• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
オリコンニュース

IFPI会長が語る世界のレコード産業

IFPI(国際レコード産業連盟)会長兼CEOが語る世界のレコード産業
世界を席捲するデジタルミュージックの今後


 IFPIが発表した“デジタル・ミュージック・レポート2007”でも、世界のレコード産業における音楽配信ビジネスの躍進ぶりが伝えられたが、今年に入ってからは、そのIFPI構成メンバーでもあるEMIがDRMフリーでの音楽配信開始を発表するなど、その中身は、今後もドラスティックな変化を続けそうだ。レポートの中で「2010年にはレコード市場の25%を占める」と予測された音楽配信のかたちは、将来的にはどんなものになるのだろうか。2月に発表された米アップル、スティーブ・ジョブズ氏のステートメントに始まったDRMフリーでの配信に関する議論の中でも、積極的な発言を行ってきたIFPI会長・ケネディ氏に聞いた。

興味深く見守っているEMIのDRMフリーでの配信

 

ジョン・ケネディさん IFPI(国際レコード産業連盟)会長兼CEO

―― IFPI会長への就任以来、毎年欠かさずに来日されていますね。

ケネディ:日本は世界第2位の音楽市場で、かつ健全性という点で、世界で最も「強い」市場であると思います。その強さが今後もずっと続くことを強く願っていることの表れであると受け止めてください。

―― 海賊行為が比較的少ない?

ケネディ:世界の音楽市場は本当に無数の問題を抱えています。日本の場合はそれら他の国々が抱えているものほど深刻な状況にはないという点で、より健全だと思いますよ。

―― IFPIが毎年発表しているレポートの最新版である“デジタル・ミュージック・レポート2007”では、06年の全世界の音楽市場のうち、音楽配信によるものが10%に達したとレポートされていましたが、以前のインタビューでは「2010年には25%になる」と予測していましたね。

ケネディ:今は、このペースだと、2010年に30%ほどになるかもしれないとも考えています。ただ、これは必ずしも良いことではなく、CDなどの落ち込みのペースも含めた相対的な数値として、以前の予測を修正する必要があるかもしれないということを意味します。これはホーリー・グレイル(聖杯=見果てぬ夢の意)かもしれないとも思うんですが、パッケージの減少を配信の増加が補うことができるレベルになる必要があり、世界レベルで見た場合、残念ながら、これはまだ実現できていません。

―― 同じくレポートでは「07年は世界的に携帯電話向け配信について画期的な年になる」としていますが、その携帯電話向け配信が突出している日本の音楽配信市場についてはどのように見ていますか。

ケネディ:今後、携帯向けの音楽配信が爆発的に増加していくことは明らかで、音楽の歴史の中でもそれが一つのトピックとして捉えられるほどのことになるでしょう。しかし、良いニュースには必ず悪いニュースがついてまわるもので、今度は携帯電話に向けた海賊行為がはびこってきました。日本でもそうですね。それと、やはり興味深いのは、音楽の消費のされ方というのが、国によってかなり違うということです。

 イタリアや日本の消費者は、おっしゃるように携帯電話で音楽を聴くという傾向が強い。特に日本の消費者の動向というのは、今後世界でどのようなことが起こるのか、占えるようなものになっていると思います。音楽の聴き方は、今後、移動しながら聴くというかたちにどんどんシフトしていくでしょう。そして、将来は全世界の音楽配信市場の50%ほどを携帯電話向けが占めるようになると見ています。おそらく携帯電話向けがこのまま伸びつつ、どこかの時点でPC向けが減少に転じるというかたちになるのではないかと思います。

―― 音楽の聴き方にも国民性が反映される?

ケネディ:そうですね。イタリアと日本と言いましたが、より正確に言うと地中海沿岸の欧州各国と日本、東南アジア地域で携帯向けが強いという傾向があります。そして中国も携帯電話そのものの普及が目覚しいですね。

―― 一方で、特に携帯電話を通じた音楽の聴かれ方を見ていると、音楽そのものの扱われ方がより軽いものになってしまっているようにも感じられますが。

ケネディ:音楽がどのように使われるかは、我々がコントロールすべきものではないのでなんとも言えませんが、我々の願いというのは、どんな使われ方であろうとも、入手元はあくまで合法的なサービスであるべきということです。例えば、私自身も数年前なら、フルコーラスではなく、音源の一部を切り出して販売する着うたなどのサービスについて、ナーバスな感想を持ったことでしょう。しかし、今はそれすらも現代における音楽の利用のしかたの一つなんだと納得し、むしろ誇らしいことだとさえ感じています。

―― 今年、スティーブ・ジョブズ氏によるいわゆるDRMフリー宣言のあと、ケネディさん自身がそれに対するコメントを発表し、さらにその後、EMIがDRMフリーでより高音質な音源配信の開始を発表しました(*1)。この一連の流れについて、どのように見ていますか。

