近未来戦国メディアミックスプロジェクト・マガツノートが2023年12月17日、大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホールで開催した、スペシャルライブイベント『マガツノート「解放区」-冬の陣-』のオフィシャルレポートが到着した。
マガツノートは、2022年3月より始動しているプロジェクトで、ボイスドラマや出演声優によるオリジナル楽曲、ビジュアル系ロックバンドをはじめとするアーティストとコラボレーションしたライブイベントなど独自の活動で影響力を強めている。
2022年3月に東京・Zepp Diver City Tokyoでライブイベントをスタートさせて以降、各地で定期的に開催。声優陣とアーティストが楽曲でコラボしていくという画期的な試みが、声優ファン、アーティストファンの双方から支持を得ている。
この日は、声優陣として峯田大夢、小笠原仁、馬場惇平、美藤大樹、岡本和浩、神尾晋一郎の6人、アーティストサイドはRAZOR、BabyKingdom、luz、Ashmaze.、MAMA.(オープニングアクト)の5アーティストが出演。政宗役の峯田大夢がボーカルを務め、 HIROTO(アリス九號./Gt)、明希(シド/Ba)、影丸(-真天地開闢集団-ジグザグ/Dr)が脇を固める「解放区SP SESSION BAND」もアナウンスされ、謎と期待が高まるイベントとなっていた。
■MAMA.
オープニングアクトとして登場したのはMAMA.だ。本来この日は大阪を拠点にするnurie(eはアキュート・アクセント付)が登場することが公表されていたが、公演直前でメンバーの体調不良により出演キャンセル。nurieのギタリスト兼コンポーザーでもある廣瀬彩人は、マガツノートの楽曲制作にも関わっており、無念の欠場となった。
そんな事態を受け、急きょマガツノート公式Xで公募された“ピンチヒッター”にいくつかの勇敢なバンドが名乗りを挙げたが、結果としてnurieの盟友でもあるMAMA.が東京から参戦した。
代名詞的なダークミドルナンバー「BLACK DOG.」、疾走感あふれる「アシッド・ルーム」で畳みかけ、最後は絶望の淵を彷徨う「業」と、限られた時間であったが、MAMA.の無二の世界観を凝縮するステージを展開した。ダークネスを前面に押し出したメニューだったが、盟友の無念を晴らす気概に賛同するかの如く、早くから会場に詰め掛けた有害人類(※マガツノートファンの総称)は総立ちに近い状態となった。
オープニングアクトとは思えない精度の高いパフォーマンスで支配した最後、命依(Vo)の「2月10日に恵比寿リキッドルームでワンマンやるんで来てください!」という呼びかけも拍手喝采で、ネクストブレイカーの候補筆頭らしく役割をまっとうし、嵐のようにステージを去った。
■BabyKingdom
オープニングは政宗役の峯田大夢、秀吉役の小笠原仁、官兵衛役の馬場惇平による朗読からスタート。マガツノートのボイスドラマ『戦シーズン 壱st Battle』内で奪い損ねた季節を問わず咲き続ける桜=万年桜を再び奪いに行くという秀吉の意志を象徴するように、小笠原が「咲かねぇなら、咲かせるんだよ。あの万年桜をな!」と吠えると、先ほどまで桔梗色だったステージ背景の桜が黄金色に変わる。
峯田、小笠原、馬場の声優陣を交えた爽快感あふれる<秀吉・政宗連合軍>のテーマソング「GOLD」からコラボレーションステージを展開したのはBabyKingdom。声優陣とバンドのコラボレーションで会場が一つになるのはこのイベント独自の色だ。持ち味である楽しくエンタメ性あふれるパフォーマンスで空気を一転、ポップに染め上げた。
「ヘドバンできる人は頭振って!…できない人はヘドバンしてる人を見て笑ってください!」。様々な層の観客が集まるこのイベントを能動的に謳歌するバンドの前のめりな姿勢は、会場中にポジティブに蔓延し、事実、咲吾(Vo)を中心にこの環境が楽しくて仕方ないことが表情からも伝わってくる。
