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絢香、YUIを手掛けたヒット仕掛け人

絢香、YUIを手掛けたプロデューサーのヒットの極意

 21歳でミュージシャンとしてメジャーデビューするも、一度は音楽業界を離れサラリーマンに転進。その後、音楽学校講師のアルバイトを機に再び音楽業界へ。新人の売出しが難しい時代に、絢香、YUI、ビアンコネロら原石を次々と掘り起こし、ダイヤに変えるスーパープロデューサーとはどんな人物なのか? そして、彼が使う『マジック』とは…?

アーティストから指導者へ、音楽塾『ヴォイス』設立

―― 次々とスターを生み出す音楽塾『ヴォイス』設立の経緯を教えてください。

西尾:僕は若い頃、歌手としてデビューしたのですが、あまりパッとせず事務所から暇を出されまして…(笑)、サラリーマンになって外資製薬会社の営業マンを7年やりました。その会社で福岡に転勤になった時、知人から地元の音楽スクールを手伝って欲しいと言われ、ボイストレーニングや楽器を教えるようになったんです。

 そこは生徒が1クラス20〜30人もいる大きな学校で、楽器が弾けない人も、作曲ができる人も全員同じクラス。教科書を使って一度に教えるスタイルだったため、こういうやり方は自分には合わない、と感じていました。そこで自分の学校を始めることにしたんです。「いつかはプロを育ててみたい」という気持ちもありましたが、何より、ギターを触ったこともない、Cコードさえ押さえられなかった子が、「先生、1曲弾けるようになったよ」と目をキラキラさせるのを見るのが単純に嬉しかった。彼らはそれぞれ才能も実力も違うけれど、僕は差をつけたくない。学校の中だけでも、「頑張ったら頑張った分だけ、努力したら報われるんだ」と思ってもらいたかった。でも、指導はかなり厳しいので、遊び感覚では絶対に続かない。現在では4人の講師がいますが、僕も月に1、2回は帰って指導しています。

―― どんな学校なのですか?

西尾:シンガーとシンガー・ソング・ライターの2つコースがあります。シンガーコースは、感動を与えるには歌詞の言葉をハッキリと届ける必要があるので、とにかく基本を大切にしています。シンガー・ソング・ライターは、楽器の習得から始まって、音楽理論、作曲法の指導をします。教科書通りではなく、僕が体得して、必要だと思うエッセンスだけを伝えています。どちらも一人ひとりに合わせたオーダーメイドの個人レッスンが基本です。広告も打たないし、パンフレットもテキストもない。最近までは生徒は全員クチコミで集まってきた子たちばかりでした。

 

西尾芳彦さん
(音楽プロデューサー/?V-プロジェクト 音楽塾ヴォイス代表取締役)




ビアンコネロ


YUI


絢香

―― 具体的な指導方法は?

西尾:現代の若者、特にストリートミュージシャンをやっている子たちは「音楽は感性が勝負で、人に習うものではない」と考えている子たちが多い。僕は彼らに歌ってもらい、その場で「ここをこう変えてみたら?」と、アドバイスする。実際に歌ったり弾いて聴かせたり、音で示してあげます。そうすると、グッとよくなったのが本人にも分かる。これを『マジック』って呼んでいるんですが、それで彼らも「この人の言うことを聞いてみようかな」という気になるようです。実際にやって見せることで信頼関係が生まれる。そんな時、僕自身もとても嬉しいんです。

地方に眠っている金の卵の発掘方法、ビアンコネロ、YUI、絢香の場合

―― ビアンコネロ、YUI、絢香。初めて会った時はどんな印象でしたか?

西尾:彼らに初めて会った日のことは、まるで昨日のことのように覚えています。まず、ビアンコネロは最初、一人ずつバラバラに来ていたんです。それが一緒にレッスンを受けるうちに意気投合して、本人たちの意思でグループになった。彼らはある程度曲が作れるレベルだったので、育てればメジャーデビューできると思いました。

 しかし、自分の世界にこもって大人とは目を合わせないような子もいて、心を開いてくれるまで3ヶ月くらいかかりました。若者たちと目線を同じにしないと話はできません。そして、「この人は自分に持っていないものを補ってくれる人だ」と思わせないと。僕は言う時は、かなりハッキリ言うけれど、「言われてよかった」と思ってもらえるように考えています。レッスンは当初1回1000円でやっていたのですが、彼らはそれさえも払えないくらいお金がなかったので、事務所の掃除をしたり、僕の手伝いをしたりしてもらいました。音楽塾『ヴォイス』は、いつも採算度外視ばかり(笑)。
 でも教えがいがあったし、僕が持っていないメロディーを持っていた。彼らはそれを思いつきで作っているんだけど、僕は人の心に訴えるメロディーは、即興や思いつきから生まれるものだと思うんです。ただプロになるためには、その即興のクオリティーを上げていくトレーニングが必要。例えば、AメロからBメロをどう展開したら面白いか、そこからどうつなげたらサビが引き立つようになるか? 洋邦共通するその法則を研究し続けることは、僕のテーマでもあります。
―― YUIや絢香の場合はどうでしたか?

