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スニーカー人気加速、転売ヤーも急増 並び屋「キャパ」も登場し…ショップとの攻防戦【スニーカー解説】

 スニーカーをあらゆる側面から解説した『スニーカー学』(KADOKAWA刊)が発売された。著者は、スニーカーショップ「atmos」創設者で、スニーカービジネスの表と裏を知り尽くす業界のキーパーソンとしても知られる本明秀文氏。二次流通、プレ値、SNS消費 インバウンド 投資 NFT 真贋鑑定 コラボ テック系といったキーワードをもとに、スニーカーブームのからくりや、「投資財」としての役割なども解説する。同書から、高まるスニーカー投資と転売ヤーの動向について解説した内容を、一部抜粋して紹介する。

二次流通で特に高額がついているモデル「AIR JORDAN1 RETRO HIGH THE TEN CHICAGO」

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■スニーカー投資の過熱と転売ヤーの暗躍

 他の投資と比べて一回に動く金額が多くないとは言え、利益が出る以上は半ば仕事としてスニーカー投資に参加して利益を最大化しようとする人たちも存在します。いわゆる転売ヤーと呼ばれる人たちで、ブームが過熱するにつれてその数を増やしていきました。

 人気モデルの抽選は基本的にひとり一回。そのため、転売ヤーは時間のある大学生から主婦、時にはホームレスにまで声をかけて「キャパ」と呼ばれる並び屋として雇い、抽選待ちの列に並ばせるようになりました。

 最も行列が長かったのは2015年にエア ジョーダン1 シカゴがリリースされた時で「アトモス」原宿店から「ブルックスブラザーズ」青山店まで抽選待ちの人たちが1キロメートル以上も並ぶことになりました。こうなると、もう割り込みや並び直しの監視も不可能です。周辺の店舗に迷惑がかかったこともあって、2017年に「ナイキ×オフホワイト」のTHE TENがリリースされた際には、抽選に参加するためには指定のスニーカーを履かなくてはならないというドレスコードを作ったところ並びの数は随分と減少、スニーカーファン中心に販売することができたように思います。

 しかし敵もさるもので、今度は転売ヤーがキャパたちに指定のスニーカーを履かせて並ばせるようになりました。今でも僕は東急プラザ表参道原宿を散歩することを日課にしていますが、それは屋上テラスがキャパたちの待機場所になっているから。キャパたちがいる日は「あぁ、近くで注目モデルの発売があるんだな」とわかる、という仕組みです。

 キャパたちはサイズが合っていなかったり服装とスニーカーがチグハグだったり、時にはソールが汚れないように底張りやビニール袋をかぶせたりしているため一目瞭然なのですが、ドレスコードを守っているため追い返すこともできない。そこで「アトモス」では彼らの行動を逆手にとって、スニーカー用のレインカバーを開発して販売をはじめました。雨対策はもちろん、新品のスニーカーを並びで履く時に汚したくない人たちの評判を呼び、今ではヒット商品のひとつになっています。

 また、転売ヤーは同じくEC販売においても人気のスニーカーを買い占めようと動きます。スニーカーブームの初期は、人気モデルのEC販売は早いもの順でした。そのため発売開始した瞬間にサイトにアクセスし、いち早く購入ボタンを押して住所やクレジットカードの番号を打ち込んで支払いをおこなえるかどうかが鍵でした。

 転売ヤーたちはそれに対抗して、botと呼ばれるプログラムを組んで、購入までの一連の流れを一瞬でおこなうようになり、オンラインショップでも発売開始から一瞬で完売するケースが増えてきました。

 bot独特の一定のリズムで打ち込むタイピングの動作で見分けたりと、販売側でも対策を取るものの、今度はそれに対応して音楽のビートに合わせて打ち込むbotが登場するという始末で、最終的に誰が優秀なbotを所有しているか、という戦いになってしまう。最終的に怪しい買い上げは手動でキャンセルするしかありませんが、こうなると一般のスニーカーファンはおろか、趣味の延長線上で楽しんでいるスニーカー投資家が入る余地もありません。そのためECでも抽選販売を導入したのですが、一足に対して数万件の応募があり当選確率は数百倍になることもしばしばで、しかも転売ヤーたちが複数アカウントを使って応募するため、狙っているモデルを買えるのは宝くじに当たるようなものです。

 そんな状況に対して「ナイキ」のアプリであるSNKRSでは、購入エントリーの手続きが完了すると先着抽選画面へ遷移し抽選方式で購入できる「先着抽選販売」や、商品の発売時刻になると抽選ボタンが表示され、参加時間内に抽選に参加すると後ほど結果を知ることができる「完全抽選販売」、ランダムで発売予定日より前にリリース予定のスニーカーを予約・購入することができる「限定オファー」と、複数の購入方法を用意することで、なるべく幅広い層にスニーカーを届けるように腐心するなど、メーカーも転売ヤーの存在を無視できないどころか強く意識する状況になっていきました。

■本明秀文プロフィール
atmos創設者。元Foot Locker atmos Japan最高経営責任者。1968年生まれ。90年代初頭より、米国フィラデルフィアの大学に通いながらスニーカー収集に情熱を注ぐ。商社勤務を経て、1996年に原宿で「CHAPTER」をオープン。2000年に「atmos」を開き、独自のディレクションが国内外で名を轟かせ、ニューヨーク店をはじめ海外13店舗を含む45店舗に拡大。2021年8月、米国の小売大手「Foot Locker」が約400億円で買収を発表。スニーカービジネスの表と裏を知り尽くす業界のキーパーソン。

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