような木村監督の想いややり方を、すべてのスタッフ・キャストに浸透させるのも大変だったのでは?


【木村】 それは無理ですよ。だから、俺とスタッフ・キャストの間に入っていた助監督が大変だったよね。その助監督が「あの人は絶対変わらない人だから、自分を変えるしかありません」と、俳優たちにも言っていたからね(笑)。



『劔岳 点の記』のワンシーン (C)2009「劔岳 点の記」製作委員会
——出演者とも決して円満にはいかなかった?


【木村】 そういう意味では松田龍平さんのことが思い出深い。彼は撮影時、23歳くらいで、俺にとっては孫みたいな年齢。あの松田優作さんの息子という意識もあった。そういう先入観を差し引いても、彼には役者としての鋭さを感じた。現場で何度も彼と話し合っていたけど、たいてい俺が負けていたな(笑)。松田さんが演じた生田伸という役は、彼とほぼ同じ年頃の青年。今も昔も変わらない若者らしい感情をいかに表現するか、率直に意見を言ってきた。結果的に俺の演出より、あいつがキャメラの前でやってみせた芝居、仕草、たたずまいのほうがいいと思うことばかりだった。そういう俳優をキャスティングした俺は素晴らしいと思ったよ(笑)。


——主演の浅野忠信さんとはどうでしたか?


【木村】 浅野さんはね、この映画で一緒に生活している間、色紙にサインする時に「自由」という言葉を必ず書き添えていたんだよね。俺も、映画界で自由に生きてきたから。周囲と衝突したり、問題を起こしたりしてきたけど、今日まで生き残っている。俺は、勝手に浅野さんもそういうタイプなのかなって思っていたよ。それで、浅野さんが色紙に書く「自由」とはどういうことなのか、2年間考え続けて出てきた言葉があるんですよ。

「何者にもとらわれず、何者もおそれず、心のままに」

 物語の終盤に、この映画の答えが欲しいと思っていたときだった。浅野さんも「いいですね」と言ってくれたので「自分の心の声として、この台詞を言ってくれないか」と言って撮ったんだよ。DVDで、しっかり観て欲しいな。



『劔岳 点の記』のワンシーン (C)2009「劔岳 点の記」製作委員会
——映画人生を懸けて撮った映画『劔岳 点の記』の次は?


【木村】 命懸けでこの映画を作ると言って、その通りにしたよ。それで、映画界とおさらばしようと思っていた。でも、今はちょっと違う考えが頭の中にあるんだけど(笑)。そんな自分が少し嫌だなって思うところもあるんだけど。「映画人生、最初で最後、一度きりの監督作品、これで映画界とおさらば」と方々で言っていたわけだから、これは潔くしなきゃいけないという気持ちがある一方で、来年から何か仕事しないと生活が困っちゃうし、アニメの宮崎駿監督も引退宣言撤回しているし…なんて、自分にいちいち理屈を付けて次のことを考えているんだよ(笑)。そういう意味では俺も人間だよ。


——撮れる限り作品を作って下さい。


【木村】 撮れる限りって、もう70歳なんだから(笑)。そんなには撮れないだろうけど、もう1本くらいはいけるかなって思っているところはあるな。アイデアは満杯だよ。満杯なんだけど、映画作りはそんなに簡単なものではないからね。『劔岳 点の記』の時も、出資を断った会社は山ほどあったからね。こういうことを言っているから、嫌われるんだな(笑)。


木村大作(きむら・だいさく)

1939 年生まれ。18歳で最初に付いた現場が黒澤明作品。『隠し砦の三悪人』『悪 い奴ほどよく眠る』ほか3作品で撮影助手を務め、黒澤組の映画作りを肌で学び、現在へと続く妥協を許さない映像へのこだわりが根付く。以後、『野獣狩り』で初めて撮影監督を務め、49作品に携わる。50作品目の『劔岳 点の記』が初監督作品となる。
『劔岳 点の記』

(C)2009「劔岳 点の記」製作委員会

【ストーリー】
 陸軍参謀本部陸地測量部の柴崎芳太郎(浅野忠信)に、日本地図最後の空白地点を埋めるため、「陸軍の威信にかけて、劒岳の初登頂と測量を果たせ」という厳命が下った。
 妻・葉津よ(宮崎あおい)の励ましを受け、柴崎は前任の測量手・古田盛作(役所広司)から紹介された宇治長次郎(香川照之)の案内で、測夫・生田 信(松田龍平)らを加えた測量隊総勢7人で劒岳に挑む。
 一方、創立間もない日本山岳会の小島烏水(仲村トオル)らも最新の登山道具を揃え、劒岳山頂を目指していた。

監督・撮影:木村大作
原作:新田次郎『劔岳点の記』(文春文庫刊)
出演:浅野忠信 香川照之 松田龍平 仲村トオル
宮崎あおい 役所広司ほか
2009 年12 月11 日(金) DVD レンタル開始
レンタル版限定・映像特典: 浅野忠信×香川照之インタビュー
販売元:東映株式会社 発売元:東映ビデオ株式会社

公式サイト

※セルDVD&BD3バージョンはポニーキャニオンより発売


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  • 『劔岳 点の記』 12 月11 日(金)より DVD レンタル開始、ポニーキャニオンよりDVD&BD発売 

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