ディズニー・アニメーション映画『ズートピア2』(2025年)が、日本で異例ともいえるロングランを続けている。週末の動員ランキングでも8週連続1位を獲得し(興行通信社調べ)、2月1日時点で日本国内の興行収入は140億7788万円、動員1034万人を記録。『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(2023年)を超え、洋画アニメーション歴代2位に躍り出た(1位は『アナと雪の女王』の254.7億円)。
本作のヒットは、単なる「続編の成功」では片付けられない。長く育ててきた作品の人気と、日本ならではの丁寧な仕掛けが、今回のロングヒットを支えている。
■「帰ってきた」ではなく、「ずっとそばにいた」物語
動物たちが人間のように暮らし、誰もが何にでもなれる楽園<ズートピア>を舞台に、頑張り屋なウサギの警察官ジュディと、皮肉屋なキツネの詐欺師ニックが連続失踪事件を追う中で、互いの偏見を捨て、唯一無二の相棒へと成長していく姿を描いた前作『ズートピア』(2016年)。当時の日本では公開直後から爆発的なヒットとなったわけではなく、“もふもふなのに深い”という口コミが広がり、公開3週目で首位に立つという異例の伸び方を見せた。最終興収76億8000万円、年間興行ランキング4位に食い込んだ。
重要なのは、その後の時間だ。動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」での継続配信やキャラクターグッズ展開などによって、『ズートピア』は単なるヒット作ではなく、日常的に触れられるIPへと変化していった。
9年かけて醸成された強固なファンベースの上で公開された『ズートピア2』は、「ジュディとニックにまた会える」という感情的な動機もあいまって観客を劇場へ呼び戻した。そして、「このふたりが“その後”どうなるのか?」という観客の関心に応える関係性のアップデートが描かれたことへの反響が、世界興収約17.8億ドル(2025年公開作品の世界2位、米国製作作品1位※Box Office Mojo調べ、2月6日時点)という数字にも表れている。
■日本版が生んだ“もうひとつのズートピア”
日本での記録的大ヒットをけん引しているのが、“日本版”の存在だ。上戸彩(ジュディ役)と森川智之(ニック役)というおなじみのコンビに加え、下野紘、山田涼介、江口のりこ、梅澤富美男、柄本明ら多彩なキャストが参加。各キャラクターの“ハマり役”ぶりも話題となり、<ズートピア>の世界をさらに豊かにした。
音楽面でも、本作の広がりを後押しする動きが生まれた。エド・シーランが手掛け、シャキーラが歌唱する劇中歌「Zoo」は世界的ヒットを記録し、日本でもオリコン週間ストリーミング急上昇ランキング1位を獲得。さらに、世界で唯一、日本のみローカライズ楽曲の制作が許可され、Dream Amiが歌う「Zoo 〜君がいるから〜」が日本版プロモーションソングとしてデジタル配信された。
リズミカルなテンポの中に、「さんざんな日の終わり 君とふたりでおさえてた気持ち解き放つのよ」「君がいるから ほら 世界は輝く」といった日本語詞がちりばめられ、ジュディとニックのバディとしての関係性を想起させる余韻を残す。映画を観終えたあとも、そのメロディーが観客の日常に寄り添い続けたことが、<ズートピア>の世界からなかなか離れられない感覚を生んでいるのかもしれない。
■なぜ“もう一度観たくなる”のか
加えて、観るたびに発見がある劇中にちりばめられた映画的オマージュも、リピーター創出に寄与した。『レミーのおいしいレストラン』『塔の上のラプンツェル』『ライオン・キング』といったディズニー作品のみならず、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』や『シャイニング』などを想起させる演出が、映画ファンの考察欲を刺激。SNSでは「このシーン、あの作品では?」という声が“更新され続ける話題”となった。
SNS時代において、「発見できる作品」は長く語られる。本作はストーリーだけでなく、観客の鑑賞行為そのものをエンターテインメント化している点も特徴的だ。
■映画館の外で広がった“ズートピア化”
今回のヒットを語るとき、映画そのものと同じくらい重要なのが、公開前から積み上げられていた環境だ。
東京ディズニーリゾートでは、昨年11月11日からイクスピアリの入口サインが「ZOOTOPIARI」仕様となり、館内装飾も充実させ、コアファンのフォトスポット&聖地となった。パーク内でも11月26日からキャラクターグッズやメニューを展開し、スペシャルイベント「ディズニー・クリスマス」の「トイズ・ワンダラス・クリスマス!」パレードにニックとジュディが登場。公開日には東京ディズニーランドで声優パレードが実施され、大きな話題となった。
公開当日には日本テレビ系「金曜ロードショー」で前作がノーカット放送され、テレビとの連動も強力だった。
ディズニープラスでは11月26日以降、関連作品が「TOP10(日本)」に約50日間ランクインし、劇場公開以降は関連作品の視聴時間が最大5倍、「ズートピア」のキーワード検索が約3倍に増加するなど、高いエンゲージメントを記録。2025年12月から今年1月27日まで、日本において『ズートピア』が最も視聴された映画、『ズートピア+』シーズン1が最も視聴されたシリーズとなった。
ディズニーストアでは関連商品を順次販売。また、約70社のライセンスパートナーと協力し、ぬいぐるみから日用品、ファッションまで、国内だけで1000種類以上の幅広い新商品が登場した。2025年12月単月の関連商品売上は、前作公開年の総売上を上回ったという。
そのほか、企業タイアップや自治体コラボ、「LINE:ディズニー ツムツム」などのゲーム連動、出版・英語教材までを含めた多角的な展開も行われ、まさに日本中を“ズートピア化”するプロモーションが実施された。
