俳優・岡田将生が主演を務め、染谷将太が共演するTBS金曜ドラマ『田鎖ブラザーズ』(毎週金曜 後10:00)。本作の主題歌『愛々』を手掛けた森山直太朗と新井順子プロデューサーが対談。企画段階からあったオファーの背景や、“なぞらない”ことで生まれた楽曲の制作秘話、そして物語と音楽の関係性について語り合った。
■新井Pが明かす森山直太朗への思い――企画書とともに流れていた一曲
――本作の主題歌について、森山さんにオファーした経緯を教えてください。
新井:この作品の企画書を書いている時、実は森山さんの『愛し君へ』(2004年)を繰り返し聞いていたんです。私の中では「あのドラマ(『愛し君へ』フジテレビ系/2004年)といえばこの曲」という強いイメージがあって。なので、最初から本作の主題歌は森山さんというイメージで書いていました。
森山:でも『愛し君へ』って、実は主題歌じゃなくて挿入歌なんですよ。主題歌は『生きとし生ける物へ』で。『愛し君へ』の印象が残っているのは稀有だなと思って。
新井:そうなんです。でも私の中では、あのドラマといえば『愛し君へ』で。すごくいい場面で流れる印象が強くて、勝手に主題歌だと思っていました。
それに、『愛し君へ』が入っているアルバム『新たなる香辛料を求めて』も持っていて、どの曲も本当に素晴らしくて、ずっと“鬼リピート”していたんです。そんなふうに聞きながら企画を練っていたので、自然と森山さんの歌声をイメージしていました。
森山:とはいえ、必ずしも僕じゃなくてもよかったわけですよね。『愛し君へ』のような曲を書く人は他にもいるわけですし。
新井:森山さんの声が好きなんです。声は音というか、楽器のようなものだと思っていて。声だけでしびれる感覚があって。企画書を書いている時に流していた曲のご本人に、まずは当たってみるというのはよくやるんです。玉砕することも多いですが、願えば叶うこともあるなと。
■過去の自分を“なぞらない”ことで生まれた『愛々』
――「『愛し君へ』のイメージで」というようなリクエストはされたのでしょうか?
新井:具体的に「こういう曲を」とは言っていません。あまり言わないほうがいいと思っているので。『愛し君へ』をイメージしていたことはお伝えしましたが、歌詞や曲調について細かくお願いはしていないですね。
森山:そうですね。ただ、『愛し君へ』を聞きながら書いていたと伺っていたので、情報量の少ない、ピアノ1本のシンプルな世界観なのかなとは感じていました。でも、自分をなぞるような作り方、いわゆる“自己模倣”は、クリエイティブにとって“敵”のようなものだと思っているので、一度それは忘れて、ドラマの中の景色やパッションをフラットに感じる時間を持ちました。
だから、もし「『愛し君へ』っぽくない」と言われたら、それは仕方ないとも思っていて。時間やクオリティのバランスもありますし、焦ったら終わりなので。もしダメだったら、新井さんなら「ごめんなさい」と言えば許してもらえるかなと(笑)。
ただ、その振れ幅を持っておくことはすごく大事で。締め切りに追われる気持ちは原動力にはなりますが、クリエイティブそのものとはあまり関係ないとも思っています。
――実際に『愛々』を聞いて、どんな感想を持ちましたか?
