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映画『あの花』、「泣ける!」わかりやすい口コミで映画も原作小説も主題歌も大ヒット

 現代の女子高生と、戦時中の特攻隊員との時を超えたラブストーリー、映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』が、1月22日時点で累計入場者数270万人超え、興行収入は34.6億円を突破する大ヒットとなっている。あわせて、汐見夏衛による原作小説(スターツ出版文庫)もシリーズ累計100万部を突破。福山雅治が歌う主題歌「想望」も1月16日発表の最新「オリコン週間ストリーミングランキング」で初めてTOP50入りとなる42位にまで浮上している。映画を中心に、近年稀に見る美しい相乗効果が生み出されている『あの花〜』ヒット現象を取材した。

『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(公開中)(C)2023「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」製作委員会 

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■『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』はどんな映画?

 TikTokで話題となり、「初めて本を読んで泣いた」「号泣してやばい」「同じ世代の人たちに読んでほしい」など、10代を中心に人気の原作小説を、NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』(22年後期)をはじめ主演作が相次ぐ福原遥、現在放送中の同局連続テレビ小説『ブギウギ』で話題の水上恒司のダブル主演で映画化。

 親や学校、すべてにイライラして不満ばかりの女子高生・百合(福原)は、ある日、母親とけんかをして家出をし、目が覚めるとそこは、1945年、戦時中の日本だった。偶然通りかかった彰(水上)に助けられ、彼の誠実さや優しさにどんどんひかれていく百合。だが彰は特攻隊員で、程なく命がけで戦地に飛ぶ運命だった――。(※原作では百合は中学2年生だが、映画では高校生に設定が変更されている)

■上映後、泣きながら出てくる観客たち

 今月14日、東京・新宿ピカデリーでは、公開から6週目にも関わらず、各上映回に多くの観客が訪れ、ほぼ満席になる回も。上映後、作品を見た人の感想を聞こうと声をかけたのだが、思っていた以上に泣きながら出て来た人が多く、余韻をぶち壊すようで甚だ無粋だった。

 それでも立ち止まって取材に応じてくれた40代の男性は、2回目の鑑賞で、「戦争体験していない自分でも、物語の深いストーリーに心を吸い込まれました。エンディングで彰が百合に宛てた手紙が印象に残りました」と感想を語り、さらに「あと1回は、観に来ると思う」と話していた。

 20代の女性は、「かっこいいと思っていた」彰役の水上がきっかけで本作に興味を持ち、友人を誘って来場。「百合に感情移入しちゃいました。最初は現代に帰りたくて泣いていた彼女が、彰と出会って、彼のことが好きになっていって。タイムスリップとかありえない話だけど、2人の恋が実ってほしいな、と思って…」と思い出し泣き。誘われた友人の20代女性は「もともと戦争に関する番組や映画に興味があったので、誘ってもらえてよかった」と明かしていた。

 17歳・高校生の女性は、読書好きで原作者の汐見氏のファンでもあり、小説を読んでいて結末を知っていたが、「私も母とけんかすることがよくあって…。すべてが当たり前のように思っていたけど、家に帰ったら大切に育ててくれている家族に感謝を伝えたい、と思いました」と改めて感動した様子。一緒に観に来た同級生の女性は「同じような年代の人たちが命をかけて戦ってくれたから、今の生活があるんだな、と思いました。戦争は絶対ダメだと思いました」と話してくれた。

2024年1月14日、新宿ピカデリーにて撮影 (C)ORICON NewS inc.

2024年1月14日、新宿ピカデリーにて撮影 (C)ORICON NewS inc.

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 14歳・中学生の男性は、「地理の先生が授業中にこの映画の予告編を見せてくれて、感動できそうだな、と印象に残っていたので、友達を誘って観に来ました」。期待通りだったようで、「百合が『彰っ』と名前を叫びながら特攻機を追いかけていくところで泣きました」と満足げ。同行した友人4人の中には、「本当は『SPY×FAMILY』が見たかった」と白状した人もいたが、『あの花』もまんざらでもなかった様子だった。

2024年1月14日、新宿ピカデリーにて撮影 (C)ORICON NewS inc.

2024年1月14日、新宿ピカデリーにて撮影 (C)ORICON NewS inc.

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■複合的な口コミ効果で客層広がる

 公開月の12月は、新作映画にアニメーション作品が多く、ティーンや若者世代をターゲットに見据えた邦画実写作品の競合がちょうどなかったことから、配給の松竹もある程度のヒットは見込んでいたが、予想を上回る反響があった。

 公開初日の12月8日から10日までの週末3日間で動員24万6500人、興収3億2200万円をあげ、その週の映画ランキング(※興行通信社調べ、以下同)2位に初登場(1位は『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』だったので、邦画作品では1位)。

 公開直後からSNSでは「人生で一番泣いた映画」「名作すぎてどうしよう」「全人類に観てほしい」などと、感想が多数投稿され、「泣ける」という口コミが広がった。TikTokでは、映画公式アカウントの投稿を含め、さまざまなユーザーが『あの花』関連の動画を投稿。「#あの花が咲く丘で君とまた出会えたら」のハッシュタグがついた動画だけで総再生回数は2億9500万視聴(1月19日時点)にも上っている。各動画にコメントがつき、そのコメントに「いいね」やさらにコメントがついて…と、プチバズりが続出。SNSで口コミが大きく広がった。

