スニーカーをあらゆる側面から解説した『スニーカー学』(KADOKAWA刊)が発売された。著者は、スニーカーショップ「atmos」創設者で、スニーカービジネスの表と裏を知り尽くす業界のキーパーソンとしても知られる本明秀文氏。二次流通、プレ値、SNS消費 インバウンド 投資 NFT 真贋鑑定 コラボ テック系といったキーワードをもとに、スニーカーブームのからくりや、「投資財」としての役割なども解説する。同書から、今後のスニーカー業界が考えるべき問題について解説した内容を、一部抜粋して紹介する。
■明るい未来のためにスニーカーメーカーが取るべき戦略
国連貿易開発会議から世界で2番目に環境を汚染している産業と名指しされているアパレル産業。多くのブランドがシーズンごとに新作を発表し、毎年のように変わるトレンドによってまだ着られる服ですら時代遅れとして廃棄される道を辿っているのが根本的な原因です。一説にはいま世の中にある服だけでもこの先全人類に10年間行き渡る、とも言われています。
もちろん、多くの企業がエコやサステナビリティの観点から取り組みをおこなっています。しかし、いくらエコレザーや環境に優しい製法を取り入れたところで、毎シーズンのコレクションやトレンド作りで需要を喚起し、まだ使うことができるアイテムを捨てさせることで過剰生産を続ける限り、環境に配慮した製造をおこなっても焼け石に水です。
また、利益を出して株主に配当するためには前年より多くの生産をおこなう必要があり、アパレル産業が資本主義社会の論理で動いている以上、この動きから逃れることはできません。現在のアパレル産業において、企業がエコロジーを謳うのは構造的矛盾を秘めており、グリーンウォッシュ(※)であると指摘されることが多いのはそのためです。
アパレル企業における過剰生産の問題はハイプスニーカーにおいて最も顕著です。たとえば、ハイプスニーカーは履かずに保管する人が多いのにもかかわらず、現在では1モデルあたり数万足という規模で生産されています。過剰生産による歪みは、環境そのものだけでなく、スニーカーブームにも致命的なダメージを与えかねません。
ハイプスニーカーに憧れる若者の数は増えています。にもかかわらず、これまでは手に入らなかったスニーカーがキチンと手に入ることが増えつつあります。その理由は単純で、メーカーが生産量を増やしているからです。体感ではここ数年で1モデルあたりの生産量がかつてよりも7〜8倍に増え、さらに今や毎週のように限定モデルのドロップがおこなわれています。
これまで繰り返し述べてきたように、ハイプスニーカーは誰でも手に入るわけではないという希少性によって、需要を喚起してきたものでもあります。それが簡単に手に入るようになると、一気に興味を失う層が出てくることが予想されます。
特にリセールマーケットでは既にその傾向が顕著で、一定のモデルを除いてリセール全体の価格が下がり、なかには資金が続かずに原価割れでスニーカーを手放している例も散見されます。
アパレル企業が抱える持続可能性と利益追求という矛盾に、唯一と言っていいほど具体的な回答をしてみせたのが「パタゴニア」です。
彼らは「地球が私たちの唯一の株主」と明言し、サステナビリティに優れた素材を用いて需要のある量だけを生産しているだけでなく、ショップ内に修理工房を設けて修理や中古品の販売も積極的におこなっています。そしてビジネスで得た利益を環境保護のためのファンドに投資することで、実際的に環境問題にコミットしようとしている。また「パタゴニア」のファンも彼らの理念に共鳴し、他社と比較して決して安くないアイテムに喜んでお金を払っています。
スニーカーメーカーが現在のような過剰生産を続けることは不可能であり、遠からず限界を迎えます。その時にどんな戦略を取るべきか。
まずは矢継ぎ早に商品をドロップすることをやめ、時間をかけて本当に消費者が求めている製品をリリースする形へ戻すことが必要です。
そして今の投資財的な位置付けを維持するために費やしてきたマーケティング費用を本当の意味で環境に対して意義のある活動に使い、それらの取り組みの重要性を消費者に訴えかけていくことが重要です。
大量生産・大量廃棄という時代は、もはや過去のものです。たとえ価格が上がったとしても良いものを作り、それに賛同する消費者が長く使う構造に変えていくことが、今後のスニーカーには欠かせません。
※グリーンウォッシュ…企業や商品のイメージ向上を目的として、実態が伴わないにもかかわらず環境に配慮していることを過度にアピールするビジネス戦略のこと。
■本明秀文プロフィール