初見キラーのBabyKingdomは巧みな煽りとキャッチ―な楽曲で会場全体を巻き込んだ。エキゾチックなギターフレーズが印象的な「アンクドファラオ」、たこ焼きを模した振付がキュートな「大阪ちんぷんかんぷんROCK」と底抜けの明るさと魅力あるメロディで客席を味方につけた。
MCでは再び「僕らマガツノートの世界観に合ってるダークなバンドですか?大丈夫ですか?(笑)」と自虐を見せるも、咲吾の親しみやすいキャラクターに観客は大きな拍手で応えた。ジャンプと手拍子を巻き起こした最新シングル「PENGUIN DIVE」まで実力者らしくあっという間に駆け抜けてみせた。
■luz
再び舞台に闇を呼び戻したのはluz。暗がりから差し込むレーザーの中、ヘヴィな音像と美しい旋律の双璧が耳を掴む「FANATIC」で手始めに客席を揺らすと、続く「幽世」では性急感を助長するビートと、ゴシックなムードで浮世離れした世界観を紡いでいく。
五感を刺激するアクトで会場を引っ張るluzだが、マガツノートのイベントには初参加となる。コラボアーティストとして作品に楽曲提供して以来、イベント出演が切望されていたが、この日はそんな期待感に応えるように妖艶な空気で染め上げた。
「元気〜?大阪やろ!?もっと声出せや!」とヴァンパイアのような麗しいビジュアルからはかなりギャップのある、人間らしさあふれるMCは好印象で、「普段は歌い手ですが、ビジュアル系…声優…交流ができることをうれしく思います」と謙虚にこのイベントへの想いを述べた。
「マガツノートのために書き下した曲です」と前置きされて披露されたのは、「悪魔斡旋会社DD」のイメージソングである荘厳な「Doll in Doom」。畳みかけるように続いた「クイーンオブハート」では、心地よいシャッフルビートと艶めかしい腰使いでも観客の視線を欲しいままにした。
エロティックでもあり悲哀と情熱を帯びた歌唱と、緩急をつけた表現は最後までブレることなく、最新アルバム『AMULET』のオープニングナンバーでもある「MONSTER’S CRY」に応える有害人類のヘドバンの風速を上げて華麗にステージを去った。
■バラエティコーナー
中盤に差し掛かり行われたのはこのイベントならではのバラエティブロック。まず最初に司会を務めたのは官兵衛役の馬場惇平とRAZORのギタリスト衍龍という意外な組み合わせ。衍龍の「おいでおいで〜」の呼び込みで登場したのは8人の出演者。神尾晋一郎と猟牙(RAZOR)、岡本和浩と諒(Ashmaze.)、美藤大樹と詩結(Ashmaze.)、そして峯田大夢とステージを終えたばかりのluzという組み合わせだ。
4チームに分かれた出演者は高級焼肉食事券を賭けてイントロドンクイズに挑戦。このクイズ、マガツノートの楽曲をイントロ早押しで当てるだけでなく、ステージ中央に置かれたスタンドマイクで見事歌い切ればボーナスポイントがもらえる仕組み。
賞品を賭けて盛り上がる演者と、歌声を堪能したい有害人類で会場は大盛り上がり。全6問の最後、峯田大夢がNIGHTMAREの「ジャイアニズム天」を柩のコーラス部分まで再現する貴重なシーンも。結果、同点になった2チームの詩結とluzによるじゃんけん対決を家康らしい“策略”をもって詩結が制し、チーム家康が優勝した。宣言したものと違う手を出すなど日頃クールな詩結のお茶目な一面や、「最後はじゃんけんかい!」などという演者からのツッコミも相まって、和気あいあいとした時間となった。
バラエティブロックの後半は、秀吉役の小笠原仁と「マガツノートでは個人的に秀吉推し」と語る咲吾(BabyKingdom)が司会を執り、会場参加型のその名も<有害人類大玉転がし>を開催。紅組こと“プリティチーム”は、織田信長役の神尾晋一郎、RAZORの猟牙と衍龍。対する白組こと“厄介チーム”は、政宗役の峯田大夢、官兵衛役の馬場惇平、もにょ(BabyKingdom)、luzの4人。
自チームの大玉を全てステージ上に早く揃えたチームが勝ち…だが、思いがけぬ展開に。勝利したチームには景品が贈られたが、前半の高級焼肉食事券との落差に笑いが起こった。声優陣とバンドマンの素の部分が垣間見える…どころではない充実のひと時は、このイベントでしか目撃できない光景だ。
■Ashmaze.