西尾:YUIと絢香は、根っこは同じだけど幹が違う。だからそれぞれの個性に合わせてプロデュース方法を変えました。長所も才能も違うから、曲も形態も変えないといけない。YUIは絢香の1年先輩で、ビアンコネロが連れてきたんです。当時彼女は中学3年生の15歳で、服装も「狙ってそうしているのか?」と思うほど飾り気のない感じでした。でも、明らかに他の子たちとは違う光を放っていましたね。何かを見返したいというような力を感じました。僕は、順風満帆で「蝶よ、花よ」と育てられた子よりも、コンプレックスを持っているような子に惹かれます。

 それが僕のドキッとするタイプですね。YUIは、歌も楽器も、まったく何も出来ない状態で、ギターも僕が買ってあげました(笑)。初めて歌わせた時にはまったく歌えなかったのですが、ふと防御や羞恥心がなくなる瞬間があって、その時の歌に「うわっ、カッコイイ!」と思わせるものがあったんです。

 絢香の場合は、最初から自分の武器を持っていた。初めて歌わせた時、「ちょっと待ってください。1分ください」って言うから「一体何だろう?」と思って見たら、精神統一をしていたんです。しかも電気まで消させて、自分でキューを出してきた。当時16歳の女の子がですよ! 歌い出した時の彼女は別人のようでした。絢香は、普段は緊張しぃで非常に怖がりな子なんです。歌う前には震えて手も冷たくなっちゃうくらい。でも、歌いだすと完全に変わるんですよ。歌う前にステージの袖から客席を見て、後ろがざわついていると、「自分の歌で黙らせたい」と思うそうです。基本的に、負けず嫌いなんですね。

ダイヤの原石だけが持つ特別な資質、そして、その磨き方

西尾:彼らにはもうひとつ共通点があります。夢中になって歌っている時に、特別な目をするんです。忘我の境地に立った目ですね。僕自身もそうでしたが、普通の人間は観客の圧力に負ける。「見られている」という自意識で、足が震えるものです。でも、彼らはちょっとスイッチを入れてあげれば、完全に自分の世界に入れる。アーティストとしての感覚が違うんでしょうね。YUIはよく、「私にはこれしかない。他のことができないから、選択肢がない」って言っていました。それは絢香も一緒でしたね。よく、「私、何年でデビューできますか?」って聞いてくる子がいるんですけど、僕に言わせれば、「メジャーデビューが最終目標でどうするんだ?」ってことです。

―― 当初から彼らの成功を予測していましたか?

西尾:どのくらい売れるかまでは考えていなかったけれど、「少なくともメジャーデビューはできるはず」と思っていました。もしダメだったら、「西尾が持ってくるのはこの程度か」ということになってしまうので、僕自身も「人生を賭けよう」と思ってやっていました。ある時、某大手レコードメーカーのオーディション担当者が絢香の歌を聞いて「まぁまぁなんじゃない?」って言ったんです。その時は二人で「今に見ていろ!」と、闘志を燃やしましたね。「お前は絶対イケる!」と催眠術のように言って、くじけるキッカケを与えませんでした。不安の3倍、自信をつけさせましたね。そうじゃないと自分がウソツキになっちゃいますから。実際、彼女たちは15〜16歳の遊びたい盛りに、非常にハードなトレーニングをしているわけですしね。

―― 「この素材はものになる」と判断するポイントは何ですか?

西尾:絢香は「絶対プロになるんだ」という覚悟がほかの子たちとは違っていた。それと、音楽に対する非常に純粋で強い気持ちを持っていたんです。彼女は「17歳でデビューする」と決めていて、普通2年はかかる理論をたった1週間でマスターしてきた。あれにはビックリしましたね。集中力も彼女らに共通するものです。同年代の女の子たちとは次元が違うんです。そして、彼女らはものすごく耳がいい。音に対して敏感で、覚えるのがメチャクチャ早い。1、2回聴いただけで完璧に再現します。耳、勘、度胸の良さは必要ですね。彼女らは1つ教えたら5、6個は習得する。待ってないし、甘えないし、頼らない。自分で探してくるんです。目標があるから、ものすごい速さで吸収していきます。何よりも努力が大切ですね。

―― 今後チャレンジしたいことは?

西尾:今後も金の卵を育てて行きたいですね。人が見ていないところに行き、泥をかぶっている卵を見つける。そして中にいるヒナの夢を叶えてあげたい。その一連の工程をずっとやり続けたい。その過程が楽しいんです。辛いけれど、すごく面白いんですよ。先日、『ミュージックステーション』で初めてYUIと絢香が一緒に出演したんです。福岡で「明日の家賃どうしよう?」と言ってた頃からの夢だったから、嬉しかったですね。今後は、その彼女たちを脅かすような新人を育てたい。同門だけど、ライバル。音楽塾『ヴォイス』の出身者をもっと増やして、「西尾が持ってくるアーティストなら間違いない」と言われるようになりたいです。
(インタビュー・文/内山磨魅)



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