atmos創設者。元Foot Locker atmos Japan最高経営責任者。1968年生まれ。90年代初頭より、米国フィラデルフィアの大学に通いながらスニーカー収集に情熱を注ぐ。商社勤務を経て、1996年に原宿で「CHAPTER」をオープン。2000年に「atmos」を開き、独自のディレクションが国内外で名を轟かせ、ニューヨーク店をはじめ海外13店舗を含む45店舗に拡大。2021年8月、米国の小売大手「Foot Locker」が約400億円で買収を発表。スニーカービジネスの表と裏を知り尽くす業界のキーパーソン。
■明るい未来のためにスニーカーメーカーが取るべき戦略
国連貿易開発会議から世界で2番目に環境を汚染している産業と名指しされているアパレル産業。多くのブランドがシーズンごとに新作を発表し、毎年のように変わるトレンドによってまだ着られる服ですら時代遅れとして廃棄される道を辿っているのが根本的な原因です。一説にはいま世の中にある服だけでもこの先全人類に10年間行き渡る、とも言われています。
また、利益を出して株主に配当するためには前年より多くの生産をおこなう必要があり、アパレル産業が資本主義社会の論理で動いている以上、この動きから逃れることはできません。現在のアパレル産業において、企業がエコロジーを謳うのは構造的矛盾を秘めており、グリーンウォッシュ(※)であると指摘されることが多いのはそのためです。
アパレル企業における過剰生産の問題はハイプスニーカーにおいて最も顕著です。たとえば、ハイプスニーカーは履かずに保管する人が多いのにもかかわらず、現在では1モデルあたり数万足という規模で生産されています。過剰生産による歪みは、環境そのものだけでなく、スニーカーブームにも致命的なダメージを与えかねません。
ハイプスニーカーに憧れる若者の数は増えています。にもかかわらず、これまでは手に入らなかったスニーカーがキチンと手に入ることが増えつつあります。その理由は単純で、メーカーが生産量を増やしているからです。体感ではここ数年で1モデルあたりの生産量がかつてよりも7〜8倍に増え、さらに今や毎週のように限定モデルのドロップがおこなわれています。
これまで繰り返し述べてきたように、ハイプスニーカーは誰でも手に入るわけではないという希少性によって、需要を喚起してきたものでもあります。それが簡単に手に入るようになると、一気に興味を失う層が出てくることが予想されます。
特にリセールマーケットでは既にその傾向が顕著で、一定のモデルを除いてリセール全体の価格が下がり、なかには資金が続かずに原価割れでスニーカーを手放している例も散見されます。
アパレル企業が抱える持続可能性と利益追求という矛盾に、唯一と言っていいほど具体的な回答をしてみせたのが「パタゴニア」です。
彼らは「地球が私たちの唯一の株主」と明言し、サステナビリティに優れた素材を用いて需要のある量だけを生産しているだけでなく、ショップ内に修理工房を設けて修理や中古品の販売も積極的におこなっています。そしてビジネスで得た利益を環境保護のためのファンドに投資することで、実際的に環境問題にコミットしようとしている。また「パタゴニア」のファンも彼らの理念に共鳴し、他社と比較して決して安くないアイテムに喜んでお金を払っています。
スニーカーメーカーが現在のような過剰生産を続けることは不可能であり、遠からず限界を迎えます。その時にどんな戦略を取るべきか。
まずは矢継ぎ早に商品をドロップすることをやめ、時間をかけて本当に消費者が求めている製品をリリースする形へ戻すことが必要です。
そして今の投資財的な位置付けを維持するために費やしてきたマーケティング費用を本当の意味で環境に対して意義のある活動に使い、それらの取り組みの重要性を消費者に訴えかけていくことが重要です。
大量生産・大量廃棄という時代は、もはや過去のものです。たとえ価格が上がったとしても良いものを作り、それに賛同する消費者が長く使う構造に変えていくことが、今後のスニーカーには欠かせません。
※グリーンウォッシュ…企業や商品のイメージ向上を目的として、実態が伴わないにもかかわらず環境に配慮していることを過度にアピールするビジネス戦略のこと。
■本明秀文プロフィール
atmos創設者。元Foot Locker atmos Japan最高経営責任者。1968年生まれ。90年代初頭より、米国フィラデルフィアの大学に通いながらスニーカー収集に情熱を注ぐ。商社勤務を経て、1996年に原宿で「CHAPTER」をオープン。2000年に「atmos」を開き、独自のディレクションが国内外で名を轟かせ、ニューヨーク店をはじめ海外13店舗を含む45店舗に拡大。2021年8月、米国の小売大手「Foot Locker」が約400億円で買収を発表。スニーカービジネスの表と裏を知り尽くす業界のキーパーソン。
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2024/05/22