再びマガツノートの世界へ誘ったのは家康役の美藤大樹、忠勝役の岡本和浩による朗読。ARKを半ば追われる形で飛び出し、「解放区」に移った<ホリーホック>は、理不尽だらけの世界のなかで絆を深め、家康への忠誠を語る忠勝。忠勝の想いを受けて決意を強めた家康。
登場するなり「一花咲かせようぜ大阪!!」と双真(Vo)の咆哮と共になだれ込んだのは、そんな世界観を象徴する「カザハナ」。各パートの手数の多さ、主張の強さとドラマティックな展開はまさにAshmaze.のソレであるが、抜群の個性をもつ双真のドライに絡みつく声質もバンドの象徴だ。そこに中性的な美藤、太く逞しい岡本の歌唱が加わることで楽曲の表情が立体的に増幅していく様は日頃Ashmaze.を愛聴しているリスナーにとっても新鮮だったのではないか。
彼らの楽曲の秘めたる可能性を感じずにはいられないシーンだった。また、卓越した演奏力を武器とするバンドだが、一聴するとか細さを感じさせるにも関わらず、安定してタフな歌唱を繰り広げるボーカリスト・双真の存在感も実に際立っていた。
美藤と岡本がステージを後にすると全4曲を披露したAshmaze.。全国ツアーの合間ということも影響してか、クールなイメージに反してアグレッシブに傾倒したアクトを振りまいた。攻撃的なレパートリーの中から新旧を織り交ぜ、「拝啓、嫌いなお前へ」「INNOCENCE」と必殺曲の応酬で会場をあっという間に混沌の渦に巻き込んだ。
テクニックに強いアイデンティティーも持つバンドが、ダイナミズムにシフトしたときの威力は相当なもの。ホールでのライブ経験は決して多いと言えないが、そのスキルや経験値、シーンにおける立ち位置はすでにホールクラスであることを存分に証明し、僅か4曲とは思えない濃度でステージを下りた。
■解放区SP SESSION BAND
政宗役の峯田大夢をボーカルに据え、ギターにHIROTO(アリス九號.)、ベースは明希(シド)、ドラムを影丸(-真天地開闢集団-ジグザグ)が務めるというまさしく夢のSESSION BAND。配信では放送されない会場限定のスペシャルなステージに、会場はひと際大きく沸き上がった。
1曲目は事前アナウンスの通り、初期LUNA SEAの名曲「JESUS」をカバー。峯田の囁く<Jesus,don’t you love me?>が冴えわたり、本家リスペクトを存分に感じさせつつも、ビブラートとウィスパーの巧みな使い分けでこのバンドなりのテイストに昇華していく。
演奏陣もLUNA SEAの熱心なフォロワーであることは周知だが、エモーショナルなプレイと抜群のスキルを誇りながらスティック捌きでも魅せる影丸、大きなアクションで観客と対峙する明希、衛星のようにステージを駆け巡る運動量がお馴染みのHIROTOとまさに“どこを見ればいいのかわからない”を体現。
続くnurieのギタリスト廣瀬彩人作曲の「破壊天秤」で峯田は悪魔的なグロウルを響かせたかと思えば、艶めかしい歌唱でこの豪華演奏陣を牽引し、バンドマン顔負けのステージングで魅了する。「有害人類!わかってるよな?お前らの首、ここで終わらせろ!」の叫びに、観客はヘドバン、拳、ペンライトと形にはまることなく自由に応える。
ラストは政宗が所属する<ARK監査局>の陣営イメージソング「リブラ」を4人ver.で披露。アルルカン・暁(Vo)が作詞、奈緒(Gt)が作曲のメロディアスなこの曲。「そりゃそうだろ」ではあるのだが、とにかく演奏力が並外れている。わずか3曲のためのSESSION BANDとは微塵も感じさせない高い熱量のプレイは、それぞれの所属バンドのエッセンスを帯びた、まさに無比のものであったし、特筆すべきはその音の波を乗りこなす峯田の存在感ではなかったか。
「またこの顔ぶれで集いたい」といった旨の発言が飛び出したのもうなずける、一夜限りにしておくのはあまりにもったいない銀河系バンドのステージは、会場を訪れた有害人類にとっても忘れ得ぬものとして記憶に刻まれたことは想像に難くない。
■RAZOR
イベントもいよいよ終盤。期待が高まる中、織田信長役の神尾晋一郎が舞台に上がる。織田信長は本能寺で死したと語り継がれる史実への疑問を投げかける朗読は、己の存在を証明できるのは己のみであり、目で見たものだけが真実ではないのか。「お前たちの存在を、証明しろ」と強いメッセージを投げかける。
序曲に据えられたのは、<第六天魔王軍>のイメージソングである「存在証明」。メタリックなRAZOR節と開放感あるサビメロの流麗さが印象的な1曲。猟牙のハイトーンと神尾の低音ボイスと妖しく響く高笑いで、RAZORが内包する激しさにエレガントさが加わる化学反応が起こった。
泰然たる振る舞いでありながらどこまでも華やかなステージに有害人類も即座に反応。金髪ポニーテールでキメた猟牙のシルエットはどこか蛮骨な戦国武将を想起させ、黒と赤のロングガウンを纏い、立ち姿が美しい神尾との対比が映える。
激しくも疾走感のある「追憶の果てに眠れ」も猟牙と神尾の声が、一定の距離を保ちながら溶け合い織りなす甘美なハーモニーが圧巻で、ここが座席ありのホールであることを忘れさせるような縦ノリを巻き起こした。
