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市原隼人、“8割カット”でも妥協なしのアツさ 新たな代表作は「命を賭す覚悟」の芝居

 2019年にスタートし、この10月から3作目が放送されるドラマ『おいしい給食 season3』。“給食絶対主義”を掲げ、給食に命をささげる教員・甘利田幸男を演じるのは、もちろん市原隼人。シリーズを通して「奇跡のような現場」と語る市原が、本作への熱い胸の内を明かした。

市原隼人 (C)ORICON NewS inc.

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■どんなに滑稽に見えるシーンでも、全力で挑む

 これまで連続ドラマ2作品に、劇場版2作品というロングランシリーズになった本作。完全オリジナル作品としてここまで長く続くことは、いまの映像業界にとっては異例のことだ。

 「本作は原作なしの完全オリジナル。シーズン1を作るにあたって、どういうキャラクターにして、どういう方に向けて作るのか。監督やプロデューサーとはとことん話し合いました。ゼロから1を作る苦しみを味わいました」と述べた。「長く芝居をしていると、どんどんニッチな方向に進みたくなるもので、もっと狂気的な芝居がしたい、もっとハードなアクションがしたい、ドロドロの恋愛がしたい…という風に。でも改めてエンターテインメントの根源や、作品を作る意味を考えたとき、生まれたての赤ん坊から、人生のキャリアを積まれた方まで、多くの方に楽しんでいただけるものを作りたいと。そんな思いでこの作品に挑んだんです」。

 市原は「世の中に規制や規律が増えていき、個性が見いだせなくなっていることを常日頃感じている。しかし甘利田先生は、滑稽な姿を見せながらも、笑われながらも、好きなものを好きと言って人生を謳歌している人物なんです」と、甘利田の自己を貫く姿勢を分析。「『おいしい給食 season3』の物語の舞台は1988年の函館なのですが、僕は人間臭さに溢れた昭和の時代がすごく好きなんです。SNSやインターネットではなく、顔を合わせて物事を進めていくからこそ見える人間の本質というのが、なんともおもしろい。だからこそ、どんなに滑稽に見えるシーンでも、全力で演じました」。

 市原の言葉通り、劇中の甘利田は、大好きな給食を目の前にすると、人が変わったようにテンションが上がり、歌い踊り出す。その姿に愛らしさを感じるのはもちろんのこと、ここまでやるか…という驚きもある。

 「給食のシーンは、実際には何回もいろいろな食べ方をしているんですが、8割ぐらいがカットされています(笑)。この作品は原作がなく先入観がないからこそ、撮影現場でどんな挑戦でもできる。だからこそ、m1の頃から『使われなくてもいいからたくさん挑戦させてください』とお願いして挑んでいます」。

 カメラの前の出来事が2割しか映像として残らないことへの虚無感を問うと、市原は「だからこそおもしろいんです」と笑う。

 「映像作品は総合芸術だと思っています。演出、撮影、照明、美術、録音、衣装、役者…などなど、いろいろな部署のプロフェッショナルが集まって、作品を完成させていく。ビジネスも大事だけど、それがメインになってしまうことは悔しい。夢とビジネスが混在しているのは事実ですが、なにがあっても夢を先行させなきゃいけないというのが、僕の気持ちです。このチームは技術スタッフも制作陣も、涙が出るほど作品への愛が強くて、本当に居心地が良かったです」。

■市原の思いは生徒役のキャストたちにもしっかりと伝播

市原隼人 (C)ORICON NewS inc.

