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【ANIAFF】世界の潮流となった“日本アニメ”の強さを記号論から読み解く

 愛知県名古屋市で開催中の「第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル(ANIAFF)」で15日、「日本アニメとは何か? いま世界で何が起きているのか」と題したセミナーが行われた。セミナーでは、日本アニメが世界に受け入れられてきた理由について、記号論(セミオティクス)の視点からの興味深い考察が披露された。

「第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル(ANIAFF)」のセミナーに登壇した(左から)数土直志氏、ジェシカ・ポー氏、齋藤優一郎氏

「第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル(ANIAFF)」のセミナーに登壇した(左から)数土直志氏、ジェシカ・ポー氏、齋藤優一郎氏

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 登壇したのは、ヨーロッパで日本アニメの展開を担ってきたイギリスの配信会社Anime Limited(アニメリミテッド)の元COOで、現在は講談社シニア・ビジネス・ストラテジストを務めるジェシカ・ポー氏、細田守監督作品を手がけるスタジオ地図のプロデューサー・齋藤優一郎氏、そして同映画祭のアーティスティック・ディレクターである数土直志氏。

 本セミナーでは、『鬼滅の刃』がアメリカで社会現象級のヒットを記録したことなど、近年の日本アニメの世界的躍進を起点に、その人気が一過性のブームなのか、それとも文化として定着したものなのかを検証。さらに、海外から日本アニメがどのように見られているのかを国際的な視点から掘り下げ、グローバル展開の中で浮かび上がる課題と、その乗り越え方について意見が交わされた。

 なかでも印象的な考察を示したのがポー氏だ。26年前、22歳で日本アニメに関わり始めた当時を振り返り、「現在の状況は、当時の自分にはまったく想像できなかった」と語った。

 「80年代や90年代、日本のアニメは、特にヨーロッパではすでに広く放送されていました。しかし、多くの人はそれを『日本のアニメーション』として意識していなかった。日本のアニメがどのような価値や文法を持っているのかが、十分に理解されていなかったのです」

 そうした状況の中で、「日本のアニメをもっと大きな舞台へ届けたい」と考えた世界中の情熱的な人々が、ディストリビューターとして動き始めたという。「ここまで来るのに、実際には25年かかりました」と振り返り、日本と海外の双方で多くの人や企業が長年にわたり協力を続けてきた結果が、現在の成功につながっていると分析した。

 さらに、大きな転機として挙げたのがインターネットの普及だ。「アクセスが一気に広がったことで、状況は大きく変わりました」。その後、アニメは再び“劇場”という場へと戻っていく。これも、日本と海外の企業が10年以上にわたり努力を重ね、小さな成功と多くの失敗を積み重ねてきた結果だという。「その失敗があったからこそ、『鬼滅の刃』のような現象が生まれたのだと思います」と語った。

 ポー氏は続けて、「厳密な答えではありませんが、一つの解釈として受け取ってください」と前置きしたうえで、記号論の観点から日本アニメの強さを説明した。

 記号論とは、言葉や映像、音、身振りなどがどのように意味を持ち、共有されるのかを研究する学問だ。ポー氏は、日本アニメは単なる「日本で作られた映像」ではなく、言語を超えて意味を生成するためのコード(記号体系)になっていると指摘する。言語そのものではないからこそ、言葉の壁を越え、言葉では伝えきれないメッセージを届けることができる。

 「愛、ライバル関係、喪失、憧れといった感情や価値は文化を超えて共有されています。例えば、悲しみは、沈黙や身体の震えといった表現で示される。こうした感情の構造は多文化的で、ブラジルでもフランスでも、日本でもアメリカでも、観客は同じ感情の流れを直感的に理解できるのです」

 アニメは視聴者に「日本を理解していること」を求めない。日本語を学ぶ必要もない。「日本のアニメはこの『記号』を覚えているだけですべて通じるんです。髪の色でキャラクターの性格が分類されますし、制服などの衣装のデザインで伝わるものがある。言語がわからなくても通じるから、違うメディアにもっていっても、文化圏や問題がなく、リミックスやフランチャイズ化しやすい」とポー氏。

 少年作品における「努力・友情・勝利」、魔法少女の「変身・アイデンティティ・責任」、メカ作品の「人間とシステムの葛藤」などは、現代の神話のような役割を果たしているという。こうしたジャンルは、複雑さを削ぎ落とし、原型(アーキタイプ)や象徴的な役割を提示することで、視聴者に「物語の読み方」を教える。繰り返し触れることで、新しい作品も自然に理解できるようになる。反復は予測可能性を高め、言語の壁をさらに下げる。

 アニメは本質的に非言語的かつ非文脈的なコミュニケーションであり、翻訳に強いメディアだ。文化の違いがあっても感情は届き、視聴者は能動的に物語を読み取り、展開を予測していく。

 「もちろん、記号論だけですべてを説明できるわけではありません。しかし、日本アニメが世界的に成功している理由の一つとして、こうした“意味のシステム”が観客の心に強く作用しているのは確かです。『鬼滅の刃』の成功も、単なるマーケティングや流通の力だけでなく、作品が持つ意味と、それに応答する観客の感情的な関与があってこそ生まれた現象だと思います」と語った。

 この考察を受け、数土氏は「日本アニメがなぜ人気なのかと聞かれると、『ストーリーが複雑だから』『ビジュアルがすごいから』といった曖昧な答えになりがちです。しかし、『アニメを記号として捉えることで、世界に広がる理由が見えてくる』という視点は非常に新鮮で、説得力がありました」と感想を述べた。

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  • 「第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル(ANIAFF)」のセミナーに登壇した(左から)数土直志氏、ジェシカ・ポー氏、齋藤優一郎氏
  • ジェシカ・ポー氏=「第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル(ANIAFF)」にて (C)ORICON NewS inc.
  • 細田守監督作品を手がけるスタジオ地図のプロデューサー・齋藤優一郎氏 (C)ORICON NewS inc.
  • 数土直志氏=「第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル(ANIAFF)」にて (C)ORICON NewS inc.

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