ケネディ:興味深い展開だと思っています。もちろん、EMIの人たちも優秀な方々ですから、熟考なしに今回の決定を下したとも思えません。様々なマーケットリサーチを行い、結果について何通りもの予測をし、検討したでしょう。その結果としての、DRMフリーでの配信開始という決定だったんだと思いますが、私自身はそれが最善の方法だという確信を持てずにいます。数ヶ月後には結果が出るでしょう。これは実社会、実生活の中での一つの大きな実験でもあるんだと思います。

―― 2月にケネディさんが発表したコメントでは「セキュリティを保った上で互換性を持たせることはそれほど困難なことではない」と述べていましたね。

ケネディ:そうです。今もその考えに変わりはありませんし、他のメジャーも同じ考えです。おそらく、もう数ヶ月経つ頃には、現在のものよりずっと互換性に優れた方法についての別の試みもなされるはずです。これもまた大いなる実験ですね。ジョブズ氏は今年2月に「互換性を確保するためにDRMを撤廃すべき」と述べました。しかし、我々は互換性とDRMは共存し得るものだと考えているわけですが、DRMフリーのものと、部分的にDRMが施されているものとが市場に共存し、両者がどれほど成功するのか比較する機会が、今まさに生まれたんだということになると思いますよ。

―― ワーナーミュージックのエドガー・ブロンフマン・ジュニア氏も互換性とDRMは共存させるべきとする発言を改めてしていたようですが、EMI以外のメジャーレーベルで、EMI同様、DRMフリーの配信を始めるところも出てくると見ていますか。

ケネディ:それは、私からは何とも言えませんが(笑)、少なくともごく近々にはないんじゃないかと思います。今はみな、EMIの試みを見守っている状態で、長い目で見た時にどうすれば一番良いのかと検討した上で決定を下すでしょう。1月の段階で、我々はメンバーとなっているレーベルのどこかがDRMフリーでの配信を始めるという予測はしていました。ただ、その場合はカタログの一部とか、あるいは新譜のみといったかたちだろうと考えていたわけで、必ずしも予測通りにことが運ぶわけではないということになりますが。

―― EMIのDRMフリーに関する会見の席上、ジョブズ氏は「違法行為に対するには、合法なものをより便利に入手できるようにするのが最上の策」と述べていましたが。

ケネディ:彼は非常に賢明な人物ですから、将来に向けての明確なビジョンを持っていることは確かだと思います。ただ、こう考えればわかり易いですが、そのジョブズ氏もアップルのソフトウェアについてはそのようなアプローチをしていませんね。だから、彼が心からそれを信じて述べているのかどうかについても、今後わかるんじゃないかと思います。もっとはっきり言えば、ことこれについては、彼は他者に説いていることを我が身に当てはめてはいないという印象を持っています。

―― たしかに質疑に答えるかたちで、音楽とディズニーなどの映画とでは話が別だとも発言していました。

ケネディ:実は私もその会見に出席してこの耳で聞いていましたよ(笑)。

―― もう一つ、ジョブズ氏は「CDというもの自体、そもそもDRMフリーである」と発言していましたが、翻って日本の場合、そのDRMフリーのメディアであるCDがレンタルされるという独得なビジネスがあります。

ケネディ:たしかにCDは保護されたフォーマットではなかったので、レーベル側としてはこれまでプロテクトのための方策を模索してきました。残念ながら、それらは上手くいってはいませんが、だからと言って、あきらめなければならないことにはならないと思います。それと、メジャーレーベルの役員だった時、日本にレンタルCDというサービスがあるということを聞いた私はとてもナーバスな気分になったものです。ただ、率直に言って、その時点の私は日本のことについてほとんど理解していませんでした。しかし、今は、日本人が信頼できる人々だと理解できていますし、CDをレンタルした後、気に入ればきちんと購入していただけるんだとも信じています。だから、これまでのある期間はうまくいっていたんだと思いますよ。

 しかし、デジタルの時代には状況も変わりますし、今の日本におけるコピーの問題に関する責任のかなりの部分は、やはりそこにあるとも思います。多くの人が多くのデジタルコピーを行うという状況が生まれていて、例えば、邦楽作品など最初の売上は好調でも、レンタル禁止期間が経過すると売上がガクっと落ちるといった傾向が見られますね。これは偶然ではないでしょう。ですから、この貸与権にまつわる仕組み自体、変えるべき時期にきていると思います。ただ、これはあくまで私個人の考え。しかし、少なくとも、いわゆる海外メジャーのエグゼクティブの考え方とは一致していると思いますよ。