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 市原の思いは、生徒たちにも伝播している。まず市原は生徒たちに語りかけるという。

 「作品が始まる前に、この作品がなんのために存在して、誰に届けようとしているのかを、自分自身で見出してください。キャリアや経験の差はあっても、現場に上下関係などない。みんな一緒に“モノ作り”をしていることを味わってほしい」と話しをしました。

 函館が舞台になった本作も、まずはみんなで函館観光をして、絆を深めた。制作陣も、出演経験が少ない生徒たちも、みんなが同じ目線で作品に向き合うことを意識している。

 「観てくださるお客様のために、自分の限界を超えてがんばりたい。だからこそ、現場ではつらいことを分かち合って、楽しいことは共有しあって喜びたい」。そんな思いから、生徒たちには毎シーズン、“卒業証書”を渡しているという。「みんな泣いていました。作品をみんなで作るという経験を味わえたことは、きっと今後の財産になると思います」。

 本作でも、給食を目の当たりにした歌と踊りは健在だ。むしろパワーアップしていると言っていい。トリッキーな動きに、目が釘付けになる。

 「給食のシーンは、撮影までにしっかりと自分のなかでイメージを構築して臨みます。現場に入って、生徒たちの動きなどを見て、変えることもありますし、カメラワークを考えながら、監督とお話してやっていくこともあります。でももう3作目なので、スタッフとも“阿吽の呼吸”で行けるんです。長回しでたくさん勝負を仕掛けていきます。その勝負に監督もスタッフも乗ってくださるので、本当にやりがいがあります」。

 市原のイメージにもある“ストイックさ”と、甘利田という男の内に秘めた“ストイックさ”は、また違ったものではあるのだが絶妙にリンクし、本作が市原の新たな代表作となっているのは間違いない。

 「本当にたくさんの反響をいただいています。小さな子どもからご年配の方まで。胸が熱くなる思いです。学校に行くのが好きじゃなかったけど、このドラマを観て気持ちに変化がありました…なんて声をいただいたときはうれしくて涙が止まらなかったです。お客さまに求めていただいたからこそ、続くことができた。エンターテインメントってこうあるべきなんだろうなと勉強させてもらった作品です。この作品のためなら命を賭しても良いという思いでやっています」。

■芝居は好きとか嫌いとかを超越した存在

市原隼人 (C)ORICON NewS inc.

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 甘利田先生にとっての給食のように、市原にとって生きる原動力になるものはあるのだろうか。

 「芝居とは25年くらい付き合っていますが、最初の頃は『友だちが遊んでいるのに、なんで僕は仕事をしなければいけないんだ』とか、厳しい世界に揉まれつらいことが重なり『やめてやる!』と思ったこともありました。でも今はもう、なくてはならないもので、生きる原動力になっています」。

芝居への思いは、近くにいる存在や、ファンの存在によって変化していったという。

「まずは、最初に出会ったマネージャーが共闘してくれる方だったのが大きかったです。さらに、余命宣告されたというファンの方から、『市原さんの作品を観て笑顔になれた』というお手紙をいただいたり、目の手術を控えていて失明の恐れがあるという方から『最後に観るのは市原さんの作品です』と聞いて、涙が止まらなくなることがあったり。そんなファンのみなさまと出会ってから、もっと真剣に芝居に向き合わなければ、と気持ちが変わったんです。その意味では、僕も芝居には何度も救われていると思います。もう好きとか嫌いとか超越したものなんです」。

 そんな市原の魂の結晶が『おいしい給食』だ。

 「今回の舞台は北海道の函館です。いままで夏がメインだったのですが、今回は初めて冬が描かれます。新たなヒロイン、新たなライバルが登場しますが、甘利田先生は相変わらず、一生懸命、滑稽ながらも給食を好きだと胸を張って生きています。そんな甘利田先生を観ていただき、少しでも人生の活力になっていただけたらうれしいです」。

市原隼人 (C)ORICON NewS inc.

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取材・文/磯部正和
写真/TsubasaTsutsui

市原隼人主演ドラマ「おいしい給食 season3」
放送予定:10月よりテレビ神奈川、TOKYO MX、BS12 トゥエルビ、TVerほかにて順次放送スタート 全10話
出演:市原隼人 大原優乃 田澤泰粋 栄信 六平直政 いとうまい子 高畑淳子 小堺一機

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