これだけの施策を積み重ね、140億円超えという大台を突破した『ズートピア2』。作品力と長期的なブランド戦略、そして徹底した日本市場向けローカライズが噛み合ったことが、この記録的大ヒットを生み出したと言えそうだ。
本作のヒットは、単なる「続編の成功」では片付けられない。長く育ててきた作品の人気と、日本ならではの丁寧な仕掛けが、今回のロングヒットを支えている。
■「帰ってきた」ではなく、「ずっとそばにいた」物語
動物たちが人間のように暮らし、誰もが何にでもなれる楽園<ズートピア>を舞台に、頑張り屋なウサギの警察官ジュディと、皮肉屋なキツネの詐欺師ニックが連続失踪事件を追う中で、互いの偏見を捨て、唯一無二の相棒へと成長していく姿を描いた前作『ズートピア』(2016年)。当時の日本では公開直後から爆発的なヒットとなったわけではなく、“もふもふなのに深い”という口コミが広がり、公開3週目で首位に立つという異例の伸び方を見せた。最終興収76億8000万円、年間興行ランキング4位に食い込んだ。
重要なのは、その後の時間だ。動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」での継続配信やキャラクターグッズ展開などによって、『ズートピア』は単なるヒット作ではなく、日常的に触れられるIPへと変化していった。
9年かけて醸成された強固なファンベースの上で公開された『ズートピア2』は、「ジュディとニックにまた会える」という感情的な動機もあいまって観客を劇場へ呼び戻した。そして、「このふたりが“その後”どうなるのか?」という観客の関心に応える関係性のアップデートが描かれたことへの反響が、世界興収約17.8億ドル(2025年公開作品の世界2位、米国製作作品1位※Box Office Mojo調べ、2月6日時点)という数字にも表れている。
日本での記録的大ヒットをけん引しているのが、“日本版”の存在だ。上戸彩(ジュディ役)と森川智之(ニック役)というおなじみのコンビに加え、下野紘、山田涼介、江口のりこ、梅澤富美男、柄本明ら多彩なキャストが参加。各キャラクターの“ハマり役”ぶりも話題となり、<ズートピア>の世界をさらに豊かにした。
音楽面でも、本作の広がりを後押しする動きが生まれた。エド・シーランが手掛け、シャキーラが歌唱する劇中歌「Zoo」は世界的ヒットを記録し、日本でもオリコン週間ストリーミング急上昇ランキング1位を獲得。さらに、世界で唯一、日本のみローカライズ楽曲の制作が許可され、Dream Amiが歌う「Zoo 〜君がいるから〜」が日本版プロモーションソングとしてデジタル配信された。
リズミカルなテンポの中に、「さんざんな日の終わり 君とふたりでおさえてた気持ち解き放つのよ」「君がいるから ほら 世界は輝く」といった日本語詞がちりばめられ、ジュディとニックのバディとしての関係性を想起させる余韻を残す。映画を観終えたあとも、そのメロディーが観客の日常に寄り添い続けたことが、<ズートピア>の世界からなかなか離れられない感覚を生んでいるのかもしれない。
■なぜ“もう一度観たくなる”のか
加えて、観るたびに発見がある劇中にちりばめられた映画的オマージュも、リピーター創出に寄与した。『レミーのおいしいレストラン』『塔の上のラプンツェル』『ライオン・キング』といったディズニー作品のみならず、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』や『シャイニング』などを想起させる演出が、映画ファンの考察欲を刺激。SNSでは「このシーン、あの作品では?」という声が“更新され続ける話題”となった。
SNS時代において、「発見できる作品」は長く語られる。本作はストーリーだけでなく、観客の鑑賞行為そのものをエンターテインメント化している点も特徴的だ。
■映画館の外で広がった“ズートピア化”
今回のヒットを語るとき、映画そのものと同じくらい重要なのが、公開前から積み上げられていた環境だ。
東京ディズニーリゾートでは、昨年11月11日からイクスピアリの入口サインが「ZOOTOPIARI」仕様となり、館内装飾も充実させ、コアファンのフォトスポット&聖地となった。パーク内でも11月26日からキャラクターグッズやメニューを展開し、スペシャルイベント「ディズニー・クリスマス」の「トイズ・ワンダラス・クリスマス!」パレードにニックとジュディが登場。公開日には東京ディズニーランドで声優パレードが実施され、大きな話題となった。
公開当日には日本テレビ系「金曜ロードショー」で前作がノーカット放送され、テレビとの連動も強力だった。
ディズニープラスでは11月26日以降、関連作品が「TOP10(日本)」に約50日間ランクインし、劇場公開以降は関連作品の視聴時間が最大5倍、「ズートピア」のキーワード検索が約3倍に増加するなど、高いエンゲージメントを記録。2025年12月から今年1月27日まで、日本において『ズートピア』が最も視聴された映画、『ズートピア+』シーズン1が最も視聴されたシリーズとなった。
ディズニーストアでは関連商品を順次販売。また、約70社のライセンスパートナーと協力し、ぬいぐるみから日用品、ファッションまで、国内だけで1000種類以上の幅広い新商品が登場した。2025年12月単月の関連商品売上は、前作公開年の総売上を上回ったという。
そのほか、企業タイアップや自治体コラボ、「LINE:ディズニー ツムツム」などのゲーム連動、出版・英語教材までを含めた多角的な展開も行われ、まさに日本中を“ズートピア化”するプロモーションが実施された。
これだけの施策を積み重ね、140億円超えという大台を突破した『ズートピア2』。作品力と長期的なブランド戦略、そして徹底した日本市場向けローカライズが噛み合ったことが、この記録的大ヒットを生み出したと言えそうだ。
2026/02/07