その勢いのまま雪崩れ込んだRAZORのステージは、「GRAVITY EMOTION」からスタート。激しい音像の印象が強いRAZORだが、フックになるメロディーラインと華やかさを共存しているのが強固な武器で、コーラスの美しいこの曲からマガツノートイベントの顔として会場を支配していく。
あらかじめプレイすることが予告されていた「嫌、嫌、嫌。」では猟牙が往年のロックスターばりにマイクスタンドを掲げ、すでに温まっている会場全体をさらにつぶさにアジテートしていく。激しいリフと美しいメロディーの掛け合わせは2000年以降のビジュアル系ロックの王道とも言えるもので、ビジュアル系に触れていない層には名刺代わりになるものでありながら、1曲の中で様々な展開が仕掛けられているのが、一筋縄ではいかないRAZORの魅力だ。
「我々、バンド野郎たちと声優野郎たちとの混ざり合いで生まれたイベントが成長し、大阪で開催できて嬉しい。これからもイカれたバンドとイカれた声優でもっとデカいことやっていくからマガツノートに期待しててくれ!」とマガツノート愛を高らかに宣言した。
ハイテンションで駆け抜けた「瓦礫」、打ち鳴らされたドラムからリズムインで「待ってました!」の歓声が上がった黄金のメロディーが炸裂する名曲「千年ノ色彩」と繋いで、ラストに披露したのはストレートなメッセージが響く「nothing here」だった。いくら着飾ろうと拭えない人類が持つ愚かな内面と痛みを孕んだ激情型ロックンロールを問いかけるように叩きつけ、ステージを締めくくった。
■ALL CAST SESSION
イベントのラストは峯田、小笠原、馬場、美藤、岡本、神尾が再び登壇。スクリーンに投影された映像で『戦シーズン 参rd Battle 電影乱世』の放送の決定というビッグサプライズが発表されると、歓声と大きな拍手が巻き起こった。さらに新キャラクターである遠州のCVを住谷哲栄が務めることも併せてアナウンスされた。
加えて、マガツノートとGEKIROCK CLOTHINGとのコラボグッズのロングスリーブTシャツとウエストバッグの発売、<ホリーホック>とAshmaze.のコラボ楽曲「カザハナ」のサブスク配信スタートと、有害人類にとってうれしい発表が相次いだ。
6人は、再登場したRAZORの獰猛な演奏を背に受け、とどめとばかりに「DEVIL ASYLUM」を投下。集結した有害人類は、ジャンルの分け隔てなく最後の瞬間まで音を満喫してみせた。キャスト陣が横一線に並ぶ絵は壮観で、ヘヴィな楽曲ながらハッピーな空気を充満させ大団円の中で長時間に渡ったイベントは幕を下ろした。
『マガツノート「解放区」-冬の陣-』は、この日の大阪公演に続いて、1月28日に東京・パルテノン多摩で開催される。
文:山内秀一
■セットリスト
【MAMA.】
SE.KAGUYA
01. BLACK DOG.
02. アシッド・ルーム
03. 業
【峯田大夢・小笠原仁・馬場惇平×BabyKingdom】
01. GOLD
【BabyKingdom】
1.アンクドファラオ
2.大阪ちんぷんかんぷんROCK
3.めっちゃアーメン
4.PENGUIN DIVE
【luz】
1.FANATIC
2.幽世
3.Doll in Doom
4.クイーンオブハート
5.MONSTER’S CRY
【美藤大樹×岡本和浩×Ashmaze.】
1. カザハナ
【Ashmaze.】
1.カゲロウの錯覚
2.ニルヴァーナ
3.拝啓、嫌いなお前へ
4.INNOCENCE
【解放区SP SESSION BAND】
1.JESUS(LUNA SEA Cover)
2.破壊天秤
3.リブラ
【神尾晋一郎×RAZOR】
1.存在証明
2.追憶の果てに眠れ
【RAZOR】
1.GRAVITY EMOTION
2.嫌、嫌、嫌。
3.瓦礫
4.千年ノ色彩
5.nothing here
【峯田・小笠原・馬場・岡本・美藤・神尾】
01. DEVIL ASYLUM
■『解放区 -冬の陣-』東京公演日程
1月28日(日) 東京・パルテノン多摩
出演:峯田大夢/堀江瞬/小笠原仁/馬場惇平/仲村宗悟/岡本信彦/大河元気/美藤大樹/岡本和浩/沢城千春/野島健児/小野将夢/堂島颯人/零[Hz]/ZOMBIE/ザアザア/HAZUKI/摩天楼オペラ<GUEST>deadman
マガツノートは、2022年3月より始動しているプロジェクトで、ボイスドラマや出演声優によるオリジナル楽曲、ビジュアル系ロックバンドをはじめとするアーティストとコラボレーションしたライブイベントなど独自の活動で影響力を強めている。
2022年3月に東京・Zepp Diver City Tokyoでライブイベントをスタートさせて以降、各地で定期的に開催。声優陣とアーティストが楽曲でコラボしていくという画期的な試みが、声優ファン、アーティストファンの双方から支持を得ている。
この日は、声優陣として峯田大夢、小笠原仁、馬場惇平、美藤大樹、岡本和浩、神尾晋一郎の6人、アーティストサイドはRAZOR、BabyKingdom、luz、Ashmaze.、MAMA.(オープニングアクト)の5アーティストが出演。政宗役の峯田大夢がボーカルを務め、 HIROTO(アリス九號./Gt)、明希(シド/Ba)、影丸(-真天地開闢集団-ジグザグ/Dr)が脇を固める「解放区SP SESSION BAND」もアナウンスされ、謎と期待が高まるイベントとなっていた。
■MAMA.
