| ソフトメーカーの重要コンテンツ「お笑い」の行方 ブームというよりも、今や完全に定着した観のあるお笑い人気。以前のお笑いブームと比較したうえでの顕著な変化といえば、お笑いは代価を支払うのに値するエンターテインメントであると、多くの人が認識してきたことが挙げられるだろう。なかでもDVDパッケージの品数は年々充実化を見せ、オリコンチャートでも上位にランクされる機会も多くなった。DVDの主力商品と位置づけるソフトメーカーも多く、この夏にはプロダクション6社によるお笑い専門レーベル「コンテンツリーグ」が立ち上げられた。これらを鑑みながら、オリコンチャートにみるお笑いDVD人気を考察しつつ、今後の動向を予測する。 お金を出しても見たいと思わせる「お笑い」 数年前から続くお笑いブームの影響なのだろうか。ユーザーの「お笑い」に対する向き合い方に、大きな変化が現れてきたように思える。まず、お笑い芸人の出演するテレビのバラエティ番組が、安定した視聴率を獲得し、俳優やミュージシャン、そして小説家などの異業種で評価されることも、目に見えて増加してきた。だか、こうした様々な現象を総合したところで、最も顕著な変化は何かといえば、お笑いというものが代価を支払うのに値するエンターテインメントであると、ここに来てようやく認知されたことではないだろうか。 時代は移り変わり、映像ソフトの中心もビデオからDVDへと推移していった。また、お笑いブームと期を同じくして発生した韓流ブームの影響もあって、ショップの棚の配列も大幅なリニューアルが余儀なくされた。その中で、お笑いについても独立したコーナーを設置することが、韓流コーナーとともに一般化した。いまや、セル、レンタル問わず、目当てのものを探すのに苦労するほどに、その品数は充実してきた。 |
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まさに百花繚乱ともいえるお笑いDVDジャンルだが、中でも主力商品といえるのは、オリジナル作品よりもテレビ放送されたバラエティといえるだろう。それも、現在放送中のものよりも、過去に放送されたものが全般的に勢いがいい。また、例外はあるものの、ゴールデンの番組より深夜番組の方が、売れ行きも好調といえる。まったくの新作よりも知名度の高いテレビ番組に人気は集まるものの、視聴率二桁を獲得するような圧倒的多数の視聴者が存在する番組に関しては、DVD化の需要はそれほど高くないのが現状だろう。 ダウンタウンを筆頭に精力的なリリースを見せる吉本興業 現在店頭に並ぶお笑い系DVDの中では、数多くのダウンタウン関連作品が、売れ行き上位を占めている(別表参照)。その中でダントツの1位に輝く『人志松本のすべらない話』は、フジテレビで深夜、不定期に放送されたトーク・バラエティを再編集したもので、先に挙げた条件にピタリと当てはまるDVDである。 その一方で、高視聴率番組ながら『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』関連のDVDは、複数作品がランクインしている。これは、ダウンタウンの人気もさることながら、変則的な全国ネットが行われているうえに、大阪のよみうりテレビをはじめとして、一時期放送を休止していた局もあったからと思われ、全国的な需要の高まりも理解できる。 そのダウンタウンを筆頭に、吉本興業の芸人が出演する作品を一手に引き受け、DVD化を進めているのが、吉本系列のアール・アンド・シー。ほかにもココリコ、藤井隆など、数多くの吉本芸人の作品を扱ってきているが、その反面、ダウンタウンと並んで吉本の代表的存在である明石家さんまやや、若手のトップクラスであるロンドンブーツ1号2号は、まったくDVDリリースを行っていない。どちらも、もし仮に発売すれば好成績を残すことは確実であることから見ても、あえてリリースに踏み切っていないものと考えられる。同じ事務所に所属していながら、DVDへの対応が正反対というのも興味深い。 そのアール・アンド・シーに勝るとも劣らない勢いで、お笑いDVDをリリースしているのが、ポニーキャニオンである。フジテレビ制作のバラエティやホリプロコム所属の芸人のオリジナルDVDなども扱うなど、ビデオ中心の時代から実績を積み重ねてきた。また、ジェネオン、ソニー・ミュージックダイレクト、コンテンツリーグなどの各社でも、それぞれ特色を打ち出した独自の展開を見せている。 先にも述べたように、現時点では、一度テレビ放送された番組を再編集し、未公開映像を加えるなどした作品が、お笑いDVD全体の中で上位の売れ行きを記録している。そこには、放送による作品知名度の高さや、番組の人気を支えてきた固定ファンの存在が考えられる。それと比較すると、オリジナル作品の売れ行きが今ひとつ芳しくないことが、どうしても気にかかってしまう。 例えば、全国的な知名度はほぼ100%に近いお笑い芸人が、忙しいスケジュールの中で練り上げてきたオリジナル作品であるにもかかわらず、テレビの再編集ものよりも、遥かに売れ行きが悪かったという例がある。こうしたことが続けば、彼らは二度とオリジナル作品を作ろうとは思わないのではないかと、心配になってくる。そういった意味でも、『はねるのトびら』で絶大な人気を誇り、番組DVDの売れ行きも好調なドランクドラゴンが、9月22日に発売するオリジナルDVD『無修正』が、同じように売れることを心から願いたい。 今こそ「お笑い情報」を扱う番組が必要になってくる しかし普通に考えれば、一度見た作品よりも初めて見る作品に興味を持つのが普通ではないだろうか。にもかかわらず、この種のねじれ現象が発生するのは、ひとえにオリジナル作品が知名度の点で劣っているからとしか考えられない。十分なプロモーションがなされていれば、テレビ番組のDVDと同程度、いや、それ以上の売上げも見込めるはずである。その結果として、お笑いDVD全体への関心度が、より高まっていくことになれば、業界全体にとっても意義深いものになるはずだ。 そのためには、深夜に各局で放送されている音楽情報番組のようなスタイルを持つ「お笑い情報番組」を立ち上げることが、最重要課題になってくる。従来のお笑い番組とは一線を画した構成にし、紹介するDVDをあくまでもひとつの作品として扱うことで、視聴者のお笑いに対する意識改革を図ることも可能になってくる。もちろん、リリースの情報だけでなく、ライヴ情報やオーディションの告知まで含めて、ユーザーにとっても有益な情報を伝える必要があるだろう。宣伝のために、人気のお笑い芸人が頻繁に登場すれば、エンターテインメントとしても成立するに違いない。 昨今のお笑い番組は、無数の制約に縛られたなかで、無難な方向を見出しながら制作されているのが現状である。DVDオリジナルであれば、そういった制約を気にすることなく、自由度の高い作品を制作することが可能になる。こういったメリットを熟知した作品が、コンスタントにリリースされるようになれば、今以上にお笑いDVDが注目される時代が到来することだろう。 (文/広川たかあき) | |||
2006/09/20