著作権だけでなく、レコードの権利保護期間の延長も

―― 日本では昨年、IPマルチキャスト放送におけるレコード製作者と実演家の権利が実質的に一部切り下げられましたし、ネット上の掲示板などではレコード会社が常に悪役になっているムードさえあり、レコード会社受難の時代とも言えませんか。

ケネディ:たしかに奇妙なことですが、日本だけでなく世界的にレコード会社が悪役扱いされることが多くなりました。一般のリスナーからだけではなく、他の産業からということも含めて。しかし、同時に、良い音楽をもっと作って欲しいという期待も持たれているし、我々も理にかなった条件で提供したいと思っている。音楽産業ほどR&D(Research and Development=研究・開発)に投資をしている産業はありません。ジョブズ氏はほとんど四半期ごとに新商品を投入することで賞賛されていますが、我々は毎週新譜をリリースし、ニューアーティストを世に送り出しています。

 音楽産業がパンチングマシーンのように扱われるというのも、ある段階ではしかたないでしょう。しかし、我々を悪役扱いする他の産業も、我々の音楽は欲していて、MP3にもデジタルテレビにもクラブにもレストランにも音楽が必要です。我々も喜んでそこに音楽を提供しようと思っているわけですが、現状では悪循環も起きています。投資しても回収できなければ、さらなる投資は出来ないわけで、ニューアーティストは生み出せなくなる。こうした循環が成立しなければ音楽は作られなくなってしまいます。

―― そのサイクルを維持するために、海賊行為への対策も必要ですが、リスナーや他の産業からの理解を促すことがそれと同じくらい重要な時代になっている気がします。

ケネディ:そうですね。そのためにはとにかく教育し、メッセージを発することだと思います。今回も日本の関連省庁を訪問しましたが、まさにその二つが大きなテーマであるという話をしてきました。何が正しいのかということを、理解すべき人が理解することが非常に重要です。インターネットコミュニティにおいて、DRMを施さないということは、人々が信用されているということを意味します。例えば、ファイル交換ユーザーの言い分の一つに、「合法的なオンラインの音楽にはDRMが施されているからこそ、ファイル交換の方を利用するんだ」というものがありますが、それに即して見れば、EMIのDRMフリー音源が本当にそれらで利用されないのかどうかは非常に興味深いと思いますし、見定めたいと思います。

―― 日本では特に昨年から今年にかけて著作権保護期間の延長についての議論が高まっています。

ケネディ:実際に今、日本より保護期間の長い国はたくさんあります。米国の場合、著作権は著作者の死後70年間で、レコードの保護期間は発行後95年(*2)。だから、我々としても著作権だけでなく、レコードの保護期間も延長してほしいと日本政府にはたらきかけています。

―― 英国でも昨年、レコードと実演に関する保護期間延長の動きが見られ、いったん終息しているようですね。

ケネディ:まだ終わったわけではありませんよ。トニー・ブレア氏と話した時、彼も理解を示してくれましたし、たしかに財務省に提出されたレポートはそれに反対するものでしたが、ゴードン・ブラウン氏(財務大臣)はそれをまだ認めていません。私自身、これについては楽観視していて、おそらく数週間後には多くの議員が延長に賛成し、意見表明することになると思います。そういったことが海外でも起こっているわけですが、日本はそういったことも含め、例えば音楽にしろファッションにしろ、追随者になるのではなく、むしろ世界をリードする役割を担わなければならないと思いますよ。

―― 日本の場合も、著作権だけでなく、著作隣接権の保護期間が延長されるべき?

ケネディ:日本の場合もそうなると楽観しています。著作権者に認められるものなら、レコード製作者にも認められるというのは、非常にロジカルでスムーズな帰結ですよね。今の世界は性差別も人種差別もないことを大前提として成り立っています。作詞家、作曲家ではなく、演奏家であることで差別を受けるいわれはありませんよね。

―― 米国のクリエイターと日本のクリエイターの間に区別があるのもおかしいということになる?

ケネディ:まったくその通りだと思います。

音楽が重要な時代だからこそ、音楽自体、もっと尊重されるべき

―― 米国が中国をWTOに提訴するという動きもありますが、中国をはじめとする海賊版の問題というのは、つまるところどのように終息していくと見ていますか。

ケネディ:アジアにおけるビジネスは三つに切り分けて考える必要があると思います。日本、中国とそれ以外という三つに。日本市場はパッケージ、オンライン、モバイルともに今後も強力な市場であり続けるでしょう。まさに先ほど言った“ホーリー・グレイル”が存在する市場です。つまり、音楽配信がパッケージの落ち込みをきちんと補完し得るということ。一方、中国というのは言ってみれば新規市場で、パッケージの時代を飛び越え、いきなりデジタル市場そのものでスタートする市場です。そして、まさにこの中国におけるデジタル市場にまつわる良い判例が生まれたところでもあります(*3)。海賊行為への対策にも関連する非常に良い材料と言えるでしょう。いずれにしろ中国もそれ以外の地域も、日本よりはずっと遅れたかたちで、かつ海賊行為に関するある程度の痛みを伴いながらも、最終的にはモバイル市場に終息していくと見ています。