オープニングアクトとして登場したのはMAMA.だ。本来この日は大阪を拠点にするnurie(eはアキュート・アクセント付)が登場することが公表されていたが、公演直前でメンバーの体調不良により出演キャンセル。nurieのギタリスト兼コンポーザーでもある廣瀬彩人は、マガツノートの楽曲制作にも関わっており、無念の欠場となった。
そんな事態を受け、急きょマガツノート公式Xで公募された“ピンチヒッター”にいくつかの勇敢なバンドが名乗りを挙げたが、結果としてnurieの盟友でもあるMAMA.が東京から参戦した。
代名詞的なダークミドルナンバー「BLACK DOG.」、疾走感あふれる「アシッド・ルーム」で畳みかけ、最後は絶望の淵を彷徨う「業」と、限られた時間であったが、MAMA.の無二の世界観を凝縮するステージを展開した。ダークネスを前面に押し出したメニューだったが、盟友の無念を晴らす気概に賛同するかの如く、早くから会場に詰め掛けた有害人類(※マガツノートファンの総称)は総立ちに近い状態となった。
オープニングアクトとは思えない精度の高いパフォーマンスで支配した最後、命依(Vo)の「2月10日に恵比寿リキッドルームでワンマンやるんで来てください!」という呼びかけも拍手喝采で、ネクストブレイカーの候補筆頭らしく役割をまっとうし、嵐のようにステージを去った。
■BabyKingdom
オープニングは政宗役の峯田大夢、秀吉役の小笠原仁、官兵衛役の馬場惇平による朗読からスタート。マガツノートのボイスドラマ『戦シーズン 壱st Battle』内で奪い損ねた季節を問わず咲き続ける桜=万年桜を再び奪いに行くという秀吉の意志を象徴するように、小笠原が「咲かねぇなら、咲かせるんだよ。あの万年桜をな!」と吠えると、先ほどまで桔梗色だったステージ背景の桜が黄金色に変わる。
峯田、小笠原、馬場の声優陣を交えた爽快感あふれる<秀吉・政宗連合軍>のテーマソング「GOLD」からコラボレーションステージを展開したのはBabyKingdom。声優陣とバンドのコラボレーションで会場が一つになるのはこのイベント独自の色だ。持ち味である楽しくエンタメ性あふれるパフォーマンスで空気を一転、ポップに染め上げた。
「ヘドバンできる人は頭振って!…できない人はヘドバンしてる人を見て笑ってください!」。様々な層の観客が集まるこのイベントを能動的に謳歌するバンドの前のめりな姿勢は、会場中にポジティブに蔓延し、事実、咲吾(Vo)を中心にこの環境が楽しくて仕方ないことが表情からも伝わってくる。
初見キラーのBabyKingdomは巧みな煽りとキャッチ―な楽曲で会場全体を巻き込んだ。エキゾチックなギターフレーズが印象的な「アンクドファラオ」、たこ焼きを模した振付がキュートな「大阪ちんぷんかんぷんROCK」と底抜けの明るさと魅力あるメロディで客席を味方につけた。
MCでは再び「僕らマガツノートの世界観に合ってるダークなバンドですか?大丈夫ですか?(笑)」と自虐を見せるも、咲吾の親しみやすいキャラクターに観客は大きな拍手で応えた。ジャンプと手拍子を巻き起こした最新シングル「PENGUIN DIVE」まで実力者らしくあっという間に駆け抜けてみせた。
■luz
再び舞台に闇を呼び戻したのはluz。暗がりから差し込むレーザーの中、ヘヴィな音像と美しい旋律の双璧が耳を掴む「FANATIC」で手始めに客席を揺らすと、続く「幽世」では性急感を助長するビートと、ゴシックなムードで浮世離れした世界観を紡いでいく。
