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『ジョン・ウィック』監督インタビュー、日本パートについて本当のことを話す

 キアヌ・リーブス主演の映画『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(9月22日公開)のチャド・スタエルスキ監督が9月中旬に来日し(プロモーションでは4年ぶり4度目)、全米映画俳優組合のストライキの影響で不在のキアヌの分まで本作について語ってくれた。

チャド・スタエルスキ監督(C)ORICON NewS inc.

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 2015年に1作目『ジョン・ウィック』公開、17年『ジョン・ウィック:チャプター2』、そして19年『ジョン・ウィック:パラベラム』と、公開される毎に前作の全世界興行収入を倍々近くに更新し続けてきた『ジョン・ウィック』シリーズ。全米では今年3月24日に公開され、すでに前作を上回る興行成績を収めている。

 裏社会の掟を破り、粛清の包囲網から生還した伝説の殺し屋、ジョン・ウィック(キアヌ・リーブス)。本作では、地下に身を潜めながら、全てを牛耳る組織「主席連合」から自由になるために立ち上がる。組織内での勢力拡大を狙う若き高官、グラモン侯爵(ビル・スカルスガルド)は、ジョンの旧友でもあった盲目の達人ケイン(ドニー・イェン)を強引に引き入れ、ジョン・ウィック狩りに乗り出す。そんな中、日本の友人、シマヅ(真田広之)の協力を求めてジョンが大阪のコンチネンタルホテルに現れた…。

――舞台の一つに日本の大阪を選んだ理由は?

【チャド監督】大阪を選んだのは、大阪が好きだからです。それと、欧米の観客にとって、東京は映画でよく観る風景なんですよね、『Godzilla』(2014年の映画)とか。東京のことはわりとみんな知っているので、それ以外の日本を見せたいと思いました。大阪の道頓堀のネオンが川面に映る感じがすごくいいな、と思っていて、それで大阪を選びました。

――そもそも日本パートを作ろうと思ったのはなぜですか?

【チャド監督】私は幼い頃から日本のエンターテインメント文化、アニメ、マンガ、映画に影響を受けてきたと思います。三船敏郎、黒澤明は大好きな監督です。私は10歳から格闘技を始め、最初にならった日本柔道を現在まで続けています。

 私は日本のストーリーテリング、アニメ、マンガ、映画の構造が好きなんです。ヨーロッパの騎士道と多くの類似点を持っている日本の武士道にも興味があります。『ジョン・ウィック』には騎士道や武士道の精神を取り入れてきました。キアヌも日本のエンターテイメントの大ファンだと思います。キャラクター描写、アイデア、テーマ…、日本文化に多大な影響を受けて『ジョン・ウィック』を作ってきました。

 日本で撮影していなくても、『ジョン・ウィック』のストーリー展開や登場人物にサムライ映画の三船敏郎やジョン・ウー監督のアジア映画(『男たちの挽歌』など)の要素が少し入っています。キアヌと私が『ジョン・ウィック』の4作目をやると決めた時、日本で撮りたいと思いました。私たちに大きな影響を与えてくれた国だから。それで日本を舞台に物語を書きました。

日本がジョン・ウィック(キアヌ・リーブス)の戦いの舞台の一つに=映画『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(9月22日公開)(R), TM & (C) 2023 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

日本がジョン・ウィック(キアヌ・リーブス)の戦いの舞台の一つに=映画『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(9月22日公開)(R), TM & (C) 2023 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

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――日本に住んでいる日本人以上に、日本に興味を持ってくださりありがとうございます。

【チャド監督】私は日本のエンターテインメント文化に至上主義的な幻想を抱いているわけではなくて、それは、アメリカをチャンスの国として見ているようなもので、実際にはそうでもないわけです。私たちが話題にするのは文化の一側面に過ぎないと思っています。ただ日本の皆さんにとっては当たり前のことも外から見ると面白く見えたり、違いに気づいたりする。

 アメリカ人の映画監督である私は、日本の文化だけでなく、ストーリーの語り方にも注目します。何を語るのか?その構造は?語り口は?何に重点を置くのか?アニメ、マンガ、日本映画は私たちとは異なる物語を伝えます。それが魅力的なんです。単にサムライや武士道の話ではなく、構造からして違うのだと、すぐに気づきました。

 これは日本文化だけを持ち上げようとしているわけではありません。ティーセレモニーの作法が、日本と中国とヨーロッパで違うのと同じことです。その違いを見て、なぜその違いが好きなのかを知ることが重要だと思います。私は自分の作品をより多くの観客に届けたい。アメリカ人だけでなく、アジアの人にも、ヨーロッパの人たちにも響いてほしい。キアヌの作品を世界中の人に楽しんでもらう唯一の方法が、さまざまなオーディエンスのことをよく知ることだと思っているのです。

■日本パートの準備に1年

――日本パートは、実景以外はベルリンで撮影したとうかがいました。大阪コンチネンタルホテルを再現するのは大変だったのではないですか?