―― もう一つ、ソニーBMGの合併にもの言いがつくかたちとなる一方で、ワーナーミュージックとEMIの合併交渉も一進一退のようです。これらの傾向は今後も続くと見ていますか。

ケネディ:おそらくソニーBMGに関しては、合併した今の状態で存続していくことになると見ています。EU(欧州連合)の動向という点で言えば、ワーナーとEMIが仮に合併することになっても、最終的にEUは認めるんじゃないかと思います。レーベルは今、非常に厳しい状況に直面していますから、これらは不可避な傾向と言えるでしょう。ただ、いつかこの状況を脱し、花開く時期が必ず来ます。音楽を聴くという機会自体は、今、かつてないほど大きなものになっていて、これは追い風と言えるでしょう。ユーザーにとって今ほど音楽が空気や水のような存在になっていた時代はありません。だからこそ、ユーザーはもちろん、メディアや各国政府関係者など、みながもっと音楽を尊重する気持ちを持つ必要があるんだと思います。


*1 今年2月6日、米アップルCEO、スティーブ・ジョブズ氏が自社サイト上で“Thoughts on Music”と題するコメントを発表。アイチューンズ・ストアでダウンロードした音源が同社のDRM、FairPlayによって、iPodシリーズ以外のプレーヤーで再生できないことなどへの批判に応えたもので、アイチューンズ・ストアの音源にDRMが施されているのは4大メジャーによる要請によるものであり、それらが許可するならば、アップルはすぐにDRMフリーでiPod以外でも再生できる音源の販売に切り替えるとした。これに対し翌7日には、ケネディ氏がIFPIのサイト上で「セキュリティを維持しながら互換性を確保することについて、ジョブズ氏が述べるほどの困難は見出せない」とし、「ジョブズ氏は関係者との協議を密接に行うべき」とする声明を発表している。これに続き、4月2日、英EMIが音楽配信で提供するすべての音源を、DRMフリーのかたちでも提供していくことを発表。EMIグループCEO、エリック・ニコリ氏とともに会見にのぞんだジョブズ氏率いるアップルがその先陣を切るかたちで、EMIのDRMフリー音源の配信を開始することも発表された。従来、アップルが1曲99セントで販売していたDRM付音源のビットレートが128kbpsだったのに対して、5月にも開始するとしたDRMフリー音源は1曲1.29ドルで256kbpsと、より高音質なものとなる。今後、EMI音源については原則として曲ごとにDRM付、DRMフリーの2種類が用意され、過去にDRM付音源を購入したユーザーは、価格の差額を支払うことで、高音質なDRMフリー音源にアップグレードすることができる。

*2 現在、日本の著作権法では、著作権保護期間を著作者の死後50年、法人等の団体が著作者名義を持つ著作権や、レコード、実演といった著作隣接権の保護期間は発行後(実演後)50年と定めている。これに対し、例えば米国では一般著作物の保護期間が「死後70年」、法人著作物の保護期間は公表後95年であり、レコードの保護期間も「最初の発行日から95年または創作年から120年のうち、いずれか先に満了する年」となっているように、コンテンツに関する主要国を中心に日本より保護期間の長い国が多い。国際協調を図り、著作物についての国際的な不均衡を是正するためにも保護期間をそれら国際標準に近づけようという動きが見られ、日本レコード協会ら17の権利者団体が昨年、“著作権問題を考える創作者団体協議会”を発足させている。また、一般著作物の保護期間が米国と同じく「死後70年」である英国も、レコード、実演の保護期間は発行後(実演後)50年で、英国でもこれら日本の著作隣接権にあたる権利の保護期間延長に関する議論が高まっている。

*3 4大メジャー傘下の11レーベルが音楽検索サービスに伴う著作権侵害でヤフー中国を訴えていた裁判で、北京市第二中級法院が4月24日、原告側の訴えを認め、ヤフー中国に対し、原告側が指定する229曲についての検索結果表示の停止と、21万元(約315万円)の賠償を命じた。ヤフー中国は上告する意向を示しているが、中国における検索ポータル大手、百度(バイドゥ)が同様に訴えられていた裁判では、昨年11月、原告となったレーベル側の訴えが退けられていた。



オリコンニュースを優先ソースに追加してGoogle検索に頻繁に表示させよう

求人特集

求人検索

  • オリコンニュースを優先ソースに追加してGoogle検索に頻繁に表示させよう

 を検索