五感を刺激するアクトで会場を引っ張るluzだが、マガツノートのイベントには初参加となる。コラボアーティストとして作品に楽曲提供して以来、イベント出演が切望されていたが、この日はそんな期待感に応えるように妖艶な空気で染め上げた。
「元気〜?大阪やろ!?もっと声出せや!」とヴァンパイアのような麗しいビジュアルからはかなりギャップのある、人間らしさあふれるMCは好印象で、「普段は歌い手ですが、ビジュアル系…声優…交流ができることをうれしく思います」と謙虚にこのイベントへの想いを述べた。
「マガツノートのために書き下した曲です」と前置きされて披露されたのは、「悪魔斡旋会社DD」のイメージソングである荘厳な「Doll in Doom」。畳みかけるように続いた「クイーンオブハート」では、心地よいシャッフルビートと艶めかしい腰使いでも観客の視線を欲しいままにした。
エロティックでもあり悲哀と情熱を帯びた歌唱と、緩急をつけた表現は最後までブレることなく、最新アルバム『AMULET』のオープニングナンバーでもある「MONSTER’S CRY」に応える有害人類のヘドバンの風速を上げて華麗にステージを去った。
■バラエティコーナー
中盤に差し掛かり行われたのはこのイベントならではのバラエティブロック。まず最初に司会を務めたのは官兵衛役の馬場惇平とRAZORのギタリスト衍龍という意外な組み合わせ。衍龍の「おいでおいで〜」の呼び込みで登場したのは8人の出演者。神尾晋一郎と猟牙(RAZOR)、岡本和浩と諒(Ashmaze.)、美藤大樹と詩結(Ashmaze.)、そして峯田大夢とステージを終えたばかりのluzという組み合わせだ。
4チームに分かれた出演者は高級焼肉食事券を賭けてイントロドンクイズに挑戦。このクイズ、マガツノートの楽曲をイントロ早押しで当てるだけでなく、ステージ中央に置かれたスタンドマイクで見事歌い切ればボーナスポイントがもらえる仕組み。
賞品を賭けて盛り上がる演者と、歌声を堪能したい有害人類で会場は大盛り上がり。全6問の最後、峯田大夢がNIGHTMAREの「ジャイアニズム天」を柩のコーラス部分まで再現する貴重なシーンも。結果、同点になった2チームの詩結とluzによるじゃんけん対決を家康らしい“策略”をもって詩結が制し、チーム家康が優勝した。宣言したものと違う手を出すなど日頃クールな詩結のお茶目な一面や、「最後はじゃんけんかい!」などという演者からのツッコミも相まって、和気あいあいとした時間となった。
バラエティブロックの後半は、秀吉役の小笠原仁と「マガツノートでは個人的に秀吉推し」と語る咲吾(BabyKingdom)が司会を執り、会場参加型のその名も<有害人類大玉転がし>を開催。紅組こと“プリティチーム”は、織田信長役の神尾晋一郎、RAZORの猟牙と衍龍。対する白組こと“厄介チーム”は、政宗役の峯田大夢、官兵衛役の馬場惇平、もにょ(BabyKingdom)、luzの4人。
自チームの大玉を全てステージ上に早く揃えたチームが勝ち…だが、思いがけぬ展開に。勝利したチームには景品が贈られたが、前半の高級焼肉食事券との落差に笑いが起こった。声優陣とバンドマンの素の部分が垣間見える…どころではない充実のひと時は、このイベントでしか目撃できない光景だ。
■Ashmaze.