新井:本当にいい曲だなと思いました。『愛し君へ』とはまた違いますが、この物語をしっかり噛みしめて作ってくださったことが伝わってきて、この作品に間違いなくハマるなと感じました。
■メロディーに収まりきらない思いが生む揺らぎ
――『愛々』の歌詞やメロディーでこだわったところを教えてください。
森山:こだわったというより、この曲のアイデンティティーになっているのは、メロディーに収まりきらない語り口調の部分だと思います。少し昔のフォークソング、例えば吉田拓郎さんやボブ・ディランさんの影響もあると思います。
一見すると何の変哲もない曲なのですが、その中に収まりきらない思いや旋律があって、それが崩れたメロディーや譜割りとして表れている。それがこの曲の“揺らぎ”になっているのかなと。ただ、エンディングで流れるとセリフと重なる可能性があるので、「もう少し間引いてください」と言われて、確かにそうだなとも思いました。
新井:でも、それが“森山直太朗らしさ”でもあるよね、という話になって。2回目にいただいた時も、そこまで減っていなかったんですが(笑)、これ以上言うと“らしさ”がなくなってしまうし、「なぜオファーしたのか」という話になるので、いただいたもので進行しようと。もし修正をお願いしていたら、どうなっていたんでしょうね。
森山:もっとのっぺりした曲になっていたかもしれないですね。フックはなくなるけれど、その分ドラマは見やすくなるかもしれない(笑)。
新井:聞き込むほどに噛みごたえがあって、特に最後の大サビは、風が吹き抜けるような感じがして。
森山:そこは原摩利彦くんと須原杏さんのアレンジですね。ドラマとの境界が溶けるような瞬間があって、映像の力も大きいですし、編曲にもすごく助けられました。
新井:兄弟の叫びのようにも聞こえませんか。あの二人は表にはあまり出さず淡々としていますが、内側では強い感情が燃えている。その思いを曲が代弁してくれているようで、「この兄弟の曲だな」と感じました。
――森山さんは放送に先駆けて本編をご覧になったそうですね。
森山:純粋に感動しました。物語そのものに引き込まれたのはもちろんですが、音楽と映像の融合の仕方にも驚かされて。音楽単体でも、映像単体でもなく、重なった時にこんな表現が生まれるんだと。新井さんのビジョンがあって、それを具現化していく過程も含めて、総合芸術なんだと改めて感じました。
それと、この曲をドラマの最後の“一筋の救い”のような存在にしたい、ただ絶望だけを描く作品にはしたくないというお話も伺って。その先にもまた困難は続いていくと思うのですが、「言ったことはやる」という新井さんの姿勢がかっこいいなと感じました。
■人と人の“対”がつくる世界
――『愛々』というタイトルにはどのような思いが込められていますか?
森山:この兄弟に限らず、曲の中には1対1の関係が描かれています。人はそれぞれの人生の中で、親や友人、先輩後輩、ライバルなど、さまざまな関係に支えられて生きている。でも、その関係がずっと続くこともあれば、どこかで断ち切らなければいけない瞬間もある。依存や癒着を離れて、次のステージに進むために…。
そうした小さな“対”の関係が連なって、世界ができている。そんな俯瞰的なイメージも込めて、『愛々』という言葉にしました。それに、日本語の「宵々」や「折々」といった響きが好きで、この繰り返しの言葉に惹かれるんです。『愛々』という言葉も、なじみがあるようで新しい。その響きから、このタイトルにしました。
――最後に視聴者の方へメッセージをお願いします。
新井:今回は、放送に先駆けて楽曲を公開しています。あらかじめ曲を体になじませておくことで、より作品に入りやすくなると思ったんです。実際にスポットをご覧いただいた方からも「泣きました」という反応をいただいていて、この曲があることで、単なるサスペンスではなく“兄弟愛の物語”として伝わると感じています。きっと自然と物語に入っていただけると思いますので、それぞれの『愛々』を感じながら楽しんでいただけたらうれしいです。
(編集:岩本和樹)
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■新井Pが明かす森山直太朗への思い――企画書とともに流れていた一曲
――本作の主題歌について、森山さんにオファーした経緯を教えてください。
新井:この作品の企画書を書いている時、実は森山さんの『愛し君へ』(2004年)を繰り返し聞いていたんです。私の中では「あのドラマ(『愛し君へ』フジテレビ系/2004年)といえばこの曲」という強いイメージがあって。なので、最初から本作の主題歌は森山さんというイメージで書いていました。
新井:そうなんです。でも私の中では、あのドラマといえば『愛し君へ』で。すごくいい場面で流れる印象が強くて、勝手に主題歌だと思っていました。
それに、『愛し君へ』が入っているアルバム『新たなる香辛料を求めて』も持っていて、どの曲も本当に素晴らしくて、ずっと“鬼リピート”していたんです。そんなふうに聞きながら企画を練っていたので、自然と森山さんの歌声をイメージしていました。
森山:とはいえ、必ずしも僕じゃなくてもよかったわけですよね。『愛し君へ』のような曲を書く人は他にもいるわけですし。
新井:森山さんの声が好きなんです。声は音というか、楽器のようなものだと思っていて。声だけでしびれる感覚があって。企画書を書いている時に流していた曲のご本人に、まずは当たってみるというのはよくやるんです。玉砕することも多いですが、願えば叶うこともあるなと。
■過去の自分を“なぞらない”ことで生まれた『愛々』
――「『愛し君へ』のイメージで」というようなリクエストはされたのでしょうか?