【チャド監督】最初からベルリンで撮影するつもりだったので、それほど難しいことではありませんでした。ただ、私のビジョンを明確にする必要がありました。かなり早い段階から作業をはじめて、日本の写真を1000枚くらい用意しました。私は桜が大好きですし、東京の六本木も好き。自分が好きな日本の写真を集めて、それを全部壁に貼って、プロダクションデザイナーのケヴィン・カヴァナーと写真を見ながら、約1年かけて決めていきました。色、ロケーション、ありとあらゆることを、です。新たな世界を構築する大変さもありますが、それが醍醐味でもあるのです。日本の観客にも、アメリカの観客にも新鮮に感じてもらえるものを創っていきました。『ロード・オブ・ザ・リング』は存在しない架空の世界を一から創り上げたけれど、私が挑戦したのは、現実からかけ離れ過ぎない『ジョン・ウィック』の世界を構築することでした。

ジョンの旧友シマヅ(真田広之)(R), TM & (C) 2023 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

ジョンの旧友シマヅ(真田広之)(R), TM & (C) 2023 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

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――日本パートの準備に1年!さらに、撮影現場では、真田広之さんが不自然な日本の表現を正してくれたそうですね?

【チャド監督】彼は正真正銘の日本人だからね。大阪の地下鉄のアナウンスを手伝ってくれました。ホテル内のサイン、ポスター(の日本語表記)も。私たちに家紋のことも教えてくれました。彼は美術部のスタッフでもありました。

――シマヅの娘アキラ役にリナ・サワヤマさんを起用した経緯は?

【チャド監督】リナは素晴らしかったです。一生懸命、取り組んでくれました。彼女のことをとても気に入っています。実は、アキラ役にピッタリの俳優をなかなか見つけられずにいたんです。イメージとしてはアニメから飛び出してきたような人を探していました。ベルリンに滞在している時に、YouTubeで「日本のロックスター」と入力して検索してみたんです。全然知らなかったから(笑)。検索結果の中で、あるサムネイルが目にとまりました。オレンジのウィッグをかぶっていた、それがリナでした。別の動画で青のウィッグを被った人を見つけました。それもリナでした。

 最初、同じ人だとは気づかなくて。見た目を変えることができてすごいな、と思って、動画を再生してみたら、踊れる人だということがわかりました。アクションをしてもらいたかったら、踊れる人を探すんです。振り付けを覚えられる人でないと務まらないから。三夜にわたって動画を繰り返し見て、彼女なら絶対できると思ったので、ダメ元で彼女のエージェントに連絡してみました。全く知らない人でしたし、演技の経験があるかどうかもわからなかったけれど、動画を見つけてから1週間も経たないうちに、ロンドンにいた彼女がベルリンまで来てくれました。

シマヅの娘アキラ(リナ・サワヤマ)(R), TM & (C) 2023 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

シマヅの娘アキラ(リナ・サワヤマ)(R), TM & (C) 2023 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

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 私と少し話した後、キアヌに会ってもらうために、私たちのジムに連れて行きました。そこにはキアヌを含めて50人くらい、スタントチームがトレーニングをしていて、リナは「すごい!」と驚いていたけれど、キアヌたちと1時間くらい話をして、「彼女で決まりだね」って。みんな思ったし、私もそう思いました。とてもクールなストーリーです。リナと出会えてとてもラッキーでした。

■ドニー・イェンの“麺”アドリブ秘話

――チャド監督は『マトリックス』(1999年)でキアヌ・リーブスさんのスタントダブルを務め、『ジョン・ウィック』で映画監督デビュー。キアヌさんとは長い付き合いになりましたが、この先、彼とどんな旅を続けたいですか?

【チャド監督】お互いにいろいろな企画を抱えていますが、私たちはアイデアを出し合って、実現するプロセスを共に楽しめる仲間です。できることならこれからもキアヌと一緒に作品を作っていきたいと思っています。

刺客として放たれるケイン(ドニー・イェン)(R), TM & (C) 2023 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

刺客として放たれるケイン(ドニー・イェン)(R), TM & (C) 2023 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

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――ドニー・イェンさんが大阪コンチネンタルホテルの厨房で麺類を食べているシーンがあったのですが、あれはラーメンですか、そばですか、うどんですか?

【チャド監督】ごめんなさい、麺の種類は覚えていないんです。でも一つ、面白い話をしましょう。そのシーンはベルリンで撮影しました。ドニーは夜通し撮影する予定だったのですが、その日の始まりに、ドニーと私はいかに自分たちが麺好きか、と言う話題で盛り上がりました。撮影場所の近くにおいしい麺料理が食べられる店が見つからないと嘆いていて、私は日本のラーメンが、ドニーは中国の麺料理が恋しいと、話していたんです。

 その数時間後、あのシーンを撮ることになった時に、ドニーが私のところにやって来て、麺を食べているところから始めたい、と言い出したんです。いいね!と、その場でシーン全体を変更することにしました。元の台本では、ドニーが入ってきたらすぐにアクションが始まることになっていたのですが、ドニーがチョウ・ユンファ(『男たちの挽歌』シリーズで知られる香港の俳優)みたいに麺をすするところから始めることにしました。すごくクールになった。何の麺を食べていたのか、正確にはわからないのですが、雑談からドニーがいいアイデアを出してくれました。ドニーが座って麺を食べているカットを何テイクも撮りました。ドニーは、6杯か7杯分は食べていたと思います。

チャド・スタエルスキ監督(C)ORICON NewS inc.

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――ありがとうございました。鎌倉時代に起こった「元寇」をテーマとしたゲームの映画化『Ghost of Tsushima』の監督を務めることも決まっているチャド・スタエルスキ監督。「ジョン・ウィック」流の日本愛が劇場の大スクリーンを通して多くの観客にも届くことを祈っています。

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  1. 1. 「ジョン・ウィック」チャド・スタエルスキ監督が来日、キアヌの思いを伝える
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  5. 5. 『ジョン・ウィック』監督インタビュー、日本パートについて本当のことを話す

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