再びマガツノートの世界へ誘ったのは家康役の美藤大樹、忠勝役の岡本和浩による朗読。ARKを半ば追われる形で飛び出し、「解放区」に移った<ホリーホック>は、理不尽だらけの世界のなかで絆を深め、家康への忠誠を語る忠勝。忠勝の想いを受けて決意を強めた家康。
登場するなり「一花咲かせようぜ大阪!!」と双真(Vo)の咆哮と共になだれ込んだのは、そんな世界観を象徴する「カザハナ」。各パートの手数の多さ、主張の強さとドラマティックな展開はまさにAshmaze.のソレであるが、抜群の個性をもつ双真のドライに絡みつく声質もバンドの象徴だ。そこに中性的な美藤、太く逞しい岡本の歌唱が加わることで楽曲の表情が立体的に増幅していく様は日頃Ashmaze.を愛聴しているリスナーにとっても新鮮だったのではないか。
彼らの楽曲の秘めたる可能性を感じずにはいられないシーンだった。また、卓越した演奏力を武器とするバンドだが、一聴するとか細さを感じさせるにも関わらず、安定してタフな歌唱を繰り広げるボーカリスト・双真の存在感も実に際立っていた。
美藤と岡本がステージを後にすると全4曲を披露したAshmaze.。全国ツアーの合間ということも影響してか、クールなイメージに反してアグレッシブに傾倒したアクトを振りまいた。攻撃的なレパートリーの中から新旧を織り交ぜ、「拝啓、嫌いなお前へ」「INNOCENCE」と必殺曲の応酬で会場をあっという間に混沌の渦に巻き込んだ。
テクニックに強いアイデンティティーも持つバンドが、ダイナミズムにシフトしたときの威力は相当なもの。ホールでのライブ経験は決して多いと言えないが、そのスキルや経験値、シーンにおける立ち位置はすでにホールクラスであることを存分に証明し、僅か4曲とは思えない濃度でステージを下りた。
■解放区SP SESSION BAND
政宗役の峯田大夢をボーカルに据え、ギターにHIROTO(アリス九號.)、ベースは明希(シド)、ドラムを影丸(-真天地開闢集団-ジグザグ)が務めるというまさしく夢のSESSION BAND。配信では放送されない会場限定のスペシャルなステージに、会場はひと際大きく沸き上がった。
1曲目は事前アナウンスの通り、初期LUNA SEAの名曲「JESUS」をカバー。峯田の囁く<Jesus,don’t you love me?>が冴えわたり、本家リスペクトを存分に感じさせつつも、ビブラートとウィスパーの巧みな使い分けでこのバンドなりのテイストに昇華していく。
演奏陣もLUNA SEAの熱心なフォロワーであることは周知だが、エモーショナルなプレイと抜群のスキルを誇りながらスティック捌きでも魅せる影丸、大きなアクションで観客と対峙する明希、衛星のようにステージを駆け巡る運動量がお馴染みのHIROTOとまさに“どこを見ればいいのかわからない”を体現。
続くnurieのギタリスト廣瀬彩人作曲の「破壊天秤」で峯田は悪魔的なグロウルを響かせたかと思えば、艶めかしい歌唱でこの豪華演奏陣を牽引し、バンドマン顔負けのステージングで魅了する。「有害人類!わかってるよな?お前らの首、ここで終わらせろ!」の叫びに、観客はヘドバン、拳、ペンライトと形にはまることなく自由に応える。
ラストは政宗が所属する<ARK監査局>の陣営イメージソング「リブラ」を4人ver.で披露。アルルカン・暁(Vo)が作詞、奈緒(Gt)が作曲のメロディアスなこの曲。「そりゃそうだろ」ではあるのだが、とにかく演奏力が並外れている。わずか3曲のためのSESSION BANDとは微塵も感じさせない高い熱量のプレイは、それぞれの所属バンドのエッセンスを帯びた、まさに無比のものであったし、特筆すべきはその音の波を乗りこなす峯田の存在感ではなかったか。
「またこの顔ぶれで集いたい」といった旨の発言が飛び出したのもうなずける、一夜限りにしておくのはあまりにもったいない銀河系バンドのステージは、会場を訪れた有害人類にとっても忘れ得ぬものとして記憶に刻まれたことは想像に難くない。
■RAZOR
イベントもいよいよ終盤。期待が高まる中、織田信長役の神尾晋一郎が舞台に上がる。織田信長は本能寺で死したと語り継がれる史実への疑問を投げかける朗読は、己の存在を証明できるのは己のみであり、目で見たものだけが真実ではないのか。「お前たちの存在を、証明しろ」と強いメッセージを投げかける。
序曲に据えられたのは、<第六天魔王軍>のイメージソングである「存在証明」。メタリックなRAZOR節と開放感あるサビメロの流麗さが印象的な1曲。猟牙のハイトーンと神尾の低音ボイスと妖しく響く高笑いで、RAZORが内包する激しさにエレガントさが加わる化学反応が起こった。
泰然たる振る舞いでありながらどこまでも華やかなステージに有害人類も即座に反応。金髪ポニーテールでキメた猟牙のシルエットはどこか蛮骨な戦国武将を想起させ、黒と赤のロングガウンを纏い、立ち姿が美しい神尾との対比が映える。
激しくも疾走感のある「追憶の果てに眠れ」も猟牙と神尾の声が、一定の距離を保ちながら溶け合い織りなす甘美なハーモニーが圧巻で、ここが座席ありのホールであることを忘れさせるような縦ノリを巻き起こした。