新井:具体的に「こういう曲を」とは言っていません。あまり言わないほうがいいと思っているので。『愛し君へ』をイメージしていたことはお伝えしましたが、歌詞や曲調について細かくお願いはしていないですね。
森山:そうですね。ただ、『愛し君へ』を聞きながら書いていたと伺っていたので、情報量の少ない、ピアノ1本のシンプルな世界観なのかなとは感じていました。でも、自分をなぞるような作り方、いわゆる“自己模倣”は、クリエイティブにとって“敵”のようなものだと思っているので、一度それは忘れて、ドラマの中の景色やパッションをフラットに感じる時間を持ちました。
だから、もし「『愛し君へ』っぽくない」と言われたら、それは仕方ないとも思っていて。時間やクオリティのバランスもありますし、焦ったら終わりなので。もしダメだったら、新井さんなら「ごめんなさい」と言えば許してもらえるかなと(笑)。
ただ、その振れ幅を持っておくことはすごく大事で。締め切りに追われる気持ちは原動力にはなりますが、クリエイティブそのものとはあまり関係ないとも思っています。
――実際に『愛々』を聞いて、どんな感想を持ちましたか?
新井:本当にいい曲だなと思いました。『愛し君へ』とはまた違いますが、この物語をしっかり噛みしめて作ってくださったことが伝わってきて、この作品に間違いなくハマるなと感じました。
■メロディーに収まりきらない思いが生む揺らぎ
――『愛々』の歌詞やメロディーでこだわったところを教えてください。
森山:こだわったというより、この曲のアイデンティティーになっているのは、メロディーに収まりきらない語り口調の部分だと思います。少し昔のフォークソング、例えば吉田拓郎さんやボブ・ディランさんの影響もあると思います。
一見すると何の変哲もない曲なのですが、その中に収まりきらない思いや旋律があって、それが崩れたメロディーや譜割りとして表れている。それがこの曲の“揺らぎ”になっているのかなと。ただ、エンディングで流れるとセリフと重なる可能性があるので、「もう少し間引いてください」と言われて、確かにそうだなとも思いました。
新井:でも、それが“森山直太朗らしさ”でもあるよね、という話になって。2回目にいただいた時も、そこまで減っていなかったんですが(笑)、これ以上言うと“らしさ”がなくなってしまうし、「なぜオファーしたのか」という話になるので、いただいたもので進行しようと。もし修正をお願いしていたら、どうなっていたんでしょうね。
森山:もっとのっぺりした曲になっていたかもしれないですね。フックはなくなるけれど、その分ドラマは見やすくなるかもしれない(笑)。
新井:聞き込むほどに噛みごたえがあって、特に最後の大サビは、風が吹き抜けるような感じがして。
森山:そこは原摩利彦くんと須原杏さんのアレンジですね。ドラマとの境界が溶けるような瞬間があって、映像の力も大きいですし、編曲にもすごく助けられました。
新井:兄弟の叫びのようにも聞こえませんか。あの二人は表にはあまり出さず淡々としていますが、内側では強い感情が燃えている。その思いを曲が代弁してくれているようで、「この兄弟の曲だな」と感じました。
――森山さんは放送に先駆けて本編をご覧になったそうですね。
森山:純粋に感動しました。物語そのものに引き込まれたのはもちろんですが、音楽と映像の融合の仕方にも驚かされて。音楽単体でも、映像単体でもなく、重なった時にこんな表現が生まれるんだと。新井さんのビジョンがあって、それを具現化していく過程も含めて、総合芸術なんだと改めて感じました。
それと、この曲をドラマの最後の“一筋の救い”のような存在にしたい、ただ絶望だけを描く作品にはしたくないというお話も伺って。その先にもまた困難は続いていくと思うのですが、「言ったことはやる」という新井さんの姿勢がかっこいいなと感じました。
■人と人の“対”がつくる世界
――『愛々』というタイトルにはどのような思いが込められていますか?
森山:この兄弟に限らず、曲の中には1対1の関係が描かれています。人はそれぞれの人生の中で、親や友人、先輩後輩、ライバルなど、さまざまな関係に支えられて生きている。でも、その関係がずっと続くこともあれば、どこかで断ち切らなければいけない瞬間もある。依存や癒着を離れて、次のステージに進むために…。
そうした小さな“対”の関係が連なって、世界ができている。そんな俯瞰的なイメージも込めて、『愛々』という言葉にしました。それに、日本語の「宵々」や「折々」といった響きが好きで、この繰り返しの言葉に惹かれるんです。『愛々』という言葉も、なじみがあるようで新しい。その響きから、このタイトルにしました。
――最後に視聴者の方へメッセージをお願いします。
新井:今回は、放送に先駆けて楽曲を公開しています。あらかじめ曲を体になじませておくことで、より作品に入りやすくなると思ったんです。実際にスポットをご覧いただいた方からも「泣きました」という反応をいただいていて、この曲があることで、単なるサスペンスではなく“兄弟愛の物語”として伝わると感じています。きっと自然と物語に入っていただけると思いますので、それぞれの『愛々』を感じながら楽しんでいただけたらうれしいです。
(編集:岩本和樹)
2026/05/02