 4週目の12月29日から上映映画館が増える異例の事態に。年が明けた1月12日に30億円を突破し、1ヶ月が過ぎてもその勢いは衰えておらず、最新の映画ランキング(1月19日〜21日)では前週4位から3位に浮上した。

 原作小説も映画化発表時点(2023年5月)ではシリーズ累計発行部数50万部だったが、発表後に急伸。昨年11月30日発表の「オリコン年間“本”ランキング2023」(集計期間:2022/12/5付〜2023/11/27付※実質集計期間:2022年11月21日〜2023年11月19日)では、新刊が居並ぶ文庫部門で19位にランクインした。

 映画公開後はさらに売り上げを伸ばし、「オリコン週間 文庫ランキング」3週連続で1位を記録(集計期間:2023/12/25付〜2024/01/08付※実質集計期間:2023年12月11日〜12月31日)。在庫が品薄となり、同ランキングの順位が下がるという事態となり、出版元では増刷をかけて、1月10日にシリーズ累計発行部数100万部突破して、102万部となったことを発表した。

 福山が歌う主題歌「想望」は映画のために書き下ろした新曲で、昨年12月4日に配信リリース。こちらも、「エンドロールで涙腺が崩壊した」「歌詞が彰の心情すぎて涙が止まらなかった」「歌詞で内容を思い出してまた泣いてる」など、物語に寄り添った歌詞が反響を呼び、ストリーミングランキングを上昇中だ。

福山雅治「想望」

福山雅治「想望」

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 こうした複合的な効果により、松竹によると「客層が若い世代から大人の女性客、そして小中学生や年配の方々、男性客にも広がっている」という。

■ヒット要因はとにかく「泣ける!」

 本作は、現代に生きる女子高生と、1945年の日本で特攻隊員と出会う、という設定こそファンタジーだが、「命の大切さ」や「相手を愛しく思う気持ち」という、78年前も今も変わらない普遍的なテーマを描いた作品。現代に生きる主人公が戦時中の価値観と向き合う姿も、戦争を知らない世代の共感を誘っている。

 原作者の汐見氏は、もともと高校の国語教師をしており、趣味で小説を書き始めたという。鹿児島県出身で、こどもの頃、学校行事で「知覧特攻平和会館」を訪れた時の衝撃が忘れられず、戦後70年のタイミングで書いたのが本作だった。文庫のあとがきでは、「平和な現代の日本に生きる私たちにとっては縁遠い『戦争』と、全ての人が経験する『恋愛』を結び付けた物語ならばきっと、大切な人の命を奪われることの悲痛を、自分に寄せて考えるきっかけになるのではないかと思ったのです」と記している。

原作小説『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(C)汐見夏衛/スターツ出版

原作小説『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(C)汐見夏衛/スターツ出版

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 スターツ出版が運営しているケータイ小説サイト「野いちご」への投稿が、同社のライト文芸の文庫レーベル「スターツ出版文庫」の担当者の目に留まり、2016年に紙書籍化された。即、大ヒットというわけではなかったが、2刷、3刷と刷を重ねていった中、20年6月にTikTokに投稿された動画がバズり、「突然、書店からの注文が殺到して、電話が鳴りやまない状態になった」(スターツ出版)という。

 作品が“発見”されてからは、ロングセラーとなっていく。「通常、新刊の宣伝効果はもって半年。本が何年もずっと売れ続けるには、口コミしかないんです。『あの花』は学校やTikTokで『泣けた』という評判が口コミで広がり続けているから、ずっと売れ続けている。映画がヒットしているのも、とにかく『泣ける』ということが、わかりやすい口コミにつながっているのではないか」(スターツ出版)と分析する。

 原作も映画も「泣ける」のひと言でその良さが伝わり、実際に「泣けた」ことで次の口コミにつながって広がり、「泣ける」作品を求める客層をしっかりつかめたことが成功の要因の一つではないだろうか。

 また、映画鑑賞後に感想を語ってくれた人たちの「泣けた」ポイントがそれぞれ違っていたように、「泣ける」ポイントがちりばめられている点も本作の特長だ。今回の実写化では、主演の福原や水上だけでなく、特攻隊員役の伊藤健太郎嶋崎斗亜(※崎=たつさき)、上川周作小野塚勇人、女学生・千代役の出口夏希、百合の母親役の中嶋朋子、鶴屋食堂の女将・ツル役の松坂慶子らが好演。

 原作発行元のスターツ出版も、「登場人物一人ひとりに物語があって、そこにも感情移入できる。原作の魅力を再認識できる映画でした。今後、スピンオフやアンソロジーなどで『あの花』の世界をさらに広げていけたらいいな、と思っています」と話していた。

 生身の人間が演じる良さも出しつつ、若い世代が見やすいテンポ感で作品を仕上げた成田洋一監督の手腕も光る。成田監督は、CM界で長く活躍してきたディレクターで、長編映画は本作が2作目だった。

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