その勢いのまま雪崩れ込んだRAZORのステージは、「GRAVITY EMOTION」からスタート。激しい音像の印象が強いRAZORだが、フックになるメロディーラインと華やかさを共存しているのが強固な武器で、コーラスの美しいこの曲からマガツノートイベントの顔として会場を支配していく。
あらかじめプレイすることが予告されていた「嫌、嫌、嫌。」では猟牙が往年のロックスターばりにマイクスタンドを掲げ、すでに温まっている会場全体をさらにつぶさにアジテートしていく。激しいリフと美しいメロディーの掛け合わせは2000年以降のビジュアル系ロックの王道とも言えるもので、ビジュアル系に触れていない層には名刺代わりになるものでありながら、1曲の中で様々な展開が仕掛けられているのが、一筋縄ではいかないRAZORの魅力だ。
「我々、バンド野郎たちと声優野郎たちとの混ざり合いで生まれたイベントが成長し、大阪で開催できて嬉しい。これからもイカれたバンドとイカれた声優でもっとデカいことやっていくからマガツノートに期待しててくれ!」とマガツノート愛を高らかに宣言した。
ハイテンションで駆け抜けた「瓦礫」、打ち鳴らされたドラムからリズムインで「待ってました!」の歓声が上がった黄金のメロディーが炸裂する名曲「千年ノ色彩」と繋いで、ラストに披露したのはストレートなメッセージが響く「nothing here」だった。いくら着飾ろうと拭えない人類が持つ愚かな内面と痛みを孕んだ激情型ロックンロールを問いかけるように叩きつけ、ステージを締めくくった。
■ALL CAST SESSION
イベントのラストは峯田、小笠原、馬場、美藤、岡本、神尾が再び登壇。スクリーンに投影された映像で『戦シーズン 参rd Battle 電影乱世』の放送の決定というビッグサプライズが発表されると、歓声と大きな拍手が巻き起こった。さらに新キャラクターである遠州のCVを住谷哲栄が務めることも併せてアナウンスされた。
加えて、マガツノートとGEKIROCK CLOTHINGとのコラボグッズのロングスリーブTシャツとウエストバッグの発売、<ホリーホック>とAshmaze.のコラボ楽曲「カザハナ」のサブスク配信スタートと、有害人類にとってうれしい発表が相次いだ。
6人は、再登場したRAZORの獰猛な演奏を背に受け、とどめとばかりに「DEVIL ASYLUM」を投下。集結した有害人類は、ジャンルの分け隔てなく最後の瞬間まで音を満喫してみせた。キャスト陣が横一線に並ぶ絵は壮観で、ヘヴィな楽曲ながらハッピーな空気を充満させ大団円の中で長時間に渡ったイベントは幕を下ろした。
『マガツノート「解放区」-冬の陣-』は、この日の大阪公演に続いて、1月28日に東京・パルテノン多摩で開催される。
文:山内秀一
■セットリスト
【MAMA.】
SE.KAGUYA
01. BLACK DOG.
02. アシッド・ルーム
03. 業
【峯田大夢・小笠原仁・馬場惇平×BabyKingdom】
01. GOLD
【BabyKingdom】
1.アンクドファラオ
2.大阪ちんぷんかんぷんROCK
3.めっちゃアーメン
4.PENGUIN DIVE
【luz】
1.FANATIC
2.幽世
3.Doll in Doom
4.クイーンオブハート
5.MONSTER’S CRY
【美藤大樹×岡本和浩×Ashmaze.】
1. カザハナ
【Ashmaze.】
1.カゲロウの錯覚
2.ニルヴァーナ
3.拝啓、嫌いなお前へ
4.INNOCENCE
【解放区SP SESSION BAND】
1.JESUS(LUNA SEA Cover)
2.破壊天秤
3.リブラ
【神尾晋一郎×RAZOR】
1.存在証明
2.追憶の果てに眠れ
【RAZOR】
1.GRAVITY EMOTION
2.嫌、嫌、嫌。
3.瓦礫
4.千年ノ色彩
5.nothing here
【峯田・小笠原・馬場・岡本・美藤・神尾】
01. DEVIL ASYLUM
■『解放区 -冬の陣-』東京公演日程
1月28日(日) 東京・パルテノン多摩
出演:峯田大夢/堀江瞬/小笠原仁/馬場惇平/仲村宗悟/岡本信彦/大河元気/美藤大樹/岡本和浩/沢城千春/野島健児/小野将夢/堂島颯人/零[Hz]/ZOMBIE/ザアザア/HAZUKI/摩天楼オペラ<GUEST>deadman
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— マガツノート【公式】 (@MAGATSUNOTE) January 16, 2024
#解放区_冬の陣 東京公演
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特級有害人類席<上手・中央>エリアは残りわずか??
▼ライブ詳細https://t.co/NrtbkAd7LS pic.twitter.com/JOldebVfs9
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2024/01/24